<収録内容>
01. ハレバレ
02. Baby Call Me Sunshine Girl
03. 仰げば尊し
04. Lockdown
05. Real Perfection feat. KIRA, AISHA, FUZIKO
06. CHEER GIRL
07. Can’t Stop My Synthesizer feat. ISH-ONE
08. Singing Bird
09. Just Another Day feat. KIMI (DA PUMP)
10. Romantic Song
11. 僕と私のストーリー feat. 海蔵亮太
12. たとえ世界が真っ白になっても
13. Nothing But Love

 

 

Self Liner Notes >>> #12
たとえ世界が真っ白になっても
---愛する人をいつまでも"恋人"と呼べるように。

 

たくさんの想いや感情を込めた曲で、自分自分この曲をどう説明したら上手く伝わるのかが、まだまとまっていなかったります。

 

もともとは渡辺謙さん主演の「明日の記憶」という、若年性認知症で若くして奥さんの事を忘れていってしまうという映画にインスパイアされて書いた曲です。

 

 

 

"自分の愛する人が、自分のことを忘れていってしまう"

 

 

 

きっと多くの人が認知症なんてまだまだ遠い先の出来事という感覚で、きっとしっくりこない人も多いかと思います。僕自身もそうでした。ただその映画を観て受けた感情はもっともっと色々なもので。

 

少しでもこの曲の想いが伝わればと、そんなまとまりのない僕の話をして見たいと思います。

 

 

 

僕には同居してるお爺ちゃん、お婆ちゃんがいました。生まれた時から"お婆ちゃんはお婆ちゃん""お爺ちゃんはお爺ちゃん"で、それは父親や母親に対しても当然同じで、それ以上でもそれ以下でもないというか。

 

この2人が恋をして、それで僕らが生まれて...なんて考えることはなかなか感情としては難しくて、子供心としてはそう思えない人の方が自然だと思います。

 

 

 

僕の祖父と祖母はいかにも昔気質な老夫婦で、「無口で頑固でこれぞ一家の大黒柱!でも孫にはめっぽう甘い」というお爺ちゃんと、「お喋りで人見知りもせず、会う人会う人みんなファミリー!」みたいなピースなお婆ちゃんと一緒に育ちました。

 

二人は人前であまり仲良く喋ることもなく、なんだったらしょうもない事でしょっちゅう言い争いをしていて。小さい僕から見ても「あんまり仲良くないのかな?」なんて思ったりしていました。

 

なのに二人きりで旅行に行ったりもしていて、きっと現代の僕らでは考えられない、大正、昭和、平成を生き抜いた二人にしかわからない、絆やプライド、世間体が当たり前のように心に根付いていたんだろうなと、今になって思います。

 

 

 

お婆ちゃんは晩年かなり痴呆が進んでいて、支離滅裂な事を言ったり、家族をよく困らせていました。

 

その頃には僕も家を出てしまっていたので、たまに帰った時に相手をする程度。ある意味責任感がないというか、楽しく受け止められる余裕はありましたが、同居していたお母さんや姉は介護を含めてだいぶ苦労したと思います。

 

 

 

さて、そんなお爺ちゃんとお婆ちゃんですが、一つだけ強烈に覚えている出来事があります。

 

僕が中学生の頃、お爺ちゃんが急に倒れて救急車で運ばれました。倒れたといっても意識はあって。担架で運ぼうとする救急隊員に「自分で歩きます」と言って救急車に乗り込んだのもプライドの高いお爺ちゃんらしくて。

 

昨日まで元気に仕事(うちは自営業だったので)をしていたのに、入院してからはあれよあれよと悪化して、あっという間に天国に旅立ってしまいました。

 

家に帰って安らかに眠っているお爺ちゃんに、お婆ちゃんは声にならない声をあげ、泣きながら抱きしめ、そして…

 

 

 

キスをしたのです。

 

 

 

普段の二人の関係からして、その光景はとても感情を揺さぶられる物があり、何よりもその瞬間に

 

「ああ、この2人は恋人なんだな」

 

と初めて思ったのです。

 

"僕のお爺ちゃんが亡くなった"のではなく、お婆ちゃんの愛する人が亡くなったんだって。

 

その感情はいつまでも残っていて、数年後に父親を亡くした時も、真っ先に思ったのが、"お母さんの恋人が亡くなった"という感覚でした。

 

 

 

「明日の記憶」という映画を観た時に、そんな感情が一気にフラッシュバックしました。よくインタビュー等でも聞かれるのですが、映画の事を歌った曲ではなくて、あくまでもきっかけに過ぎません。

 

 

 

自分自身いつか生涯を共にする人に出会い、子供が生まれて「パパ」と呼ばれて、孫が生まれて「お爺ちゃん」と呼ばれたとしても、愛する人との関係は何ひとつ変わらず、ただの"恋人"なんだろうなって。むしろそうでありたいなって、そんな風に思ったわけです。

 

 

 

まとまりがない上に長い話になってしまいましたが、ここまで読んでもらえれば、この曲が決してただの「痴呆症」の歌でもなければ、「お年寄り」の歌でもない、ましてや「死」をテーマにした歌でもないというのはわかってもらえたと思います。

 

たとえあなたの見えている世界が真っ白になっても、二人だけが知る思い出を喋り聞かせて、いつまでも愛を伝え続けたい、そんな思いで書いた曲であります。

 

そんな熱い気持ちで書いた渾身の1曲。MAY'Sの代表曲として一生誇れる名曲になったと僕は思っています。

 

まるで映画を観ているかのようなストーリーをぜひ感じてみてください。

 

 

それでは、おしまい。

どろん。