関東の梟雄 上総広常
福原の後白河法皇の幽閉所を訪れた平清盛は、伊豆の頼朝の挙兵と石橋山での大敗を勝ち誇ったように告げます。
が、その直後、息子の宗盛から頼朝が生きて安房に逃れたと聞いて激怒
「すぐに追討せよ。必ず首を獲れ!!」
と命じます。
その頃、安房の国では小四郎(北条義時)が和田義盛とともに、東国でも屈指の大豪族、上総広常の館を目指していました。
「俺はまだどっちにつくか決めちゃいねえ。ただ、一つだけハッキリしていることがある。この戦、俺がついた方が勝ちだ」
そう言って広常は、ちょうど居合わせた大庭方の梶原景時と小四郎たちを引き合わせ、双方で話し合えと言います。
「味方になれば、どんな得があるんだ?」
という広常に、梶原景時は、大庭方につけば、望みの官職を用意することも出来ると自分たちのバックに現在の権力者、平家がついていることをチラつかせます。
負けじと和田義盛は、自分たちの味方になれば敵から奪った所領を好きなだけ進呈すると勝手に約束しようとしますが、「土地には困っていない」とあっさりと退けられます。
損得を説いていては勝ち目がないと思った小四郎は、
「我らは坂東武者のために立ち上がったのです。平家に気に入られた者だけが得をする世を改め、我らのための坂東を作りたい!」
と宗時兄上から受け継いだ志を力説します。
頼朝が転がり込んできてからずっと受け身で、ただ振り回されるだけの立場だった小四郎が、自分の意志で、自分の言葉で「坂東武者のための世を作りたい!」と語ったのが印象的な場面でした。
やはり、宗時兄上が生前、最後に語った夢が本作を貫くテーマになりそうです。
それにしても、小栗旬さん上手いなあ。ここ数回のなかで小四郎のなかの意識の変化、成長を、台詞だけでなく表情や、声の端々から感じることが出来ます。
それでいて、蔵で米の数を数えていた、純朴で生真面目な少年の面影もちゃんと残っている。
小四郎たちが頼朝をあくまで「お飾り」
だが、担ぐに足る人物だと考えていることを知った広常。興味を惹かれたようです。
天に選ばれし英雄?
上総の館を出たところで、梶原景時と出くわした小四郎は、石橋山で頼朝を見逃した理由を尋ねます。
景時は、あの日、まわりを大庭の軍勢に囲まれながら逃げ延びた頼朝に「天運」を感じ、殺しては神罰を受けると思った、といいます。
「佐殿のもとに来ませんか?」
という小四郎の誘いに、景時は
「刀は斬り手によって名刀にもなれば、なまくらにもなる。決めるは斬り手の腕次第……」
と意味ありげな言葉を残して去っていきます。
刀を自分に、斬り手を頼朝、もしくは景親に例えているようにもとれるし、頼朝を刀、それを使う斬り手を小四郎たち坂東武者にたとえているようにもとれますね。
しかし、本作の坂東武者は敵も味方もみんなカッコいいな
三浦義澄が使者に立った下総の豪族、千葉常胤は頼朝への加勢を約束します。
お土産は、平家に与する目代の首桶( ̄▽ ̄;)
秘蔵の宝物でも見せるように「さ、どうぞ手にとってご覧下さい」と得意げに言っちゃう、THE・坂東武者イズム。
「麒麟がくる」のノッブはこの常胤さん家の子に生まれてたら、いっぱい褒めて貰えて、自己肯定感爆上げのハッピーライフを送れたかもしれないのにな……なんて思ってしまいました( ;∀;)
千葉常胤らが頼朝の陣に加わることを聞いた大庭景親は、安房の国の領主、長狭常伴に頼朝に夜襲をかけて討ち取るよう命じます。
八重さんのパートがちょっと……
伊豆山権現に行き、千鶴丸の死を知ったことを父に告げる八重。
新垣結衣さんは、オープニングでも主演の小栗旬さんの次にクレジットされているので、本作のヒロイン……つまり義時の伴侶の役となることはほぼ間違いないようです。
北条義時の別名が「江間小四郎」ですしね。
あの可哀想な江間次郎さんが亡くなったあと、小四郎が江間家を八重さんごと引き継ぐんだろうな。
義時とは叔母と甥という関係になりますが、この時代、そういう婚姻は珍しくなかったようです。
実際に平清盛の妻、時子は自分の妹を、息子の宗盛の正室にしています。
八重さんは、伊東の爺様のことを
「あなたは、血の繋がった実の孫を殺したのですよ!!」
って責めてたけれど、それを言ったら八重さんは頼朝と一緒になることで、血を分けた父兄弟、一族郎党の命を危険に晒したわけで、上に立つ者の一族としては八重さんの方が責められることをしでかしてるんではないかと……(;´Д`)
今回だって、こんな風に面と向かって祐親を責めても何もならないことは分かり切っているし、自分が伊豆山権現に行ったことが知れたら夫の江間次郎は罰せられるかもしれないのに、そのあたりのことはどうでもいいんでしょうね。
「善児をここへ呼んで下さい!」
って呼んでどうするんだろ。
善児は好きじゃないけど、彼は爺様に命じられて従っただけ。
彼の立場では拒否するっていう選択肢はないでしょうに、呼び出して、幼子を手にかけたその場面をわざわざ語らせるの?
