ひとりで、ふらっと立ち寄った飲食店の話を描く、「リアル孤独のグルメ」シリーズの第15回目です。これまでの記事は、こちら
***************************************
かれこれ30年近く昔のことだが、この店には来たことがある。
そんな街の老舗の洋食屋さんに、ひさしぶりに入ってみた。
まだ娘たちも生まれていないころだった。離婚した元奥さんといっしょに、「なんか、ここおいしそうな感じの店だよね」と意見が一致して入った「洋食 パル」。
結婚したばかりのころだったような記憶がある。
その日に食べたのはビーフシチュー。ランチではなかったので、そんなメニューも注文できた。‟本格的”という言葉を使いたくなるような、おいしいビーフシチューだった記憶が残っている。
あのころの楽しい時間までよみがえる。いつまでも、ふたりいっしょにという思いにあふれていた夫婦関係だった。しかし、すれ違いはいつのまにか膨らんでいった。お互いに浮気のような出来事はまったくない。でも、元奥さんのほうは、「自分の人生を生きたい」と実家に戻った。
今考えると、極端なパパっこだった娘たちなので、奥さんに対するわたしの配慮も足りなかった。「あたしは何のために、この家にいるの」という言葉を言わせてしまったのは、わたしの大きな過失だろう。
今回はランチで11時40分ころ店に入った。そういえば、こんな店だったよなと微かな記憶がよみがえる。あのころふたりで座った席が店の中央にそのままあった。わたしは元奥さんが座った席に腰をおろした。
注文したいランチは、店頭のメニューを見たときから決まっていた。ハンバーグステーキイタリアンだ(900円)。夫婦で切り盛りしているのだろうか、厨房には70代くらいのシェフが動いていて、接客はやはり同じような年代の奥様らしき女性だった。
「ハンバーグステーキでお願いします」と言うと、「コーヒーはホットですか?アイスですか?」と聞かれた。コーヒーまでつくのかとうれしくなって、「じゃあ、ホットで」とお願いした。
おしぼりは熱々で、このお店のぬくもりのように感じた。そして、ナイフ、フォークではなく、割りばしというのがまたいい。
10分ほど待ってランチが到着。
もうもうと水蒸気が立ち昇るおいしそうなプレート。
ごはんに味噌汁、そしてたくあん付き。さらに驚いたのが冷ややっこまで出て来た。
最後に出て来た、この冷ややっこでランチセットが完結。
ハンバーグ自慢のお店だが、もうちょっと厚みが欲しいのと味のほうはいたって普通。でももちろん、とろけたチーズと相まって確実においしいハンバーグだ。味噌汁はわかめ、タマネギ、油揚げが具で、これも家庭の味の味噌汁。ごはんは茶碗2杯分くらいはあった。そして、洋食に冷ややっこという斬新な組み合わせも楽しめた。
もちろん完食したが、食べ終えて水を飲んでいると、すかさずコーヒーが出てきた。
濃い目のこのコーヒーがまたおいしい。このコーヒーでランチセットが見事なまでに完結したという印象だ。ランチの味噌汁にしても、冷ややっこにしても家庭で昼ごはんを食べている雰囲気で、これでごはんが皿ではなく茶碗に入っていたら、なおさら家庭的雰囲気が強調されるかもしれない。
コーヒーをじっくり味わって、全身が安心感に包まれた。
ひとつ気になっているメニューがあった。それは、「パルオリジナル チキンカツオムライス」、これはネーミングだけでおいしそうだ。次回来たときに注文するメニューがもう決まった。
***************************************
AmazonのKindleストアで短編集を販売しています。
夏夫’s ショートストーリー(あなたの知らない不思議な世界)
夏夫の写真は、以下のリンクからご覧になれます。
メルカリで、きれいな写真を販売中
夏夫’s Photo
Instagramは、こちら(アート系中心です) @fumipapa0729
マルチアーティストCozy(井村浩司)の作品をBASEで販売しています