新年あけましておめでとうございます門松桜

今年の年末年始は「青天を衝け」の総集編をはじめ、「土方のスマホ」の再放送。
香取慎吾さん主演の「倫敦の山本五十六」、「新選組!」の総集編と伝説のスピンオフ「土方歳三最期の一日」

「幕末相棒伝」に「鎌倉殿」関連の特番などなど、歴史ファンには嬉しい悲鳴の豪華ラインナップでしたねラブラブ

 しかし毎年、紅白は朝ドラとはわりとコラボしてくれるのに大河ドラマとはあんまりしてくれないのは何でだろう。
 今年は「麒麟がくる」と「青天が衝け」
 二大名作が揃って最終回を迎えるという歴史に残る年だったので、長谷川博己さんと吉沢亮さんの共演とかちょっと見て見たかったなあ。


 それはそれとして、今年の第一回目ブログは、このブログに相応しく「平清盛」の感想記事でいきます。

 あくまでマイペースな当ブログですが、よろしければ本年もよろしくお願い申し上げますキラキラ

 

 

 

 

 

崇徳帝の反撃

 

「身を捨つる 人はまことに 捨つるかは 捨てぬ人こそ 捨つるなりけれ」

 

義清が出家の際に詠んだ歌を帝の前でよみあげる清盛。
 
「朕は……義清だけが心の拠り所だったのじゃ」
 唯一、自分の心を理解してくれた義清にまで去られた帝は失意の底に沈んでいました。

 それを見た清盛は、意を決して口を開きます。

「恐れながら、帝は鳥羽院のお子にあらず。白河院のお子におわすと伺っておりまする。
 叔父子と呼ばれ、鳥羽の院に疎まれておいでと。

 この平清盛も同じにござります。生まれ出る前から実の父・白河院に命を狙われ、母は私の目の前で殺されました。
 されど、もののけの如き御方にいつまでも振り回されるのは御免こうむりたく、この醜き世を、私なりに面白う生きて参る所存にござります」


 言い方は乱暴ですが、それは清盛なりの崇徳帝への精一杯のエールでした。
 清盛にとって崇徳帝は血の繋がりの上では異母兄なんですよね。

 生まれ落ちた境遇は変えられなくとも、どう生きていくかは自分で選ぶことが出来る。
 それを教えてくれたのは育ての父の忠盛──親友の鱸丸、妻の明子、夢を分かち合った兎丸たちの存在でした。

 

 その年、崇徳帝に待望の皇子が生まれました。重仁親王です。
 
 崇徳帝から鳥羽院へ初めて反撃の機会が生まれました。

 すでに東宮には、中宮聖子の養子となった躰仁がついていますが、崇徳帝は鳥羽院に
「我が子、重仁に帝の座を譲りたい」
 と言います。

「血の繋がりの薄き者には譲りとうない……上皇さまが叔父子の朕を忌み嫌うと同じじゃ。朕は我が子の後ろ盾となり、朕の思う政をしたい」

 

 

得子の企み

 

重仁親王の生母は、女房の兵衛佐局です。

「女房風情に産ませた子を帝にしようなどと……これでは何のために躰仁さまを中宮のご養子としたか分かりませぬ」
 
 慌てふためく忠通とは対称的に得子は落ち着き払っています。

「うろたえなさるな、関白殿。……虐げられしい帝が初めて牙を剥かれたのじゃ。受けて立って差し上げねば無礼であろう」

 そう言って不敵に微笑む得子。
 あのー……この方、なんでこんなに肝が据わってるというか天をも恐れぬふてぶてしさなんでしょうか(゚Д゚;)

 璋子のかわりに選んだのがこの女って、鳥羽院の女運ヘビー過ぎやしませんか?

