「響-なげき-」完結
新垣 紗江の意識の中へダイブし、彼女の中の人格を一つずつ終わらせていく・・・
こんな漫画みたいな出来事が今目の前で、自分が体験している・・・
新垣 紗江の中には幾つの人格が存在しているのだろう・・
彼女の中へダイブをすると真っ白な空間に扉が幾つみえる
その扉を開けると、そこには「傀儡」とよばれる人格がいる、俺はそれを体験し体感をする・・・
いや、見ているだけかもしれないが、、その人格自体が俺を父「哀川京介」と思込み話しかけてくる・・
本当に何が何だかわからない・・・。
俺はそんなことを思いながらソファーに横たわった
時計を見ると既に深夜1時を回ろうとしていた、窓から見える景色はぼんやりと月が見えた・・
こんな廃墟のようなビルの一室で何をしているのだと・・・
京介は立ち上がり窓辺に腰かけた
『・・・』
結衣(精神世界の傀儡)の扉は消えた・・・
あれは、彼女が成仏したような感じなのだろうか・・・
原理的には新垣 紗江の中の人格が一つ消えた、いう事になる・・。
つまり、ダイブは成功したのだという認識になるのだ・・
こうして、幾つかの傀儡と呼ばれる人格たちの扉を消していくと、
母さんにたどり着くのだろう・・・。
母さんの人格の扉が消えたら、母さんは普通の状態にもどるのだろうか・・・
戻ると言っても俺は元より過去のかあさんを知らない・・・
母さんはとても人気のある芸能人だったと聞いている・・・何かもが上手く行っていたはずなのに
哀川京介に目を付けられたことにより転落の人生を歩んだんだ・・・
何故、母さんだったんだ・・・
そして、彼がいなければ、今の俺の存在はないものだ・・・
物凄く複雑で憤りを感じるような話だ・・・
「ピピピピ・・」
室内の電話のインターホンが鳴った
「カチッ」
『はい』
『私だ(ジャニス)、次のダイブの件だが入念な打ち合わせをしたうえで行わないと危険が生じる可能性がある』
『危険?』
『恐らく順番的に行くと次は「真美」という傀儡かもしれない・・彼女は「狂乱」の傀儡だ・・注意しなければならない』
『注意って・・どうやって・・』
『資料を纏めておく・・それをよく読んでおいて欲しい』
『俺にダイブをさせない、という選択肢はないのか?』
『母親を見捨てるならば・・・それも良いが・・・』
何だか利用されている感が強くあり、嫌な気持ちになっていた
『やるよ・・・』
そうとしか言えないだろ・・・そう思いながらインターホンを切った
しかしながら、俺は目的がありそうしているが、ダイブを去れている側の
新垣紗江はどのような気持ちなのだろうか・・・
彼女の中の人格が消えることで、本来の彼女自身というのが出てくるのかもしれない・・
そこが彼女の願い・・いや・・目的とされているのかもしれない。
こんな奇妙な事を続ける意味すら、本来はあるのかどうかもわからない
ジャニスが哀川京介の謎を解明する為だけにやっているのか・・・
それとも、傀儡の何らかの秘密を解くためなのか・・・
タイミングを見てジャニスに聞いてみよう・・京介はそう思った
傀儡、結衣の最後は本当に凄まじかった・・
あの扉の向こうで、同じことを何度も繰り返し苦痛を受けていたのか・・・
頭の中に響いたあの声
「逃げないで・・彼女を終わらせてあげて・・・貴方を心の底から信じていた彼女を抱きしめてあげて・・
そうすればきっと彼女は終われる・・・・」
思い返すと胸の奥が苦しくなった・・・
きっと、あの扉が消えたことで彼女(結衣)の愛と悲しみは消えたのだろう・・・
信じられない出来事や光景に戸惑いながらも少しずつ京介は受け入れ始めていた
あの声は・・きっと精神世界を見続けてきている紗江の声なのではないか・・・
京介はそう感じた・・
彼女もまた苦しみを一つ終わらせたのだろう・・何となくそう感じた
京介はそう思う事で自身が行ったことに何らかの答えを見出そうとしていた
「俺はあと何人の傀儡と出会えばいいのだ・・・」
予測もつかない不確かな解決策を続けなければならない
恐怖を感じた・・・
それと同時に自分自身が無くなるのではないか・・という恐怖も感じていた・・・。
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