何気ない日常

いつものように車を走らせていた。

しばらく走行していると、前の車がブレーキを踏んだ。

そして私も、釣られるようにブレーキを踏む


渋滞に引っかかったようだ。


先頭車両は遥か彼方、今は最後尾にいる。


そして、後ろからどんどん車が押し寄せ

あっ、と言う間に自分の位置が分からなくなる。


「あっ~ あと何回信号をやり過ごすんだろ・・・」


憂鬱な気分が広がる。


渋滞で待っている間というのは、一人だと暇なもんだ。

周りの車を見てみると

身だしなみのチェックをしている人、同乗者の人と会話している人

何もせず、ただ前だけをじっと見つめている人

配達途中の人だろうか、伝票か何かに慌ただしくペンを走らせていた。

この時間、同じ場所で、人の行動は様々だった。


そして、私はフロントガラスの窓から空をみた。


晴天とは言えない天気、グレーに覆われた空間に

所どころ青い穴が、泉のように広がっていた。


最初は止まっている静止画が、ずっと見続けるうちに

少しずつ変化していく。

ゆっくりと、かすかに。


ずっと見ていなければ分からない速度で雲が流れてゆく


しばらく見ていて、ふと思った

「今、この流れる雲に気づいている人は、どのくらいいるのだろう?」


同じ時間、同じ場所、そして同じ空間にいる人達

みんな同じ状況なのに

見ている物はみんな違う

それぞれの違った現実


私は流れる雲を見ていた、ただそれだけだ。





私はこれから何を見て行くのだろう。




何も知らない




きっと何も知らないのは、幸せな事なのかもしれない・・・。



ただそう思った。