寝台快速「トワイライト」号、天の川行き -2ページ目

寝台快速「トワイライト」号、天の川行き

日本国内の旅・旅行のエッセイをお送りします。皆様の旅・旅行の大切な良き思い出づくりのきっかけとなりますように!

◆真冬の秋田内陸線での至福のひと時

新幹線はホームが地下にある上野を出発して地上に出た時は冬晴れであったが、仙台を過ぎて古川のあたりから既に雪が降っていた。盛岡を出て田沢湖線の線路に入ると雪が深くなり降る雪も増えているように見えた。秋田新幹線が走る田沢湖線は全線単線のために乗客の乗り降りなしで反対方向に向かう列車との行き違いのみで途中の駅に停車するケースもある。その行き違いのみの停車で反対の盛岡、東京方面のすれ違う列車が大雪のために10分くらい遅れていた。その行き違い後に発車した辺りから「コッ  コッ」と列車が雪の中にある氷の塊を跳ね除けるような音をよく耳にした。その音と大雪による列車の遅れだけでもこの冬の雪の多さを先述したテレビのニュースだけでなく雪国の現地で感じた。角館には10分くらい遅れて到着したが内陸線との接続にはまだ10分くらい余裕があった。

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写真126:冬の内陸線「出発進行!」

 

 

 

今回で3回目の内陸線。発車前から車内販売にてバター餅と地酒「またぎ」そしてまた連れて来た5歳の息子にはニコちゃんマークの笑内饅頭と小さい秋田犬のぬいぐるみのストラップを買った。角館を出発した列車は秋田新幹線の線路と別れ降りしきる雪の中を雪ですっかり真っ白になりきったような田園の中を走る。あちこちのローカル線でよく見られる田園が広がる里と遠くに山並みが見える車窓がしばらく続くと思いきや沿線を流れる桧木内川がこの辺りの車窓をバラエティー豊かにしてくれる。まるで桧木内川が木々や小高い丘のような山林を何回も我々の前に連れて来てくれているような感覚だ。阿仁合や十二段トンネルに向かい山を登って行くディーゼルエンジン音が大雪の中奮闘しているようでより力強く感じた。隣の席の5歳の息子は車窓を楽しむ父ちゃんの上半身の部分をさっき買ったストラップに付いている小さい秋田犬の遊び場にしていた。私も小さい頃は気に入ったぬいぐるみを手で動かしてよくそういう遊びをしたものだ。暖かい車内から見られるバラエティーに富んだ雪景色。乗り鉄にとっては至福の一時。時間が止まっているように感じた。

「いつまで続いて欲しい」

と。至福の一時が20分少々続いた後列車は十二段トンネルに入った。

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写真127‐1:冬の内陸線(1)

 

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写真127‐2:冬の内陸線(2)

 

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写真128:冬の内陸線車内

 

◆樹氷鑑賞とスキーをしに森吉山へ

阿仁合駅から明日の樹氷観賞とスキーに備えて森吉山麓の宿に泊まった。今回お世話になった宿は食事の味も良かったのみならず阿仁合行き帰りの駅とスキー場のゴンドラ乗り場との送迎もしていただくなどおもてなしが良かった。驚いたのが地元の方ではなく横浜出身の年配の女性の方一人中心に何人かのお手伝いの方々で切り盛りされている事であった。夏の高山植物の花々や秋の紅葉の見頃や我々も訪れた冬のスキーや樹氷など予約がよく入る時季には秋田に来られて無い時期は横浜との行き来を繰り返しているという。この辺りではアルバイトをしてくる若者など人手が満足に集まらないのだろう。国道から離れて森吉山麓のゴンドラに向かう送迎してくれた車の中から見た道路沿いの景色は今回お世話になった宿も含めた2件のみの宿とゴンドラ乗り場スキー場以外周りは雪に覆われた多くの木々が生える山々以外は記憶にない。マタギの方々はクマなどを授かる為にこれほどの深い山奥を歩き回るのかと思える程であった。

 

