人生には不思議な瞬間がある。それはまるで背中を押されているような 、また今動くべきだと語りかけられているような、何とも表現し難いタイミング。


昨年末に勤務先の閉店が言い渡された。とても急なことでスタッフ一同ポカンと口を開けた状態である。しかし上司の話は淡々と進み、異動か退職かの選択肢を突きつけられた。外資系特有のアバウトさがこの会社の社風だが、それはとても残酷であった。しかし、私は現職の内定が決まっており先方に待ってもらっている状況であった。年末年始は忙しくなるであろうことを加味して、今年の10日までの契約に話がまとまった矢先の出来事だ。


私が現職に決めたのは、治療を通してウィッグに興味を持ったこと。また罹患者であること、主治医と話してアピアランスケアの普及をしたいこと。美容師経験があり、アパレルで培った提案力、事務から学んだオペレーション、何より罹患者であるからこそ寄り添える心、全ての経験が活かせると思ったからである。手術した左手も仕事がリハビリのようになり完全に上がり固定できるようになった。


離職日と閉店日が同じであり、身体が元に戻り、子育てもひと段落し、まるで『あなたは天職の美容師に戻りなさい』と神様に言われているような、とても不思議で絶妙なタイミング、これは前に進む選択肢しかない。


今まで経験したことは何一つ無駄でもなく、私わいつでも今が一番楽しい。