Amebloさんに昔こんな記事を書いたよと教えてもらったので、複製記事です。

 

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あらためて思い出してみると、かれこれ50年以上前になるようだ。半世紀という言葉に言い換えると、なんだか、はるか遠い昔話のような気がしてくる。 

あれはまだ私が小学生の頃だった。はたして小学何年生だったのか、そこまで正確な記憶はない。でも、近所に住む幼なじみとワイワイ遊んでいた時期だったので、小学校低学年だったのだろう。

現代の子供たちの遊びと言えば、インドア系の遊びが多いのかもしれないが、わたしの幼いころは昭和真っただ中。ほぼ外遊びが中心だった。 

「ねぇ、今日は何して遊ぶの?」遊び友達が私に聞く。
「よし、カエルとかフナを採りに行こう!」
「秘密基地をみんなで作るぞ!」
「あの森に行って探検だ!」
「土手で段ボールに乗って滑ろうよ!」 

陽の光を浴びて、風の匂いを感じながら、いつも泥だらけになって走り回っていたあの頃。かけがえのないあの頃。そんな遊びに明け暮れていた、とある日だった。 

当時は夕方になると、あちこちの家から「ほら、もう帰っておいで!」、「ごはんできたよ~!」、「早く帰らないと人さらいに連れてかれるよ~」とか、それぞれの家族が子供たちを呼ぶ声が路地にあふれていたものだ。

その日も、もう帰るか、と思っていた矢先、一番親しかった幼なじみのお母さんが、その家の前の路上でみんなを呼び止めた。 

「おいしいのがあるから、みんなこれで手をふいて」とぬれタオルを差し出してくれた。当然のことながら、みんな遊びに夢中で顔も手も服も泥だらけ。まず手をきれいにできるタオルを用意してくれていたのだ。 

「はい、みんなきれいになったかい、じゃ、これ、揚げたてのコロッケ買ってきたから、みんなで食べなさい」とアツアツ、ホクホクの揚げたてコロッケを一つずつ渡してくれた。 

「ほら、ソースもあるからかけて」と家の前の道で立ったままソースをかけて友達といっしょにほおばった。
「うわぁ~うまい!おいしいね!」みんなで歓声をあげる。 

特別に高級なコロッケじゃない。昭和の時代に普通の肉屋で売っているごくありきたりのコロッケ。でも、あの日のコロッケは、自分にとって忘れることの出来ない特別なコロッケとなった。 

みんなお腹を空かせていたので、いわゆる「空腹は最高の調味料」だったのかもしれないが、あのときほおばった、あの日のコロッケに勝る味わいのコロッケは、50年以上たった今でも味わったことがない。

あの日の夕暮れの空気感、友達の笑顔と歓声、そして、コロッケのおいしさ。

それは、決して忘れられない宝物。 

実はそのおばさんも先日、他界されてしまった。そして、あの時の仲間の中にも若くしてこの世を去った者もいる。でも、いつか、あちらの世界でも“あの日のコロッケ”をもう一度みんなで食べたいと思う。 

あの日のように、あの日のコロッケを。

 

 

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