第5回 持ちやすい/片手で操作しやすいスマートフォンは?――23機種を採点

ITmedia Mobile8月30日(金)18時16分

第5回 持ちやすい/片手で操作しやすいスマートフォンは?――23機種を採点

au端末。左から「HTC J One HTL22」「Xperia UL SOL22」「AQUOS PHONE SERIE SHL22」「URBANO L01」

最新スマートフォン徹底比較(2013年夏モデル編):
 スペックからは分かりにくいが、スマートフォンを毎日使う上で重視したいのが「持ちやすさ」だ。本体があまりに角張ったデザインだと、手に違和感を覚えることも多い。また最近は5インチ以上のディスプレイを搭載するスマートフォンが増えているが、片手で操作しやすいかどうかも重要だ。そこで今回は、スマートフォンの丸さ、細さ、薄さ、軽さ、片手での操作性を採点した。持ちやすさには個人差があり、手の大きさにもよるので、1つの意見として参考してもらえればと思う。ちなみに、筆者がスマホを操作する左手のサイズは、中指の先端から手のひら最下部までが約180ミリ、親指の付け根から手のひら右端までが約90ミリだ。

【表:持ちやすさの採点表、他の画像】

●本体の“丸さ”は触らないと分からない

 本体の丸さは、裏側の側面と、左右下の角がどれだけ削がれているかを重視した。側面がカーブを描いていても、角が削がれていないと、手に当たって気になってしまう(逆もしかり)。丸さはソフトバンク端末が全体的に高い評価になった。ドコモ端末も「Disney Mobile on docomo F-07E」「ELUGA P P-03E」「GALAXY S4 SC-04E」「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」「Xperia A SO-04E」は十分な丸さがあると感じた。

 細さ、薄さ、軽さの体感はスペック通りという印象。幅59ミリで最も細い「AQUOS PHONE si SH-07E」は、片手で操作しやすくて快適だ。今回の機種では最薄(厚さ8ミリ)のGALAXY S4は、実際に夏モデル全機種を触れると、その薄さは一歩抜きん出ていると感じた。「DIGNO R 202K」は軽い……というか軽すぎると言いたくなるほど。94グラムの世界最軽量記録は、今後更新されないかもしれない。

 片手での操作性は、「Optimus it L-05E」、AQUOS PHONE si、DIGNO R、AQUOS PHONE ss/esなどの小型端末が有利になるが、今回は片手操作に配慮したハードウェアとソフトウェアも含めて評価した。詳細は後述するが、ELUGA Pは4.7インチディスプレイを搭載しながら、UI(ユーザーインタフェース)の面で、片手で操作しやすくするための工夫が光っている。今では珍しい3つの物理キーをディスプレイ下に搭載している「URBANO L01」も評価できる。

●ベスト・オブ・持ちやすいスマホは?

 あくまで筆者の独断だが、全体的に“持ちやすい”モデルを見ていきたい。GALAXY S4は片手での操作性はもう一歩だが、丸いボディと薄さを両立させた点で満足度は高い(丸みを帯びさせると、どうしてもサイズアップにつながってしまうので)。「らくらくスマートフォン2(F-08E)」は筆者の評価はすべて◎か○で、バランスが取れている。同じコンセプトの「シンプルスマホ 204SH」は厚さ12ミリなのに対し、らくらくスマートフォン2は厚さ9.9ミリと薄いことも評価したい。ELUGA Pも十分な丸さと、小さすぎず大きすぎない4.7インチ、片手操作に配慮したUIで満足できる。「MEDIAS X N-06E」も、薄さと持ちやすさが高い次元でまとまっている。

 このように持ちやすいモデルは多いが、ベスト・オブ・持ちやすいスマホは、薄さ以外すべて◎のDIGNO Rとしたい。軽さのインパクトはもちろん、ボディも丸くなるようしっかり処理されている。また小型モデルは厚くなりだが、厚さも10.4ミリとまずまず。手の優しさや負担の少なさという面からは、非常にクオリティの高い1台に仕上がっている。

 auは今夏モデルで数を絞ったためか、「小型」に分類されるスマートフォンがなく、4機種ともどちらかといえば大きくてゴツイ。幅65ミリのURBANOはまずまずだが、ほか3機種の幅は69~71ミリ。4機種とも重さは140~157ミリで、いずれも軽量とは言い難い。今後は小型・軽量モデルの登場にも期待したい。