どうしても八重さんのパートは毎回、中の人の見せ場を作ってますよー感が否めません(-_-;)
正直、なくてもいい場面が多いと思う。
もう義時と一緒になるまでは、あまり張り切って動かずに悲しみに沈む悲劇のヒロインしておいた方が良いような気がするけどなあ……。
阿野全成、登場
伊豆山権現の政子たちのもとに、仁田忠常が頼朝たちの無事の知らせをもってやってきます。
頼朝に万が一のことがあれば出家して尼になると思い決めていた政子は、安堵のあまり怒りながら涙ぐみます。
ここで仁田忠常の同行者として、頼朝の異母弟の阿野全成が登場。
演じるのは「真田丸」で豊臣秀次を演じた新納慎也さん。
義朝の七男で、生母は義経と同じ常盤御前です。
『平治物語』の中で、義朝亡きあと六波羅に出頭し「子どもたちを殺すのならば、まず私から先に殺して下さい」と涙ながらに訴える母の常盤御前に、
「泣きて物を申せば是非も聞こえ候はぬに、泣かで申させたまはで」
(泣きながら言っても何をおっしゃっているのか分かりません。泣かずにお話しなさい)
と気丈に訴える今若丸がこの全成です。
出家して京の醍醐寺にいたのですが、頼朝の挙兵の知らせを聞いていてもたってもいられずに駆けつけたと言います。
そこへ、政子たちがいることを知った僧兵たちがなだれ込んできます。
っていうか、伊豆山権現全体で匿ってくれてたわけじゃなくて、あくまで覚淵さん個人の裁量で置いて貰ってたってことΣ(゚д゚lll)!?
ここでも、この間、八重さんが来たせいで政子たちの存在がバレたんじゃないか疑惑(-_-;)
「御方さまから手をはなせ……!」
の仁田忠常さんがカッコ良すぎた!!
『平清盛』でも、盛国や正清が、時子ちゃんや由良さまのことを「北の方さま」って呼ぶたびにキューンとくる腹心の部下フェチ
政子ちゃんはもう坂東武者たちにとって「北条さん家の娘さん」ではなくて「佐殿の御方さま」なのね~。
「私が風を起こす。その隙に逃げられよ!」
という全成。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!!」
カッコ良く九字を切ったものの、何も起こらず……いや、僧兵を一瞬、怯ませる効果はあったかな( ̄▽ ̄;)
「今日は難しいようです」
「何なのよーー!!」
結局、あとを仁田さんにまかせて政子たちと一緒にドタバタと逃げ出します。
亀の前
今回はもう一人、今後、物語を大きく左右する人物が登場します。
亀の前。
頼朝の愛妾で、伊豆時代から頼朝の側に仕えた、美しくとても柔和な性格の女性だったと言われています。
「吾妻鏡」では良橋太郎入道の娘とされていますが、本作では漁師の娘になっていましたね。
潜伏先の庭先で彼女を見初めた頼朝は、舅の時政をていよく甲斐に遣わして追い払うと、側近の安達盛長に彼女を呼ぶようにといいます。
小四郎は、辛抱強く上総広常の説得を続けていましたが、広常はなかなか首を縦に振りません。
そこへ広常の配下が、今夜、長狭常伴が頼朝を襲うという知らせを持ってきます。
慌てて知らせに戻ろうとする小四郎ですが、広常に、
「頼朝に本当に天運があるのなら助かるはずだ。それをここで一緒に見届けろ」
と言われてしまいます。
その夜、頼朝が亀と共寝しているとそこに、亀の夫の権三が手下を率いて乗り込んできます。
亀が人妻だったと知って狼狽える佐殿。
ともかく源氏の嫡流が、漁師の妻を寝取って殺されたなんてことになったら泣くに泣けない。慌てて物陰に隠れます。
折悪しくというか、折よくというか、そこに長狭常伴が夜襲をかけてきます。
双方入り乱れての混戦の最中、三浦義村が駆けつけてきて長狭勢と激しい戦闘になります。
「よくぞご無事で」
この冷ややかな視線と声。
義村は終始、頼朝に対してこういう塩っけの多い対応なんですが、三浦は今回の挙兵の流れで、義村の祖父、義明が80歳を越えて城を枕に討ち死にという壮絶なことになってるわけで……。
惣領息子を亡くした時政パッパを甲斐に追い払って別の女を連れ込んでたら、こんな顔したくもなるよなあ……。
「ついでにうちの人も討ち取って」
という亀さん。DV夫だったのかな。
この人の家を政子がぶっ壊すのか。おとなしくやられっぱなしになるタイプじゃなさそうですね……。
上総広常、参陣