 崇徳帝に、重仁親王を帝につけるための妙案があると進言する得子。

 院の妃が、実子でもない帝と二人きりで会って話せるのかとか色々疑問はありますが、女院という女性として最高位にあるたまちゃんが北面の武士たちと、御簾も隔てないで普通に話してる世界なのでそのへんはいいでしょうえー

 関白忠通と中宮聖子の面子を立てるためにも、まずは一度、躰仁に位を譲るようにという得子。

 養子である躰仁を帝位につけ、政は上皇となった崇徳帝が行う。
 新帝の東宮には重仁親王をたてて、折を見て譲位すれば良い、それまで重仁親王は得子が手元に引き取って大切に養育する。

 その申し出に、崇徳帝は頷いてしまいます。

 翌、永治元年(1141年)12月7日。

 崇徳帝は、東宮躰仁親王に譲位します。

 内裏の紫宸殿で宣命が読み上げられるのを御簾の内で聞いていた崇徳帝は、

「……皇太弟と定めためへり、躰仁親王にこの日嗣を授けたまふ……」

 という一節を聞いて愕然とします。

「今、何と……皇太弟と……朕の弟に位を譲ると申したのか!?」

 御簾の中から駆け出して叫ぶ崇徳帝。
 しかし、譲位の儀式は粛々と続いていきます。

『……皇太弟を……皇太弟に……』

 崇徳帝の養子であるはずの躰仁親王は、宣命のなかで終始『皇太弟』と呼ばれていました。

「ちがう! 弟ではなく子として躰仁に譲位したのじゃ! 弟に譲ったのでは上皇として政が出来ぬ! 謀りおったな、得子……謀りおったな!」

 崇徳帝の血を吐くような叫びが紫宸殿に響き渡ります。

 私もこのドラマで初めて知ったのですが「院政」っていうのは、帝位についているのが「我が子」でなくてはいけないんですね(゚Д゚;)
 弟でも甥でも従弟でも、相手が幼少でまだ実際に政治が出来ない年齢だったらOKなんだと思ってました。

 どんなに叫んでも罵っても時すでに遅し。

 得子の産んだ躰仁親王は、あくまで鳥羽院の皇子として帝位につき、政治は出家して法皇となった鳥羽院がこれまで通り見ることになります。
 重仁親王の即位という唯一の希望を、騙し討ちのような形で取り上げられ踏みにじられ、上皇となった崇徳院の心に大きな遺恨が残ります。

 

近衛帝即位

 

新帝──近衛帝が即位した翌、康治元年(1142年)正月。

 平氏の忠盛の屋敷には一門の主だった者たちが集い、賑やかに新年の宴が開かれていました。
 帝の生母となった得子は皇后となり、ますます勢力を増しています。
 
 家盛の乳父の惟綱は、
「われら平氏も今のうち、鳥羽の法皇さまばかりでなく得子さまにも取り入っておくべきではないでしょうか」
 と言い、家貞は、
「あまりに無節操なやりようは不信を招こう」
 とそれを制します。

 忠正は、
「そもそも院に忠義を励むばかりで良いのか? 内大臣頼長さまは藤原摂関家の栄華を取り戻されるやもしれぬ」
 と最近存在感を増している、摂関家の後継者の名を口にします。

 そのどれもに、「さようさよう」「その通り!」と忙しく頷いて、家貞さんに「分からぬのなら黙っておれ」と言われてる忠清さんが可愛い( *´艸`)

 家盛は、今は忠盛が三位に上がれるかどうかの瀬戸際、これまで以上に鳥羽法皇への忠勤を励むべき、と意見を述べます。

 清盛は退屈そうにあくびをしています。

「今の王家にも摂関家にも、信ずるに足る御方などおられぬわ。誰に取り入るかなど話し合うだけ無駄じゃ」

「兄上……兄上も私も今は一家をなす身。いつまでも戯れを言うておる年ではありませぬ」
 日頃、温厚な家盛が珍しく気色ばんで反論し、場が緊張しかけた時、宗子が清盛の妻の明子、家盛の妻の秀子をともなってやって来ます。

 一門の益々の繁栄を願って楽を奏じるという宗子。
 雅やかな楽の音が流れ、場の空気が和らぎます。

「義姉上の和琴の音色、いつもながら見事じゃ」
 と忠正叔父さん。

「秀子さまの笙もさすがに品良き音色にございます」
 家盛の乳父の惟綱は、主君の妻の秀子を褒めたたえます。

「明子さまの琵琶の音も、お人柄の通り凛としておる」
 家貞の賛辞に、清盛も嬉しそうに顔を綻ばせます。

 初見時は気がつきませんでしたが、今見るとこの時点で忠正叔父さんは頼長を支持する発言をされてるんですね。

 そして家盛が初めて、清盛に反駁しました。

 やはり宗子ママの、それこそ痛々しいまでの父忠盛を想う気持ちを知ったこと、そして自分の恋心を抑えて家のための結婚を選択したことが、家盛を清盛よりも早く、一つ大人にしたのでしょうか。

