倫子が戻ってくる前に、案内所を抜け出せたくぅみぃは、生き生きしていた。
「あー、やれやれ。凪沙さん、何だか強引に連れ出したみたいでごめんなさいね。でも多分、何かお役に立てますから」
凪沙は、にっこり微笑んで答えた、
「くぅみぃさんは、苦手な上司の方と、あの案内所で働いてらっしゃるのですね」
くぅみぃは、照れくさそうな顔をした。
「全部お見通しですね。お見苦しいところを見せてしまって」
「いえいえ、どこでもある事ですよ。所でくぅみぃさんも地元の人じゃないですよね?」
「はい。毎日仕事がきつくて、どこか南の島に行きたいなぁ、と思っていたら、ここの求人があったんです。飛びついて来たら、人間関係に問題あり、という、よくある話でした。前と変わらなかったです」
渚は笑って頷いた。
「くぅみぃさんなら、明るいからなんとかできるかもしれませんよ。その上司の人ともうまくやっていけるようになるかも」
くぅみぃは、口をひん曲げて答えた。
「そんな事、ないです、ないです。あの人、人を見下していじめて辞めさせるのが快感になってしまってますからね。私を辞めさせるまで悪口を言い続けますよ」
くぅみぃは、凪沙の方をしっかりと振り向いた。
「だからってね、こんなつまらない事で負けたくないんですよ。辞めるにしたって、あのババァに負けた、と思わせてから辞めてやりますよ」
うん、うん、と凪沙は黙って頷いている。
くぅみぃは、商店街の入り口の駐車場まで凪沙と歩いた。
「ここまでレンタカーで来られました?」
「いえ、バスで・・・」
「泊まるホテルは決まってるんですよね?」
「はい、大丈夫です・・・」
くぅみぃは車のキーをジャラジャラと鳴らした。
「なんか古い車に乗って頂きますが、済みませんね。ちゃんと動きますので」
凪沙は、鍵の音を聞きながら、また微笑んだ。
「所で、凪沙さん、何を探しに来られたんでしたっけ? 資料館でよかったのかな?」