新卒で入った会社を辞めて、コンビニでバイトをしていた。

社会のレールから大きく脱線した気分だった。転職サイトの書き込みを毎日のように見ていた。元弊社の悪口を見つけて自分を慰めたかったからだ。

営業職三十代年収五〇六万退職済み『仕事に対して給料が見合っていない』

技術職二十代年収三二〇万退職済み『将来性がないので退職』

窓際社員三十代年収四五〇万退職済み『年功序列な上に役職につくまでは人権がない』

 自分を肯定する材料は探せばいくらでも見つかった。そりゃ退職するよなと退職理由を見ながら呟く。給料も高いわけじゃないし辞めて正解だったなと胸を撫でおろす。しかし、今の自分はどうだろうか。高いわけじゃない給料すら稼げる見込みが立たない。立てようがない。ファミチキを揚げながら毎日自己嫌悪に襲われた。

 とりあえず、仕事を探すことにした。

 

職業安定所では事務職だと聞かされていた。

求人票を持って説明&面接を受ける。まず、待遇について話をされた。

「給料は日当で計算するのが決まりだから月ごとに変動があるのは承知しておいてね。あと土日祝は休みだから。正月もそこそこ休みがあるよ」

次に業務内容について説明を受けた。

「うちは客商売だから大変だと思うけど、まぁ、やる気があればどうにかなるよ。それに君若いし」

大雑把すぎたのでもう一度説明をお願いした。

「色々事業やってて一言では説明できないな。不安はあるだろうけど最初のうちは先輩について貰うから安心してね」

 これ以上聞いても納得できる答えを得られる気がしない。

「説明は以上だけど、どう?やる?」

 何をさせられるのか見当もつかない。おそらく事務職ではない。わだかまるものがあったが聞いても釈然としないは明白だった。唯一好感が持てるのはコンビニのバイトより給料がいいことだった。それ以外は点数のつけようがない。

ここで働くか、コンビニを続けるか。

ファミチキを揚げてレジをポチポチする仕事は楽だったが飽きていた。一度レールを外れた人生だから失敗のしようもなかった。薬物の売買でも死体を缶に詰める仕事でも出し子でもなんでもよかった。王道な勝負を諦めていたから仕事なんでもよくね?と考えると刹那的な感興が沸き起こった。

とりあえず、その場で契約書にサインした。

 

僕は今、ラジオ体操で飯を食っている。

午前と午後の一日二回、公民館に高齢者を集めて一緒に体操をする。

利用料として利用者から三百円ずつ集金をする。

仕事の内容はそれだけ。

 とりあえず、想像していた仕事と違った。