 

 常に父のこと、母のこと、一門のことを考えて行動している家盛に比べて、今の世の不満ばかりを口にしている清盛はどうしても子どもに見えますね……。

 

のちの建春門院登場

 


 時子は相変わらず『源氏物語』の世界に憧れていました。

 朧月夜の君との出会いの場面を朗読してうっとりしている時子。
 庭先では異母妹の滋子が、ままごとをして遊んでいます。

 瓶子を手にとって酒を一気飲みするような仕草をしている滋子を見て、時子はびっくりします。

「まあ、滋子! はしたない!」
 叱られた滋子は、あかんべえをして平気な顔です。

 この小さな女の子がのちに後白河帝の寵姫となり、平家の繁栄の礎を築く建春門院となる滋子ですね。

 時子と滋子は異母姉妹ですので、実際はこんな風に幼い頃からともに過ごしていたかどうかは分かりませんが、時子と滋子の年齢差がここで分かりやすくなっていますね。

 そこへ明子が訪ねてきます。

「時子さま、琵琶は続けておいでですか?」
「え、ええ、もちろん」
 あやふやに答える時子。

 平氏と親しい藤原家成から、やんごとない姫君たちに琵琶を教えて欲しいと頼まれたという明子。時子にもその手伝いをして欲しいと言います。
 清盛と顔を合わせたくない時子は、断ろうとしますが明子に何度も頼まれて仕方なく引き受けることにします。

 琵琶の稽古の日。

 明子の指導のもと、時子と貴族の姫たちが琵琶の練習をしていると、そこに清盛が郎党たちを連れて賑やかに帰ってきます。

 なかには、半裸のような格好の者もいて姫やその侍女たちは「きゃっ」と悲鳴をあげて怯えます。

「大事ござりませぬ。我が殿にござりまする」
 明子が微笑んで清盛を紹介します。

 清盛は、時子を見ると、
「おお、明子の友達か。お初にお目にかかります」
 と頭を下げます。

 二度も会っていながら清盛はまったく時子のことを覚えていないようです。

「いつ、どのようにお会いしましたかな?」
「いつ、どのように!?」

 そう言われても二度の出逢いはどちらも時子にとって思い出したくもない場面です。

「思い出さなくて結構にございます!」
「なんじゃ、妙な女子じゃな」
「まあ、相変わらず無礼な、光らない君!!」

 清盛と時子が言い争っているその時、明子はふと庭先にいる盛国の視線が一人の娘に向けられていることに気づきます。
 貴族の姫たちはそれぞれ侍女を連れてきていましたが、そのうちの一人、波子という娘です。

 波子も盛国の視線に気づいたのか、恥ずかしそうに俯いています。

 

 

 波子さん……正直、ほとんど覚えていなかったんですが可愛いなラブラブ

琵琶のごときおなご

 清太が生まれた翌年、清盛と明子に第二子となる男児が誕生しました。

 のちの基盛ですね。
 
 清太と清次、そして明子。
 愛する家族との幸せな日々に浸る清盛に、ある日明子が、
「そろそろ、盛国にも妻を迎えてはどうでしょう?」
 と切り出します。

 盛国は清盛よりも年上ですので、とっくに妻帯していても良い年齢です。
 明子に言われて初めてそれに気がついた清盛は慌てます。

 早速、盛国を呼び波子との縁談の話をしますが、盛国は「未熟な自分に縁談など、とても考えられない」と頑なにこれを辞退します。
 
「ああ、そうか。ならば勝手にせい! なんじゃいともあっさりと断りおって!」
 明子のせっかくの気遣いを無碍にされたと腹を立てて、その場から出て行く清盛。

「盛国」
 退がろうとする盛国を明子が呼び止めます。
 明子は盛国が、心の奥に秘めている気持ちに気づいていました。

「そなた、気にしておるのではないか? もとは漁師であることを」

 盛国は、はっとした顔になり慌てて頭を下げます。
「……波子殿は名のある御家に仕えておいでとお見受けいたしました。私が粗相をすれば殿に恥をかかせてしまいます」

 明子は静かに微笑みます。

「盛国。そなたは立派な武士じゃ。そなたほど心優しく、強く、ひたむきなおのこを私はほかに知らぬ。殿のはからいで武士となったことを片時も忘れず、武芸にも学問にも侍忌、誰よりも殿を思うて、殿に尽くしてくれておる。漁師の出であればこそ、そうなれたのではないか?
 どうか殿と私に、そなたの婚礼の支度を整えさせてくれぬか。盛国」


