1975年(もう半世紀も前ですね)にオリンパス光学工業(現在はカメラ事業はOMデジタルソリューションズ社に譲渡)が発売した銀塩自動露出一眼レフレックスカメラ「OM-2」についての記事を投稿します。このカメラは小型で高性能な一眼レフカメラとして一世を風靡した「OM-1」の姉妹機であるAE機(Automatic Exposure自動露出)として発表されました。

※本家の解説ページです。しかし画像は原型機ではなくNEWタイプのものになっています。

 

当時このカメラは「TTLダイレクト測光を導入した驚くべき高機能なAEカメラ」として「OM-1」を漸く入手した層には憧れのカメラでした。このカメラについては原型機とNEW機はあまり区別されずにネット上の記事が載っていることが多いように思います。1975年に発表された原型機と1979年に発表された改良型のNEWタイプの区別について、手元の両機種の個体や当時のカタログを用いて記させていただこうと思います。

 

当時の先行していたAE一眼レフカメラでは、TTL露出計の計測値をいったん記憶しミラーを跳ね上げたあとでその数値を用いて実際の露出制御を行うというプロセスを踏んでいたが、これは旭光学の特許であり他社もパテント料を払っていたものと思われます。
オリンパスはこれを避けるためではないか・・・と思われるが「TTLダイレクト測光」をOM-2では採用しました。こちらはミラーが跳ね上がってからミラーボックス内でフィルム面の反射光を測光することで事前の計測値の記憶を不要とする方式でした。もっとも後年、この方式はミノルタカメラの特許であったことが判明しています。

 

また、専用のスピードライト(エレクトロニックフラッシュ)を装着すると、TTLでオートストロボの発光を制御できる機能が設けられ、文字通り世界初の機能でした。

 

左側が原型機、右側がNEWタイプ(以下同じ)

上面から見ると

・アクセサリーシューの接点が 2個 => 3個 に増えている

・巻き上げレバーの指あてが 角型 => 滑らか に変わっている

モード切替レバーを拡大すると、原型機では 「CHECK」 となっているポジションが NEWでは「CHECK・RESET」になっている

軍艦部前面の巻き戻し解除ノブの形状が丸みを帯びたものに変更されている

このカメラは、シャッター速度1秒~1000分の1秒が電子制御、バルブ「B」のみ機械制御になっているため、誤って「B」にしてしまって自動露出が効かなくなるのを防ぐために『LOCK』ボタンがついていますが、NEWでは「LOCK」という表記が追加されています。

裏蓋を開けると下のNEWでは、右下にデータバックとの直結接点が設けられて金色に光っています。

<両機種カタログから引用>

OM-2のTTLダイレクト測光では、測光はシャッターが作動中に行われる。60分の1秒以下の低速シャッターでは先幕が走行し終わった後に後幕の走行がスタートするのでシャッターが全開しフィルム面全体が同時に露光するタイミングがある。そのため必ず「平均測光(画面全体を均等に測光)」になります。
一方、125分の1秒以上の高速シャッターでは、シャッター幕が全開になるタイミングは無く、シャッター先幕に白と黒の乱数パターンを印刷しておき、それを測光する仕様になっています。理屈ではフィルムの乳剤に似た「グレー」で均一に塗っておけば良いとも思われますが、安定的に一定の濃度のグレーを塗ることが難しかった様です。
上記画像はそれぞれのカタログの該当箇所の抜粋で左側が原型機、右側がNEWです。原型機では中央に寄った部分に白いパターンが多く配置されているため高速シャッターの場合には中央重点測光に近似したものとなり、一方、NEWでは先幕上に均等に白と黒のパターンが配されているため平均測光に近い状態であったと推測されます。

なぜ変更したのかは不明ながら、NEWの方が低速シャッター時と高速シャッター時で測光のパターンが変わらないのでそのようになさったのかもしれません。原型機は「凝りすぎ」だったのかもしれません。

 

<NEW機カタログから引用>

原型機ではファインダー内にはスピードライト(ここでは『オートストロボ』)については何も表示する機能が付いていなかったが、NEWでは「充電完了」と「発行適正」が赤色LEDで表示されるように機能が追加されました。

<NEW機カタログから引用>

また、OM-2は大型の露出補正ダイヤルが設けられているのが原型機の時からの特徴でしたが、NEWでは(+)(-)の補正操作中にがファインダー内に舌状の『露出補正中マーク』が表示されるように機能が追加されました。

<原型機カタログから引用>

原型機では電源RESETはシャッターダイヤルを「B」にすることで対応していたが、NEWでは上記の通り、モード切替レバーで「CHECK・RESET」と機能を兼ねさせることで対応するように変わりました。

 

