以前も記述したが、同時再建とは全摘術後に違う部分から筋肉を持ってきて胸を形成すること。全てが一度の手術で行われる。乳腺外科と形成外科の先生たちの連携によって行われるため、何度も受診しなければならなかった。

乳腺外科では一部組織は残せる説明を受けたが、ただでさえ再発率の高い乳癌だっため、出来るだけその可能性が低くなる方法を聞いた。やはり乳腺を全て取ってしまうこと。しかしながら先生は言葉を慎重に選び、転移する可能性もあるし決してゼロではないことをしつこい程伝えてきた。今出来ることは全摘してしまうこと。結婚もし子供も産みもう大丈夫…女性である証を失うことに何も怖さはなかった。しかしどうしても譲れないことがあった。私はファッションが好きで、着崩れするのだけは嫌だった。職場からもいつでも戻っておいで、何年でも待つよと言ってもらえていた。やはり洋服はキレイに着こなしたい。先生からの提案がなかったため自分から切り出した。同時再建という言葉を聞いたのですがしたいんです。当初の先生の反応は難しいということだった。私の身体は上半身は細く筋肉質で、お腹か背中から持ってくる筋肉が限られているし足りないかもしれないとのこと。これは形成外科での判断になるということで、そのまま紹介してもらった。

形成外科での受診は異様なものだった。変な話、上半身を色々な角度から写真におさめ、高さ幅など精密にメジャーで計測する。白髪混じりの声の小さな先生が少し呆れたように笑いながら、ギリギリかなぁとボソッと話した。それを聞き逃さなかった私は、じゃあ出来るんですね?どこから持ってきた方がいいですか?とまたまた質問攻めとなる。シリコンや風船のような物を埋め込み水を少しずつ入れていくなど色々な方法があると説明を受けたが、何年後かに手術が必要となるため、自家組織での再建を熱望した。ただここで心配なのは違う部分から移植するので、拒否反応が出た時に壊死してしまう可能性もあり100%成功するものではないことを告げられた。それでも揺るがなかった。結局左背中の筋肉を左胸に移植するということに決まり、手術の方向がどんどん決まっていく流れとなる。