「北の方さま……」

 明子の率直な、真心のこもった説得に盛国はこみ上げる涙をこらえて頷きます。
 その一部始終を物陰から清盛が見ていました。

 その夜、清盛は明子が琵琶の手入れをするのを見つめながら語りかけます。

「明子……まこと、そなたは琵琶のごときおなごじゃ。決して目立たぬが、要となって家を支えてくれておる」
「そんな、もったいのうござります」

「まことじゃ。俺はそなたがおらねばなにも出来ぬ」

 明子は静かに笑って、琵琶を奏ではじめます。
 優しく、穏やかな、明子そのもののような音色に身を任せるように清盛は目を閉じ、そのまま眠ってしまいます。


 

 平清盛は「父と子」「主従」の男同士の関係の描き方が秀逸な作品ですが、他に特徴的なのが女性の描き方だと思います。

 

 大河ドラマや時代もののヒロインを、かいがいしく健気で母性的な女性に見せる手法として、縫物や料理、幼い子どもたちの世話をしている場面を多く入れるというのがありますが、実際の武家の奥方が家を切り盛りするってそういうことではないと思うんですよね。

 

 「麒麟がくる」の十兵衛や、「真田丸」の源次郎みたいな浪人生活の場合はもちろん何でもやらなきゃいけないでしょうけれど、本来はある程度の家の奥方さまともなれば、家事や育児はいくらでもやってくれる侍女さんがいるわけです。

 

 今回、明子さんが盛国に対してした心遣いは、縫物や料理といった分かりやすい「記号」を使わずに明子さんの一家を支える女主人としての資質を描き出した見事なエピソードだと思います。

 

日曜8時枠の限界に挑む男

 その頃、東国に下った義朝は、三浦、上総など有力な豪族を次々と配下に加えていました。

 



 相模の波多野義通の館で歓待を受けた義朝は、その夜、寝所に侍った義通の妹の通子(みちこ)と関係を持ちます。

 


 通子さんもなかなかに可愛いラブラブ

 

 しかし、ワイルド過ぎる義朝さまの床入り。
 日曜8時に放映していいのかギリギリの場面でしたね( ̄▽ ̄;)

 すでに先年、三浦義明との間に長男・義平をもうけた義朝は、この波多野の娘との間に次男・朝長を儲けます。

 その頃、由良御前はそんなことは露知らず都で義朝の帰りを待ちわびていました。
 為義のもとを度々訪れて、義朝の消息を聞こうとする由良御前。


 なかなか会えないもどかしさが募って、つい為義に当たってしまいます。

「いったい、お手前は何をなさっておいでじゃ! 源氏の棟梁たるお人が、いつまでも位低き検非違使で、これといった手柄もたてずに燻ぶっておいでとは……」

 由良御前にしてみれば、為義が平氏の棟梁、忠盛のようにしっかりしていれば義朝も東国などへ行かずに京で宮仕え出来ていたのにという思いなのでしょう。

 日頃は黙って聞いていた為義でしたが、とうとう堪忍袋の緒が切れます。

「黙らっしゃい! 黙ってきいておれば熱田の宮の姫様か内親王の女房か存ぜぬが、そなたにそうズケズケ言われる筋合いはない!」

 由良御前は縮み上がります。

「申し訳、ござりませぬ……失礼なことを申しました。……私はただ、お会いしたくて……義朝さまに、お会いしたくて……」

 俯いて涙をこぼす由良御前を見て、為義も由良御前が高慢な態度の裏で、一途に義朝を慕っていることを知り表情を和らげます。
 

璋子の出家

 

 

 璋子に仕える源盛行とその妻が、得子を呪詛した罪で土佐に流罪とされます。
 盛行の庭から出て来たという、呪いの言葉がぎっしりと書き込まれた人形を得意げに見せる得子。

