文治元年(1185年)3月、鎌倉。

 平家とともに壇ノ浦の海に没した三種の神器のうち、草薙の剣だけが見つからないという報告を受けた頼朝は、
「構わぬ。見つからぬことも無理からぬことじゃ」
 と言い、かすかに微笑みます。

《剣の行方が知れぬと聞いて、清盛だと思った。今も清盛が生きていてどこかで剣を振り回しているのだと。なにしろ平清盛は誰よりも逞しく乱世を生き抜いたまことの武士だったのだから》
 

無頼の高平太

 時は遡って大治三年(1128年) 秋。

 平太が出生の秘密を知ってから三年の月日が流れていました。
 このドラマのなかで舞子が平太を生んだのが1118年のことでしたから、この時、平太は10歳ということになります。

 色々とこじらせてすっかりメンドクサイ不良少年に成長した平太。
 ボサボサのポニーテールに、だらっと着崩した着物、高下駄という風体で賭場に出入りしては騒ぎを起こしています。

 こうした平太の行状を平氏一門の人々は苦々しく思っていました。

 特に、忠盛の弟の忠正は、正室の子である平次がいながら忠盛が血の繋がっていない平太が嫡男扱いされていることに強い不満を抱き、忠盛にもそれを訴えます。
 それを外から帰ってきた平太が聞いていました。

 忠盛は、年が明けたら平太の元服を行うと言います。

「俺は父上のようにはならぬ! 貴族にも、王家の犬にも、平氏の犬にもなる気はない! いっそ逞しい野良犬として生きていく!」
 と反発する平太。

 忠盛は、平太の中にある苦悩を知りつつも「あやつが自分で這い上がってくるしかないのだ」と放っておくように言います。
 

うつつに生けるもののけ

 自分がいったい何者なのかという疑問に常にとらわれ、苛立つ平太。

「くそ、俺は、俺は……俺は誰なんだーーーーっ!!」
 思わず叫んだその時、

「誰でもよ~い。誰でもよいから助けてくれ~」
 という声が聞こえてきます。

 見ると、以前、平太が町のごろつきを落とすために掘った落とし穴に落ちた一人の男が、穴の底からこちらを見上げています。

 のちに平太の運命に大きく関わってくる信西入道──この時点ではまだ、出家前の高階通憲との運命的な出会いでした。

 並んで月を眺める二人。通憲は、月にかかる黒煙を見て、白河の院が出した殺生禁断令について語ります。
 仏教の教えにしたがい殺生を禁じるため狩りや漁を禁じ、漁に使う網を都に送らせて御所の庭で焼かせているというのです。

「白河の院は太平の世が生んだ怪物よ。うつつに生けるもののけ、とでも申すもの」

 自分にもその「もののけ」と呼ばれる院の血が流れている──平太は表情を曇らせます。

 白河院の前で今様を披露する祇園の女御。

「女御」とは天皇の后妃に与えられる正式な位の名ですが、彼女の場合、正式に朝廷に叙せられた女御ではなくその寵愛をめざましさを称えて周囲が呼んだ名前のようですね。

 自身でも、もとは舞子と故郷を同じくする白拍子であったと第一回で言っていました。

 平太が年が明けたら元服を迎えることを伝え、「一度、会うてやってはいかがでしょう?」という女御。
 そうすれば漁網など焼かずとも極楽往生がかないましょう、という女御に、白河院は苛立たしげに手を上げます。
 

鳥羽院の苦悩

 

 譲位させられた鳥羽院は、自分を無理矢理に退けて不義の子、顕仁親王を帝位につけた白河の院を激しく憎みながらもどうすることも出来ずにいました。

 屈辱と嫉妬に苦しみながらも、璋子への想いを断ち切れず彼女のもとを訪れずにはいられない鳥羽院。

 そんな院の苦悩もどこ吹く風で、璋子はいつも人形のように美しくおだやかに微笑んでいます。

 この壇れいさん演じるたまちゃんの無垢で空虚な美しさ……

 

 


