チベット人と初めて出会ったのは、むかし本むら庵という手打ち蕎麦屋のニューヨーク支店オープンでやって来たころ。たまたま何人か雇ったのがチベット人でした。

その時はチベットといってもそこがどういう国なのか、まだよく知りませんでした。

ただ、見かけも日本人に近く温厚篤実、真面目、勤勉な彼らとはすぐに仲の良いチームになりました。

また、性格だけでなく日本の食べ物もまったく抵抗なく、賄いのご飯をいつも美味しいと言って食べてくれました。


おまけに数字の数え方が

「チー、ニー、スン、シー、ガー」

ですよ。


これを知ったとき日本人のルーツは絶対にチベットだと思いました。




そして、ある日のこと。

賄いの時間に久々の納豆も用意して皆で食べ始めました。

いくら彼らが日本人みたいだからといってまさか納豆には手をつけないだろうと思っていた矢先、一人がスプーンで取り始めたので、

「それ食べるの? 止めた方がいいよ、すごく癖があるから」

と言ったら、


「ノープロブレム!これ知ってるよ、チベット人も食べるんだ」


と嬉しそうに答えます。


「え!?」


こちらの方がビックリ。

どこまで日本人なんだこの人たちは。。。



納豆話で盛り上がった数日後、彼らが話していた噂の「ナットー・スープ」を作ってくれることになりました。

作り方は、

牛肉を細かく切ったのと生姜を油で炒めて、タマネギ、ほうれん草のような青菜を加えてさっと火を通します。

水をヒタヒタにして納豆をそのまま入れ、ターメリックと塩コショウで味を調えて出来上がり。

とてもシンプル。

ターメリックと納豆の微妙なバランスが何ともいいコンビの不思議なスープです。

こんな風に納豆を料理したものは初めてなので興味津々食べてみることに。




その後、このスープは大の好物になりました。



そして、

また作ってとお願いするたびに、鍋一杯のナットー・スープを休憩時間を割いて用意してくれたものです。