ようこそのお運びで厚く御礼申し上げます桜

今日は『軍師官兵衛』の主人公・官兵衛さんの一人息子。(次男はいたけど早逝したらしい)

松寿丸こと黒田長政さんとその妻たちのお話をしてみたいと思います。

黒田長政の妻というと、関が原の前夜、官兵衛の妻、光さんと一緒に西軍の包囲網をかいくぐり大阪を脱出したエピソードで知られる徳川家康の養女、栄姫(えいひめ)が有名ですが。

実は、その栄姫と結婚するより前、長政くんにはれっきとした正室がいました。

秀吉の側近、蜂須賀正勝の娘、糸姫です。

正勝は、秀吉が信長に仕える以前からの最古参の側近で、『官兵衛』のなかでもピエール瀧さんの演じる小六(正勝)は、秀吉の実弟、小一郎秀長とともに常に秀吉の傍らに控えていますよね。

子のない秀吉は、この正勝の娘を養女格として、官兵衛の嫡男、長政に嫁がせました。

ふたりの間には一人の姫が生まれています。

ところが、慶長3年(1598年)

秀吉が逝去すると情勢は一変。

文治派の石田三成らと対立を深めていた長政は、同じく三成への憎悪を募らせていた秀吉子飼いの武将、福島正則、加藤清正らとともに徳川家康に接近。

家康の養女、栄姫を正室に貰い受けると、それまでの正室であった糸姫を離縁してしまいます。

糸姫は一人娘を残して泣く泣く実家の蜂須賀家へ戻ります。

残された娘(一説には菊姫とも)は、その後、黒田家の家臣、井上九郎右衛門の息子のもとへ嫁いでいます。

今のところ、栄姫役には吉本美憂さんが発表されていますが…糸姫役は出演するのかな?

そもそも、今年の「清く正しく明るい黒田家音譜」な感じだと、糸姫のことは「なかったこと」にされちゃう可能性も大?

ちなみに栄姫は、長政との間に福岡藩二代当主・忠之をはじめとして、三男二女を儲けています。

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ここからはちょっと血なまぐさいお話…。

ドラマでは少し先の話になりますが、本能寺の変から5年後の天正15年。

九州征伐で功績を挙げた黒田家は、秀吉から豊前国(現在の福岡県)中津に六群、12万5千石を与えられます。

鎌倉時代からこの地で勢力を誇っていた城井鎮房(きい・しげふさ)は伊予の国への転封を命じられますがこれを拒否!反乱の兵を挙げます。

まあ、当然といえば当然ですよね。

先祖代々、自分たちが治めてきた土地を、ヨソモノに明け渡して出てゆけと言われて、「はい。わかりました」って素直に従えというのが無理な話。

黒田父子は反乱の鎮圧に乗り出しますが、城井氏の抵抗は激しく事態はなかなか収まりません。

そして、その年の12月。鎮房の娘、鶴姫を長政の室とするという条件で双方に和議が結ばれます。

つまりは結婚の名をかりて、人質をとったわけですね。

この時、長政は二十歳。鶴姫は十三歳でした。

が!

その翌年の天正16年4月20日。

鶴姫の父、鎮房を中津城に招いた長政は酒宴の席でこれを斬殺してしまいます。

この時、鎮房は連れてきた家臣の多くを城下の城に留めおき、わずかな手回りだけを連れた無防備な状態でした。

鎮房を討ち取った黒田勢は、城下の城にいた城井の家臣団を殲滅すると、そのまま鎮房の居城であった城井谷城に攻め寄せて、留守を守っていた鎮房の父、長房をも討ち取ります。

この時、鎮房の嫡男・朝房は、肥後の国で起きた一揆鎮圧に出陣した長政の父、官兵衛に従って陣中にありましたが、そこで官兵衛の手によって暗殺されています。

わずか13歳で人質として敵方へと嫁ぎ、その年のうちに夫の裏切りにより、父と祖父、兄をも殺されてしまった鶴姫。

凄惨なる悲劇は、彼女自身の身にも降りかかります。

城内の騒動を知った鶴姫は侍女とともに中津城を脱出しようとしますが、黒田方に捕えられます。

そして、父、鎮房が謀殺されてから二日後の4月22日。

夫・長政の命により、鶴姫は十三人の侍女とともに広津の千本松河原で磔にかけられ処刑されました。

享年・14歳でした。

その翌年の天正17年。

長政は、父・官兵衛の隠居に伴い家督を相続。

黒田家の次代の当主となります。

この「中津城」のエピソードは、黒田官兵衛という人の生涯のなかで、唯一といっていいほど、異質な、血生臭いエピソードですね。

鶴姫との結婚に関しては創作という話もありますが…それでも彼女が人質として黒田家に預けられ、父や祖父を殺害された挙句、磔に処されたというのは事実みたいですし。

城井(宇都宮)鎮房役のキャストはすでに村井雄浩さんが発表されているので、このエピソード自体が取り上げられるのことは間違いないらしいのですが。

どんな風に描かれるのかな?

たぶん、官兵衛さんは何も悪くなかったんだけど、思い違いや行き違い、長政くんの若さゆえの暴走があってー…みたいな感じで、主役の手は汚さないように描くんだろうなー。