まだしばらくこの本の雰囲気にひたっていたい
そんな本
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かはたれ (福音館創作童話シリーズ)
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この本に出てくる河童「八寸」は、昔話に出てくるような怪しくて悪戯好きな河童とは少し違う。
まだ子供の美しい河童だ。
兄弟の河童たちが人間に見られるという騒動を起こし、両親と兄弟たちが姿を消して以来、一人ぼっちで暮らしてきた。
散在が池の長老の言いつけで猫に化け、拾ってくれた小学生の麻の家で見たハーメルンの笛吹男の絵に自分を重ねる、淋しくて、繊細で可愛い河童なのだった。
一方の麻は、半年前に母を亡くし、父と飼い犬のチェスタトンと暮らしている。河童猫の八寸を拾ったのをきっかけに、自分の目でみたもの、感じたものが本当なのかに自信を持てなくなる。
そんなとき、麻は生前の母と書いていた一冊のノートを取り出す。そのノートに母が書いてくれた「耳に聞こえる音楽は美しい、でも耳に聞こえない音楽はもっと美しい」。ノートには麻が探した耳に聞こえない音楽が書きとめてある。でも、それすらも、母が一緒に「美しい」と言ってくれたから確かに美しいと思えたのか。
麻は時々、学校で声が出せなくなっていく。
あらすじを書いていると、少し重い感じなのだけれど、憎めない無邪気な八寸と、それを見守る麻とチェスタトンの関係にくすっと笑ってしまう。
でも、後半は涙なしでは読めなかった。
子供のころの生きづらさを感じていた自分と、母になった自分の心が両方震えた。
お父さんの手紙でまた涙。
誰かが正面から自分と向き合ってくれるということ、そしてそれに気づくということの大事さ。
いろいろ考えさせられるところはあったのだけれど、今はこの物語の美しさに酔っていたい。そんな本でした。