「その者らが勝手にやったことか、あなた様がお命じになったのか、そこは詮索いたしませぬゆえ……」

 国母として皇后の座についた得子にとって、璋子はもはや敵ではありません。
 勝ち誇ったような態度に耐えかねて堀河局が、

「璋子さまはさようなことはなさりませぬ!」

 と反論しますが、璋子はそれを制します。

 呪詛に使われたとされる人形が着ている着物が、かつて自分が皇女の誕生祝いとして得子に贈った産着だと気がつく璋子。

 堀河局は、「これは璋子さまを陥れんがために得子さまが……!」と顔色を変えますが、璋子は、

「陥れるのではない。救うて下さるのじゃ。鳥羽の法皇さまを傷つけ、新院を苦しめ、義清を出家に追いやった私の愚かさを……こうして突きつけて下さっておるのじゃ」

 と言って寂しげに微笑みます。
 それから一月後。待賢門院璋子は、堀河局ら女房たちとともに髪を下ろします。

 

 

もののけの血

清盛は、明子をともなって神社に参詣しました。

 並んで手を合わせて参拝する二人。明子の願い事は、清盛や子供たちの健康、盛国夫妻の円満、博多にいる兎丸たちの無事、父の息災長寿など人のことばかりです。



「では、そなたのことは俺が願うてやろう」

柏手を打ち、「明子が息災なること、明子の琵琶がますます上達すること……」と明子のための願いを並べ立てる清盛。

「殿、そんなにお願いしては神様がお困りになります」
「なんの、神様がこれしきでお困りでどうする」

 明子は「では私からも一つだけ」と「今年こそ、海に行き、殿と船に乗れますように」と手を合わせます。
 そんな明子を愛おしげにみつめる清盛。

 

 この先の史実を知らない人でも震え上がるような巨大フラグを打ち立てる幸せ夫婦……やめて(ノД`)・゜・。


 拝殿を出ると、境内の片隅で倒れている男がいます。

 明子は迷わずその男に駆け寄ると、清盛に水を、侍女の生田に薬を持ってくるように頼みます。
 咳き込んでいる男の背を優しく撫でて、介抱する明子。


 その夜、明子が高熱を出して倒れます。
 大急ぎで呼ばれた薬師は、明子を一目見ると、

「都で流行っている風病でござりましょう。どなたさまも近くに寄らぬが賢明かと」
 と言います。

 早く治せと詰め寄る清盛。
 薬師は困ったように、治せる薬がないといいます。

 明子の病を治せるのは宋から渡ってきた薬のみ。けれど、前述の通りこの時代、宋との取引は大宰府以外では禁じられていました。

 今すぐ博多へ行くという清盛を盛国が慌てて止めます。
 今から博多へ行ったところで、清盛が都を離れているうちに明子の命が尽きてしまうことは明白です。

 明子の父、高階基章は、
「申し訳ござりませぬ……清盛さまの妻としていただきながら、お邸うちに病など持ち込んでしまい……」
 と涙ながらに詫びます。

 身分の低いばかりにこんな時も娘の命よりも、平氏一門に迷惑がかかることを恐れている基章さんが切ないです(´Д⊂ヽ

 その時、侍女たちの動きが慌ただしくなりました。明子の熱がいっそう高くなったようです。
 明子のもとへ駆けつけようとする清盛。

 しかし、それを基章が必死で止めます。
「清盛さまは平氏のご嫡男にございます。もしものことあらば、明子は病に苦しむよりも、もっと苦しむことになりましょう!」


 時子が清盛の館を訪れると庭で、清次が泣いています。
 兄の清太が懸命にそれを慰めていましたが、時子が声をかけると清太も泣き出してしまいました。

 屋内からは、祈祷の声が聞こえてきます。
 薬が手に入らないとなった清盛が呼び集めた僧侶たちです。

 忠盛と宗子、家盛、家貞らが見舞いにやってきますが、必死に祈っている清盛に声がかけられません。

 その時、経を唱えていた清盛がふいに立ち上がります。

「薬師にも治せず、僧侶の祈祷でもおさまらぬのじゃ。何か憑りついておるのかもしれぬ。陰陽師を呼べ!!」

 清盛の母、舞子が命を奪われたのは白河院が、陰陽師の下した託宣を信じたためでした。
 それを知っている忠盛は、
「陰陽師などあてにしてはならぬ!」
 と清盛を叱りつけます。

