入院中は左手のリハビリをしていた。

壁に手を当て毎日少しずつ上げれるところまで腕を上げる。浮腫みも日に日にましにはなるが、激痛も走った。

そんな中、入浴の許可がやっとおりた。複雑な気分だった。入浴するということは自分の傷口と対面しなければならない。久々にシャワーを浴びれる嬉しさと、なくなった左胸を見る怖さが混在していた。

入浴すると言っても、とても小さな個室であり簡素な作りである。大人1人がギリギリ入れるスペースだ。私は新しい下着とパジャマとタオルを握りしめ、脱衣所の小さな鏡の前で服を脱いだ。その時初めて左胸を再建したものの、明らかに違和感を感じる感触であることがわかった。硬い。筋肉だから当然か、不思議とこの時はサラッと受け入れれた。しかしシャワーが取り付けられてある個室に入ると、衝撃的な光景が目にうつる。左胸は葉っぱ型に切り取られ、抜糸後ではあったが傷口が酷く内出血していた。それはまるで傷のついたマネキンのようなものであった。また再建のために筋肉を持ってきた左背中には20㎝ほどの大きな傷があった。ほぼ無理矢理持ってきたため、皮膚を縫い合わせた傷の終わりにつまみのような余ったらしき皮がある状態だった。こちらも同様、内出血しており、以前先生からキレイに出来たという言葉への期待は絶望感へと変わった。まるでサイボーグになったような気分だった。これからこの傷を負って生きていく。逆に言えば闘った証。そう言い聞かせながら、必死に現実と向き合うことを考えた。しかしすぐには難しく、そのまま座り込んでしまった。精神的にいっぱいいっぱいで立っていることができなくなり、酷い貧血のような気持ち悪さに襲われた。シャワーが流れる中、しばらく座り込み記憶を失わないことに必死だった。フラフラで何とか入浴を終え病室に戻った私は、決してスッキリした気持ちにはなれず、そしてあまりの気分の悪さにベッドに横たわることとなる。