今日は仕事が早く終わったので、自宅もより駅から徒歩2分ほどの場所にある将棋道場に行ってきた。
将棋は初心者で詰め将棋と囲いの勉強中で、実践も経験することで、勝負勘も養われるだろうと思い、前から行ってみようと思っていた将棋道場に向かった。
しかしながら、入るのに非常に勇気が必要だった。というのも、将棋道場や碁会所というものは総じておじさんの楽園であり、私のような若輩者はなめられてしまうのではないかという、恐怖感に似たものが自分の頭の中を支配していたからだ。
二階建て雑居ビルの2階に道場はあり、道路を挟んで反対側が商店街であるため、立ち止まって2階の窓越しに中の様子をうかがってみた。中には数人(おそらく4、5人)いる感じで、2階に通じる階段の前のドアのとなりに初心者歓迎と看板に出ていたため、腹を決めた。
ドアを開け階段を上るとそこにはまたドアがあり、なぜかドアがほんの少し、光が漏れる程度開いていた。そこから中をのぞいてみた。おっちゃんが10人くらいいるではないか。野太い笑い声とパチンパチンと将棋駒が盤上を進んでいる心地いい音色がドアの隙間から漏れていた。
私の頭の中は、ライオンに狙われるトムソンガゼルのようになった。が、ここで引き下がってはいけないという気持ちはまだ残っていたため、階段を一段も後退することはなかった。何よりも、将棋を他人と打ちたいという気持ちが恐怖感に打ち勝ったのである。ここで後退したらもう来れないと自分を奮い立たせ、中に入った。
階段の狭さとは打って変わって、広い空間がそこにはあった。長机が所狭しと整然と並んでいて、一つの長机につき二つの盤が置いてある。右の方には席主と思われる貫禄が半端ではないラーメン大勝軒の、あの店主を思わせる太ったご老人がソファーに座っていた。その老人と私は目が合った。ほかのプレイヤーは私を一瞥すると、すぐにそのまま盤上に目を落とした。
席主に話しかける。
「こんばんは。突然すみません。私は初心者なのですが、入り口に初心者歓迎とあったのでお邪魔させていただきました。こちらは初心者教室のようなことはされているのでしょうか。」
「ああ、そういうのは子供だけ。お兄さんくらいの人なら私が教えますよ。ただ、今日はあと1時間半で店が閉まるから、ちょっと打ってみましょう。お代は要りません。」
なんと!眼光するどく、戦国武将のような悠々とした佇まいだった老人からは丁寧な応えが返ってきた。やはり、出来る人間というのはそういうものなのだろう。物腰柔らかく、相手を油断させておいて、後ろを見せたとたん斬りつけるに違いない。
早速席主にすすめられるまま、将棋盤を挟んで席主と対峙した。駒の並べ方は予習済みだ。私は大橋流という並べ方を試みた。ここでまた驚いた。席主は適当な順番で並べている。しかも駒をじゃらじゃらやったりひょいっとこっちに投げてきたりしている。人当たりが良い羽生善治先生の著書『これからはじめる人の将棋』を読んで勉強していたため、すごく知的な、丁寧なものを想像していたため、そのギャップに驚いた。
「お願いします。」
お互いが一礼して始める。私が教わる立場、そして初心者のため、何より弱いため、先手となった。
ここでは将棋の内容は控えるが、席主と3回戦って、当然3回詰まされたわけだが、2回はストレート負け。3回目は席主のアドバイスを受けた後の戦いであったため、何回か席主が私が一手一手指す時々に「うん、うん」と頷いて私の受けを確認しているようだった。3回目は席主が私のレベルを試したのだろう。手数が前の2回よりも増えた。
「ありがとうございました。」
どんなに年齢が離れていても実力が違っても、お互い一礼して終える。
「また来なさい。今度はもう少し早くね。そうしたら教えられるから。」
うれしい言葉もいただいて、道場を後にした。
席主は今回私の態度などを見てどう思っただろう。3回指した将棋のこと等を考えながら帰った。
1時間くらいの滞在であったけれど、色々と勉強になった1時間だった。
突然の訪問に快く応じてくれた席主に感謝と同時に、まずい手ばかりだったらどうしよう、「うんうん」という頷きは、どういう意味だったんだろう等ポジティブネガティブシンキングが頭を振り子のように行ったり来たりしたが、また近々、道場に行こうという気持ちだけは一歩一歩街路を進むたびに強くなっていった。