カメラ本体の差異は以上の通りですが、次にスピードライト(オリンパスでは「エレクトロニックフラッシュ」と言う)関連の差異を記載します。

左側 原型機+アクセサリーシュー2  NEW機+アクセサリーシュー4

右側 原型機+アクセサリーシュー3  NEW機+アクセサリーシュー4

原型機は アクセサリーシュー2を装着すると「クイックオート310」

       アクセサリーシュー3を装着すると「エレクトロニックフラッシュT32」

を取り付けることができました。

一方、NEW機は、アクセサリーシュー4を必ず使用し、組み合わせることができる

エレクトロニックフラッシュは「エレクトロニックフラッシュT32」のみでした。

アクセサリーシューを外したところ。信号接点の数が異なるためファインダーアイピースの
直ぐ上の絶縁されている箇所の大きさが異なっています。またこの写真では分かりにくいがNEWモデルではアイピースの直ぐ上に『SHOE4』と刻印が入っています。

 

左側が原型機用の「クイックオート310」、右側がNEW用の「エレクトロニックフラッシュT32」です。ただしアクセサリーシュー3を装着すると原型機でも「エレクトロニックフラッシュT32」を使用できました。

「クイックオート310」では【外光センサーAUTO】用の受光窓は「OLYMPUS」ロゴのすぐ左に四角い窓を明けて設けられています。一方、「エレクトロニックフラッシュT32」では「OLYMPUS」の『O』の文字の中央に穴が開いていてそこに設けられており、窓が目立たない様になっています。

「クイックオート310」は中央の回転ダイヤルを回して【マニュアル発光】・【外光センサーAUTO】・【TTL-AUTO】を切り替えました。

一方、「エレクトロニックフラッシュT32」では、左側の(計算尺モード)で【マニュアル発光】・【外光センサーAUTO】を操作し、右側の(閉じたモード)で【TTL-AUTO】に切り替えました。

しかし、現在の多機能スピードライトを知っている時点での感想としてはいずれも操作しやすいとは言い難く、素直に切り替えSWを並べた方が使いやすいような気がします。

 

アクセサリーシュー2、3、4の比較。 誤って装着しないように 原型機用の2と3 NEW用の4 ではネジの回転方向が逆になっています。 2と3は信号ピンが1本、 4は信号ピンが2本あります。 

ちなみにOM-1の原型機用のアクセサリーシュー1 もあり、スピードライトのTTLオート機能が不要ならばOM-2原型機にも装着できました。またNEW OM-1にはアクセサリーシュー4 を装着したましが、TTLオートの機能はありません。

 

【OM-2に関する想い出】


僚機OM-1は貧乏な学生がようやっと入手できる機種でした。当時は旭光学のSPシリーズと並んで学生の所有率が高かったカメラだったと思います。OMシリーズのためにオリンパスは多彩なカメラシステムを用意したましが、それはカタログの上で眺める「夢」であって、実際は殆どの方はOM-1ボディに50mm標準レンズと135mm望遠+28mm広角を揃えるのがやっとだったのではないかと思います。そういった状況の中でこの記事でとり上げたOM-2はOM-1の機能を包摂しながらTTLダイレクト測光もできる夢のような上級機でした。


私の手元にあるOM-2原型機は、東京の中野にあった中古カメラ店『日東商事』(現在はネット通販専業になられて宇都宮に移転なさっている)で中古品を何台か比較して購入したものです。まだオリンパスが修理を受けてくれていた時期でしたのでオーバーホールをしていただいた個体。バッテリーとしてLR44を装填して出したら『このカメラはSR44を装填しないと正常に動作しません』という注意書きが付されて戻ってきました。LR44だと直ぐに消耗して電圧が低下し、所定の性能を維持できない様です。同じ時期の同規格の電池を使う他社のカメラはいずれもLR44でも動作するのですが、これはOM-2の最大の弱点でしょう。

貴金属である銀が高騰して酸化銀電池であるSR44が高くて買いづらくなってしまい、代品としてアルカリ電池で同サイズに造ったLR44が登場して普及しましたが、OM-2はついて行けなかったということのようです。最も下位機種のOM-10はLR44に対応してましたし、僚機OM-1も水銀電池が環境問題で製造中止になると有償ですがLR44を使えるように純正改造をしてくれました。

一方、NEW OM-2機は、同じく中野の『Fカメラ』ジャンク館でジャンク箱から拾いだしたもの。2千円ぐらいだったと記憶しています。ジャンクなので動作しないものと思っていたら、帰宅後電池を入れたらシャッターが切れたのでびっくりしました。殆ど正規の中古品としてのニーズが無いので動作してもジャンクとして扱っていたようです。


OM-1は「持病」であるプリズムの腐食が高い頻度で発生していますが、OM-2ではあまり見かけない様な気がします。上級機なのでプリズムの固定方法を変えていたのでしょうか?