「ならば、どうせよと言うのですか!? どういやって明子の命を救うのですか!!」

 忠盛に詰め寄る清盛の目は血走っています。

 その時、琵琶の音色が聞こえてきました。
 はっとして振り向く清盛。

 それは泣いている子供たちを慰めるため、時子が弾いている琵琶の音でした。

 その音色に反応するように、明子が目を開きます。
「殿、北の方さまが……!」

 清盛は祈祷の場となっていた母屋を飛び出し、明子のもとへ駆けつけます。

「明子!」
「なりませぬ! 殿はなりませぬ!!」

 御簾の内へ飛び込もうとする清盛を、盛国が必死に止めます。

 盛国に縋りつかれながら、清盛は叫びます。

「明子! 死んではならぬぞ! 約束したではないか! 二人で船に乗り、海を見ると……!!」

 清盛の言葉に、明子の目が夢見るように揺れます。

「もう十分見せていただきました……大きな船も……海の景色も……殿の目に映っていたから……殿の目に映る、広くて面白き世を、ともに思い描くことが出来て、明子は幸せにございました……」

 切れ切れの明子の声を、一言も逃すまいと聞こうとする清盛。

「殿……どうか、悲しまないで下さいませ……」
「明子!!」

 清盛が盛国の手をふりほどいて御簾の内へ飛び込んだとき、明子はかすかに微笑むような表情を浮かべて目を閉じていました。

「明子! 明子!」
 明子に縋りついて絶叫する清盛。しかし、明子がそれに答えて切れ長の美しい瞳を開けることは二度とありませんでした。

 泣き叫びながら祈祷の場へ引き返し、

「この役立たずどもめ! 明子を生き返らせよ! さもなくば生きてここから帰さぬ!!」

 と手あたり次第に僧侶たちを蹴り倒し、宋剣を振り回す清盛。

 

 忠盛たちも狂乱する清盛を見ていることしか出来ません。

 愛する者の死を我を忘れるほどに悲しみ、荒れ狂う。
 その姿は、清盛に実の父、白河院の血が濃く流れていることを忠盛に否応なく思い出させました。

 



 最愛の后、賢子の死に際し、宮中の前例を無視して最後まで彼女の側を離れようとしなかった白河院。
 賢子の忘れ形見の皇女、郁芳門院に先立たれ、衝動的に髪を下ろして出家した白河院。
 そして愛する璋子のために、自分の子を宿した舞子を殺せと迷いなく命じた白河院の血が、紛れもなく清盛には流れているのです。

 
 そんな清盛に懸命にしがみついたのは盛国でした。

「殿……恨むなら宋の薬を求めるを許さぬ法をお恨みなされませ! 疫病を止められぬ朝廷をお恨みなされませ。そして、皆が健やかに生きられる世を……殿がお作りなされませ。それこそが北の方さまが夢見た景色にござります!」

 清盛とともに海が見たいと言った明子。
 彼の目に映る面白き世をともに見られて幸せだったと言った明子。

 清盛にとって明子は、妻というだけでなく、初めて彼という存在をありのままに受け入れて愛し、家庭の温かさ、愛情を与えてくれたかけがえのない人でした。

 静かで穏やかな愛情で、清盛を包み込んでくれた明子はもう二度と帰って来ないのです。
 清盛は声を放って泣き崩れます。

 

まとめと感想

 


というところで今回はおしまいです( ;∀;)

 清盛の最愛の妻、明子さんが亡くなってしまいました。

 加藤あいさん演じる明子さん。

 しとやかで物静かで優しくて、控えめでいながら芯があって……。
 清盛の世界に完璧な人はいない、と以前書いた気がしますが、この明子さんは早逝されてしまうこともあって、ほぼパーフェクトな理想の女性として描かれていますね。