頼朝が夜襲から逃げ延びたことで、「天運あり」と見た上総広常がついに動きます。その軍勢・公称2万騎。
多少、数は盛ってるとはいえ、恐らくあたり一帯を埋め尽くすような大軍勢を率いて現れた広常に対し、頼朝は、
「遅い! 遅参するものなど戦場では役に立たぬ。帰れ」
と一喝します。
広常は遅参を詫び、改めて頼朝のために尽力することを誓います。
叱責された広常は、あとで小四郎に
「頼朝が大将の器でないと思えば首を獲り、平家に差し出すつもりであった。……なかなかの男だ」
と愉快そうに言います。
小四郎には皆、ついつい本音を語るのね。
主人公の手柄で大物・上総広常が動いた としないところが良いです
安易に主人公アゲをしなくても、小四郎は周囲に振り回されながら、少しずつ彼だけのもつ輝きを放ち始めている気がします。
この上総広常と頼朝の対面が、「吾妻鏡」によると9月19日。
山木兼隆の屋敷を夜襲した挙兵の日が8月17日ですから、あの日からまだ一か月ちょっとです。激動の一か月でしたね。
義経、登場
そしてラスト数分で視聴者の心を搔っ攫っていったこの御方。
菅田将暉さんの、九郎義経!
キラッキラしてる 可愛い~
これって本当に中尊寺でロケしたりしてるのかな。
明るい緑と降り注ぐ木漏れ日が美しいこの光景を、泣きながら思い出す日が来るんでしょうね……
この短いやりとりだけで、秀衡さまがどれだけ九郎を愛し、その無類の才を認めているかが分かります。
そしてその御館(みたち)の愛情を浴びて、九郎がすくすくと、まっすぐ過ぎるほどまっすぐに育っていることも……。
秀衡にとって義経は、源氏の血を引く神輿ではなく、ちゃんと自分の愛し子・九郎なんですね。
この平泉のシーンの、俗世から離れた桃源郷感がすごかった。
ファンタジーの勇者の旅立ちのシーンみたいでしたね。
まとめ
今回の大きな出来事は、
- 千葉常胤、上総広常、参陣。
- 阿野全成、登場。
- 亀の前、登場。
- 義経、平泉を発つ
このあたりでしょうか。
あと、梶原さんが次回くらいには味方になりそうなフラグをたててましたね。
本作は今のところ、メイン層に比較的ベテラン、中堅層の役者さんが揃っているので、最後に出てきた菅田将暉さんの義経のキラキラ感がすごかった
一の谷や壇ノ浦、どれくらいやって貰えるんだろう。
菅田将暉さんの九郎さまで、治承・寿永の乱が一通り見たいわ
そういえば、先週続々と追加キャストが発表されてTLが沸きに沸いていましたが、平家パートは今のところ、清盛と宗盛くらいしか出てきませんね。
重盛さまはもう亡くなってしまっているから仕方ないとして……。
富士川の戦いでは維盛くらいは出るよね~。
鎌倉サイドがメインなら、頼盛、重衡は出てくるはずだし、壇の浦をチラッとでもやるなら、知盛と二位尼、建礼門院さまくらいは出そうなんだけどなー。
役者さんの発表がないっていうことは、あまり尺をとらずにナレーションですませる感じなのかな~
義時が主人公で、後鳥羽上皇役がすでに発表されてるっていうことはクライマックスは恐らく承久の乱になるはず。
そこまでの鎌倉幕府の出来事を考えると、むしろ大泉さんの頼朝が退場してからの方がビッグイベント目白押しなんですよね。
そう思うと平家と義経パートにあまり尺をとれないのは仕方ないと思うのですが、菅田将暉くんの義経があまりに素晴らしいからもったいないな~
もう一本大河作って欲しい。
これ「直虎」の時も同じこと言ってた気がしますが
菅田将暉さんはいずれ、大河ドラマで主役を演じることがもう決まってる役者さんの一人だと思うのですが、誰を一年かけて演じてくれるのか今から楽しみです
義経といえば、静御前もまだ発表されていませんね。
本作の頼朝と政子、八重さんのあのゴチャゴチャ感を見てると、静の鶴岡八幡宮のエピソードとかは大喜びで取り上げられそうな気がするけど、どうなんでしょう。
ああ、その前に大姫と木曽の義高さまのエピソードがくるのか……(ノД`)・゜・。
正直、この時代は他に見たいエピソードが多すぎて、八重とか亀とかもうそんなに出なくていいんだよって思っちゃいます
そろそろ、木曽義仲や巴御前も出てくるのかな~。
毎週、日曜が楽しみです
↓こちら、図も多くて分かりやすく、今年の大河を見る時のお供にとってもオススメです