将棋は初心者で詰め将棋と囲いの勉強中で、実践も経験することで、勝負勘も養われるだろうと思い、前から行ってみようと思っていた将棋道場に向かった。
しかしながら、入るのに非常に勇気が必要だった。というのも、将棋道場や碁会所というものは総じておじさんの楽園であり、私のような若輩者はなめられてしまうのではないかという、恐怖感に似たものが自分の頭の中を支配していたからだ。
二階建て雑居ビルの2階に道場はあり、道路を挟んで反対側が商店街であるため、立ち止まって2階の窓越しに中の様子をうかがってみた。中には数人(おそらく4、5人)いる感じで、2階に通じる階段の前のドアのとなりに初心者歓迎と看板に出ていたため、腹を決めた。
ドアを開け階段を上るとそこにはまたドアがあり、なぜかドアがほんの少し、光が漏れる程度開いていた。そこから中をのぞいてみた。おっちゃんが10人くらいいるではないか。野太い笑い声とパチンパチンと将棋駒が盤上を進んでいる心地いい音色がドアの隙間から漏れていた。
私の頭の中は、ライオンに狙われるトムソンガゼルのようになった。が、ここで引き下がってはいけないという気持ちはまだ残っていたため、階段を一段も後退することはなかった。何よりも、将棋を他人と打ちたいという気持ちが恐怖感に打ち勝ったのである。ここで後退したらもう来れないと自分を奮い立たせ、中に入った。
階段の狭さとは打って変わって、広い空間がそこにはあった。長机が所狭しと整然と並んでいて、一つの長机につき二つの盤が置いてある。右の方には席主と思われる貫禄が半端ではないラーメン大勝軒の、あの店主を思わせる太ったご老人がソファーに座っていた。その老人と私は目が合った。ほかのプレイヤーは私を一瞥すると、すぐにそのまま盤上に目を落とした。
席主に話しかける。
「こんばんは。突然すみません。私は初心者なのですが、入り口に初心者歓迎とあったのでお邪魔させていただきました。こちらは初心者教室のようなことはされているのでしょうか。」
「ああ、そういうのは子供だけ。お兄さんくらいの人なら私が教えますよ。ただ、今日はあと1時間半で店が閉まるから、ちょっと打ってみましょう。お代は要りません。」
なんと!眼光するどく、戦国武将のような悠々とした佇まいだった老人からは丁寧な応えが返ってきた。やはり、出来る人間というのはそういうものなのだろう。物腰柔らかく、相手を油断させておいて、後ろを見せたとたん斬りつけるに違いない。
早速席主にすすめられるまま、将棋盤を挟んで席主と対峙した。駒の並べ方は予習済みだ。私は大橋流という並べ方を試みた。ここでまた驚いた。席主は適当な順番で並べている。しかも駒をじゃらじゃらやったりひょいっとこっちに投げてきたりしている。人当たりが良い羽生善治先生の著書『これからはじめる人の将棋』を読んで勉強していたため、すごく知的な、丁寧なものを想像していたため、そのギャップに驚いた。
「お願いします。」
お互いが一礼して始める。私が教わる立場、そして初心者のため、何より弱いため、先手となった。
ここでは将棋の内容は控えるが、席主と3回戦って、当然3回詰まされたわけだが、2回はストレート負け。3回目は席主のアドバイスを受けた後の戦いであったため、何回か席主が私が一手一手指す時々に「うん、うん」と頷いて私の受けを確認しているようだった。3回目は席主が私のレベルを試したのだろう。手数が前の2回よりも増えた。
「ありがとうございました。」
どんなに年齢が離れていても実力が違っても、お互い一礼して終える。
「また来なさい。今度はもう少し早くね。そうしたら教えられるから。」
うれしい言葉もいただいて、道場を後にした。
席主は今回私の態度などを見てどう思っただろう。3回指した将棋のこと等を考えながら帰った。
1時間くらいの滞在であったけれど、色々と勉強になった1時間だった。
突然の訪問に快く応じてくれた席主に感謝と同時に、まずい手ばかりだったらどうしよう、「うんうん」という頷きは、どういう意味だったんだろう等ポジティブネガティブシンキングが頭を振り子のように行ったり来たりしたが、また近々、道場に行こうという気持ちだけは一歩一歩街路を進むたびに強くなっていった。