 鳥羽院が憎みつつも惹かれずにはいられないのがよく分かる、まさに魔性の美しさです。

 朝廷パートは特に、光と闇を巧みに使った演出が絶妙ですね。
 どこか現実感のない、薄闇のなかに浮かび上がる御簾の内の世界と、平太や忠盛たちが生きている血と汗と埃にまみれた外の世界との対比がすごく効いています。
 

清盛、元服

 平太の元服の日がやって来ました。

 忠盛は、平太がごねるのを見越して腕自慢の家臣、伊藤忠清をその場に呼んでいました。
 案の定、ごねだした平太でしたが力の強い忠清に軽々と取り押さえられて、強引に冠を被せられてしまいます。

 忠盛が平太に与えた名は「清盛」でした。
 平清盛の誕生です。

 



 加冠役をつとめた藤原家成は、「白河院の暴虐をなぜ貴族は放置しているのか!」と喚き散らす清盛に、

「白河の院もご高齢。少々、お耳も遠くおなりです。遠くで野良犬がいくら吠えたところでお耳には届きますまい。せめて飼い犬となってお側で吠えねば」
 と暗に、世の中を変えたいと思うのならば、ただ喚くだけでなく朝廷に出仕してそれなりの身分にならねば何も出来ないと伝えます。

 白河院の出した殺生禁断令の影響は、滝次と鱸丸の住む浦にも及んでいました。

 その辺りの漁師の元締め的な存在だった滝次は、漁を禁じられ飢えに苦しむ我が子や仲間たちをみかねて隠れて漁を行ったのが見つかり、捕らえられてしまいます。

 衰弱しきった姿で都にやってきた鱸丸からそれを聞いた清盛は、忠盛にすぐに滝次を助けに行こうといいますが、忠盛は「法皇さまに逆らうことは出来ない」と言います。

 怒った清盛は、
「だったらなにゆえ俺を名づけたんだ、『清盛』と。なにゆえ清いという字など与えたんだ。罪なき民を泣かせて武士などと名乗れるか!!」
 と怒鳴って飛び出していきます。

 それを聞いた忠盛は笑い出します。

「武士と申したぞ……清盛が、おのれを武士と」
 
 清盛は、自分でも気づかないうちに父と同じ「弱い立場の人々を守れる存在=武士」になろうとしていたのです。
 それは平太を自分の子として育てると決めた日から、忠盛がずっと待ち望んでいた瞬間でした。
 

武士の子

 白河院の御所へ押しかけ、滝次を許すようにと直談判する清盛。

 けれど院は見せしめのためにも許すわけにはゆかぬ、とそれを退け、清盛に生みの母、舞子の無残な最期を語って聞かせます。
 今、自分がいるその場で母が殺されたと聞かされて愕然とする清盛。

「生まれる前から王家に禍する者と言われ、母を殺されてなお、何故、私は生きているのですか」
 とたずねる清盛に、法皇は

「それは、そちにもこの、もののけの血が流れているからだ」
 と告げます。

 



 悄然として清盛が屋敷に戻ると、庭先で鱸丸が泣いています。
 滝次を助けられなかったことを知った清盛は、「すまぬ! すまぬ、鱸丸!!」と泣いて詫びながら自分の無力を痛感します。

 自分がいくら怒り、喚き、訴えたところで白河の院は眉一つ動かしませんでした。
 このまま、「無頼の高平太」として粋がっていたところで何も出来ない。

 そう気づいた清盛は、忠盛に舞の稽古をつけてくれるように頼みます。

 石清水八幡宮の放生会の日。

 舞人をつとめることになった清盛を貴族たちが興味深げに見ています。
 その中に、以前、清盛が穴の底から救い上げた高階通憲の姿もありました。

 彼が白河の院の落とし胤だという噂は、貴族たちの間にも広まっているようです。

 雅やかな楽の音に合わせて舞い始める清盛。

 