まずはチェックインした夜に、スキー場にある圧雪車に乗ってスキー場の上にある森吉山の樹氷観賞スポットまで連れて行ってくれる「夜の樹氷観賞会」に参加した。山麓のスキー場ゴンドラ乗り場から樹氷観賞スポットまで30分くらい登って行く。上に登って行くに連れて雪の勢いが強くなっていく。観賞スポットに着いて圧雪車から降りてみたが風雪が強くとても寒かった。圧雪車のヘッドライトによりライトアップされた樹氷が鮮やかであったのがとても印象に残った。一緒に圧雪車に乗られていたガイドの方もおっしゃっていたが本当にこれが樹氷の出来る厳しい自然条件だと思えた。当時は寒くて辛いとも思ったが今思えば本当に貴重な思い出だ。一緒に連れて来た5歳の息子はゲレンデを登っている圧雪車の中で途中で眠ってしまった。スポットに着いた時に起こして1回外に連れ出してもあまりの寒さと風の強さで直ぐに中に戻ってしまい圧雪車の中から外に出ることが殆ど無く再び眠ってしまった。それでも宿に戻って目が覚めた時にはよく頑張ってついて行ったと他のツアーの参加された方々からも褒められていた。

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写真129‐1:森吉山樹氷(1)

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写真129‐1:森吉山樹氷(2)

 

続いて翌日朝から昼過ぎまで森吉山のスキー場で息子と4〜5時間くらいスキーを滑った。ゴンドラの山頂付近に斜度が丁度良いゲレンデが何本かあり息子もしっかりと滑れていた。霧が立ち込め雪が降り、風がとても冷たい悪天候の中でもスキーの合間に樹氷を見ることが出来た。昨夜と同様に底冷えするような厳しい寒さではあったがほんの5〜10分くらいではあったがゴンドラから遠目ながら樹氷が広がっている様子も見られたし樹氷のポイントからも霧が薄まった時にぼやけているような感じではあったが霧の中に遠くまで広がるいくつもの樹氷も見ることが出来た。

 

 樹氷は日本海からの強い季節風に乗った水滴いわゆる過冷却水が木の葉にぶつかって凍って出来る。過冷却とは0度でも凍らずに衝撃を与えると一瞬のうちに氷になる状態でその衝撃を与えるのがアオモリトドマツの葉である。そのトドマツの葉に着いた氷に雪が積もる。それを繰り返しアイスモンスター(怪獣)のような樹氷が出来る。そのアイスモンスターのような樹氷が出来るのは次の条件が揃っているからである。

 

①冬でも葉をつけているアオモリトドマツ

②季節風がよく当たる山の西から北西の斜面

③雪が降りすぎない事

 

①②はわかりやすく当てはまる地域は結構ありそうだが③はあまり雪が多過ぎてもアオモリトドマツが葉をつけなくなるからで雪が多過ぎず少な過ぎずという難しい条件がアイスモンスターのような樹氷を限られた地点でしか見られない珍しい現象にしているのだろう。蔵王、八甲田、そしてここ森吉は日本三大樹氷と呼ばれている。樹氷が見られる事自体貴重であり、天気が崩れなければアイスモンスターが山じゅうに広がるのが見えて、特に晴れていれば青空のもとでパラダイスのような景色が楽しめる。私は蔵王で青空の下に広がるいくつものアイスモンスターを見た事がある。今回の私達が行った時のように、ヒートテックも含めた防寒着に覆われた身体の芯まで冷やしてしまう程の冷たい風や雪が強い悪天候でも、アイスモンスターが生成されるのに適した厳しい自然条件を体感出来る。どちらにしても貴重な旅の思い出になる。

あの時の内陸線の冬旅は、寒気がよく日本付近の上空に居座り、秋田県も含めた日本海側を中心に例年より雪が多い年に行けた。あまりの雪の多さや身体の芯まで冷やしてしまうような寒さにはびっくりしたが、「マタギ語り」や「マタギ語り」でお世話になったマタギの方や、アイスモンスター、樹氷が生成されるのに適した悪天候や厳しい寒さの中で見られたなどの数々の旅の思い出が、私と一緒に行動した5歳の息子に、何だか自然の美しさのみならず、自然の厳しさを教えてくれた気がしている。それにより二人ともそれぞれまた一皮むけた感じがした。