 家中で何かと浮き上がりがちな清盛の妻として、義理の母の宗子や、家盛の妻の秀子と交流をしたり、盛国の縁談を気遣ったり。

 ただ、おとなしく控えめなだけでなく、清盛の話す海や交易の話に目を輝かせる柔軟さや好奇心もあり、病に倒れている人を見れば迷わず手を差し伸べる。

 きちんと明子さんの人柄、その魅力をエピソードを重ねて描いているので、よけいに彼女を失った清盛の悲しみ、絶望が胸に迫ってきます。

 のちの由良御前や、重盛の妻となる経子さんの描き方をみても藤本有紀さんの脚本は、女性のしなやかな強さ、魅力を描くのがとてもお上手ですね。

 主人公やヒロインを魅力的に見せようとして、ひたすらまわりに褒め讃えさせたり、他の者を下げて持ち上げたりしている作品もありますが、『清盛』の脚本は決してそれをしませんね。

 明子さんを持ち上げるために、宗子ママや秀子さんを変に意地悪な役にしたりしないし、清盛に冷たくあたる忠正叔父さんや家中の者たちに啖呵を切らせたりもしません。

 二人のラブラブ、いちゃいちゃな場面を必要以上に挟んだりもしない。

 けれど、この数話のなかで明子さんが清盛にとってどれだけ、かけがえのない大切な女性なのかがきちんと伝わってくるようになっているんです。
 琵琶の使い方も印象的でした。

 決して登場回数は多くないけれど、視聴者の心に深い印象を残した女性ですね。
 この優しく聡明な明子さんが、重盛の生母だっていうのが説得力があり過ぎて後々、また色々と効いてくるんですよね~( ;∀;)


 清盛の身辺以外にも、崇徳帝から近衛帝への譲位があったり、得子さんが皇后になり、たまちゃんが出家したりと世の中が大きく動いた回でしたね。

 崇徳帝にも第一皇子の重仁親王が誕生しました。
 この重仁親王を中宮聖子さまのご養子にしてはいけなかったのかな~(-_-;)

 それにしても、今回を見直して改めて、「あ、そういえば盛国結婚してたのか(;´・ω・)」って思い出しました。
 この波子さん、今後ほとんど登場してなかった気がするからさ~。

 史実だと盛国にもちゃんと子供がいるんですね。
 でも、その子供たちもこのドラマの中では登場していないような……。

 義朝さまは、いつの間にか悪源太と朝長くんを作っちゃってましたね。

 東国放浪生活で、だいぶ人相と性格が変わったような……( ̄▽ ̄;)
 都にいた頃は、もうちょっと常識人っぽいキャラでしたよね。

 清盛との対比でそう感じただけかもしれないですけど。

 義平は永治元年(1141年)、朝長は康治2年(1143年)となっているので二歳違いですね。

 ちなみにこれと同じ頃、為義パパもまだまだ現役で義朝さまの弟たちを作りまくってますよ(;'∀')
 のちに以仁王の令旨を頼朝のところに持ってきたことで有名な新宮十郎行家さんとかは、この頃生まれたと言われています。

 保元の乱で活躍する人間バズーカ鎮西八郎くんもこの時まだ二歳ですね。
 いったい、いつの間にどこで作ってるんだ、為義パパ。そりゃ由良さまにも「何やってんのよ!」って怒られるわ( ̄▽ ̄;)

 あと、今後の重要メンバーでは時子さんの異母妹の滋子ちゃんが今回チラッと登場していましたね。

 のちに絶世の美貌をうたわれ、ごっしーの寵愛を専らにするだけあってなかなかに可愛らしくも奔放そうな女の子でした。


 ここにきて忠盛パパが清盛のことを「やっぱり白河院の血が……」って思っていたのがちょっと悲しかったなー( ;∀;)

 いや、最愛の奧さんが亡くなったんだよ。清盛じゃなくても取り乱すでしょ。
 まあ、祈祷に来てくれてた僧侶に喧嘩キック連打は確かに普通じゃないけれど……(◎_◎;)

 そういえば、本作の清盛の必殺技として名高い喧嘩キックの初出は今回なのかな(・・?


 ここまでで全体の約5分の1が終わったわけですが、レビューを書いてみて思ったのが、

「あれ? 清盛のやんちゃ時代が意外と長いな……(;・∀・)」
 ということ。

 個人的には保元の乱以降の回の印象が強いので、そこまでにこんなに色々あったのを忘れてました。

 忠盛パパ、家盛くんも結構登場回多かったのね。

 
 大きな心の支えを失った清盛。
 大切なものを守れないまま、王家に仕えて生きていく武士としての生き方にますます疑問を抱くようになっていきます。