 が、舞の途中で突然、手にした太刀を投げ捨てます。

 そこへ屋根の上に隠れて舞台の上を伺っていた鱸丸が、宋剣を投げ入れます。
 忠盛から送られたあの宋剣です。

 それを手にした瞬間、清盛の舞が一変します。
 荒々しく舞台を踏み、鋭く剣を振り回して舞う清盛。

 その鬼気迫る様子にその場の全員が息を呑んで見入ります。

 剣を振り回しながら次第に白河院の御座に近づいていく清盛。
 まわりはざわめきますが、白河院は微動だにせず清盛を見据えています。

 太刀を振りかぶり、白河院に向けて大きく跳躍する清盛。

 人々が息を詰めて見守るなか、宋剣を地面に深々と突き立てた清盛はその場にすっと膝をつきます。
 
 白河院は立ち上がると、
「なかなか面白き舞であった。……まこと、武士の子らしゅうての」
 と言い置いて立ち去ります。

 清盛は、やって来た忠盛に、

「俺は父上のようにはならぬ。王家の犬にも、平氏の犬にもならぬ。されど俺は生きる。野良犬の声がこのおもしろうもない世を変えるまで……面白う生きてやる」

 と言います。忠盛はかすかに微笑むと「好きにせよ」と答えます。

 舞を見に来ていた源為義主従は面白くありません。

 自分たち源氏が常に院から軽んじられ、汚れ仕事ばかりを押しつけられているうちに、ライバルである平氏はいつの間にか、その息子が朝廷の行事の舞人に選ばれるまでになっていることが腹立たしくて仕方ないようです。

 そこへ「父上!」と為義の息子、武者丸がやって来ます。

 木に登って一部始終を見ていた武者丸は、「あれが平清盛か」と楽しそうに言います。

 出たーーーーーー伝説の玉木宏 6歳爆誕の場面!!(≧∇≦)
 この時、清盛は12歳、武者丸(のちの義朝)は6歳なんですよね。
 なんで子役を使わなかったんだーーーー(^^;)


 二人の子世代の頼朝や重盛は、本役の役者さんの前にミドルエイジの役者さんをちゃんと使っているのにね(;・∀・)

 清盛は「面白うもない」って言ってたけどあんな六歳が生きてる世界は、そのままで十分面白いと思うよ~。

 そして今回の最期でタフマン法皇ご退場。

 え、こんなに早かったっけ( ゚Д゚)!? とビックリしました。
 二回しか登場していないのにすごい存在感。

 世の頂に君臨していた白河院が崩御したことで、良くも悪くも保たれていた世のバランスが崩れ、いよいよ世の中が動いていきます。

 というところで第二回は終了~。


 正直、リアタイ視聴時は「ぼく武者丸、6歳」以外あまり印象に残ってなかった回ですが見返してみるとなかなかに面白かったです。

 ごろつきたち相手に博打と喧嘩に明け暮れていた清盛が、無位無官のごろつきのまま、どんなに喚いてみたところで何も出来ず、大切な者も守れない、ということに気づいた回でしたね。

 面白く生きるためには、覚悟と力がいる。
 それが第一回でパパが言っていた「死にたくなければ強くなれ」に繋がるのかな~。


 私としてはどの回を見てもめちゃくちゃ面白いし、すごく引き込まれるんですけど見返してみながら改めて、初回放映時に視聴率が低かったのも、ある程度は仕方ないのかな~と思っちゃいました。

 清盛自体が感情移入されるタイプの主人公じゃないし、登場する人たちの関係が勧善懲悪みたいにハッキリ分かりやすく色付けされてない。

 清盛を嫌悪する忠正や、我が子可愛さがどうしても透けて見えている宗子ママも悪人じゃないんですよね。
 むしろ、現時点では自由気ままな清盛に振り回されている被害者ですらある。

 忠盛と舞子、白河院と清盛、鳥羽院と璋子。

 色んな関係が複雑に絡み合っていて、サッパリしている人間関係が一つもない!

 個人的にはめちゃくちゃ好みなんですが、確かに好き嫌いが分かれるドラマかもしれません。
 ただ当時言われた「画面が汚い」に関しては全力で抗議しますけど!