●もはや珍しくなりつつある物理キー

 今回の補足(その1)として、ディスプレイ下のキーについてもチェックした。初期のAndroidスマートフォンは、ディスプレイ下に戻る/ホーム/メニューといった3~4つの物理キーを搭載したモデルが多かったが、画面下部にオンスクリーンキーの搭載が可能になったAndroid 4.0以降は、物理キーを採用したモデルが減りつつある。今回はXperia、ARROWS、MEDIAS、AQUOS PHONE ss/Xx/esなどがオンスクリーンキーを採用している。

 凹凸のある物理キーはどうしてもデザイン上のノイズになってしまい、薄型化・小型化の観点からもオンスクリーンキーの方が都合がいい。一方で、オンスクリーンキーは画面下部を占有するため、表示領域が狭くなるというデメリットがある(写真や動画など、オンスクリーンキーを非表示にできる場合もあるが)。

 今回取り上げている23機種の中で、ディスプレイ下に3つの物理キーを搭載しているのはURBANOのみ。今や物理キーを搭載するスマートフォンは珍しい存在になりつつある。ELUGA PやGALAXY S4は、ホームボタンのみ物理キーで、その左右にある戻る/メニューキーはセンサーキーとなっている。ホームボタンが物理キーである最大のメリットは、片手で簡単にスリープ状態から復帰できること。電源キーでも同様の操作はできるが、上端部に電源キーがあると片手では押しにくい。

 ちなみに、今回の機種ではGALAXY S4のみ、戻るキーが右側にある。オンスクリーンキーや後述するセンサーキーを含め、最近は戻るキーは左側にある機種がほとんどなので、違和感を覚えるかもしれない。

 AQUOS PHONE ss/esは、オンスクリーンキーを採用しているが、ディスプレイ右下にある「クイック起動キー」を短押しか長押をすると、事前に割り当てた機能を呼び出せる。このクイック起動キーはホームボタンとしても活用できて便利だ。MEDIAS Xもオンスクリーンキーを使うが、ディスプレイ下にスリープオン/オフ用のキーを搭載しているのがユニークで、片手操作のしやすさに貢献している。

 第三の勢力(?)として注目したいのが、センサーキーを搭載したモデル。センサーキーならフラットに見せることと、オンスクリーンキーで画面の一部を占有しないことを両立できる。今回、センサーキーを採用しているのはAQUOS PHONE ZETA/si/SERIE、「Ascend D2 HW-03E」、Optimus it、「HTC J One HTL22」。ただしスリープ状態の復帰には電源キーを使う必要があるので、本体が大きくて電源キーが上にある「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」「AQUOS PHONE SERIE SHL22」、HTC J Oneは少々不便だ。また、HTC J OneはHTCロゴを中央に配した関係で、HTC J butterflyなどにはあった、マルチタスクキーがなくなっている。「最近起動したアプリ」一覧を呼び出すにはホームキーを2回連打する必要があるほか、butterflyで採用されていた、マルチタスクキーをメニューキーとして使える設定も廃止されており、操作性を損なっているように感じる。

 らくらくスマートフォン2はホームボタン、シンプルスマホは電話、ホーム、メールを物理キーとして用意している。らくらくスマートフォン2はホームボタンのみだが、「電話」と「メール」はホーム画面の先頭に表示するよう工夫している。2機種とも電源キーは側面にあり押しやすい。またらくらくスマートフォン2のみカメラキーを側面に用意している。ホーム画面は2機種とも縦スクロール型だ。

●片手操作に配慮したUIとは?

 補足(その2)は片手操作しやすいUIについて。DIGNO RやAQUOS PHONE ssなどの小型端末なら、そのままでも片手で操作しやすいが、5インチ前後のディスプレイを搭載したモデルは、片手では操作しにくい。そこで注目したいのが、ソフトウェアでの工夫だ。

 1ページ目で述べたとおり、片手操作に配慮したUIを採用しているのはELUGA Pだ。片手だと画面上部に指が届きにくくなるが、画面最下部から上方向にスワイプすると、画面上部が下にスライドする「ワンハンドPLUS」のお陰で操作しやすくなる。同様の機能として、ARROWS NX/Aも「スライドディスプレイ」を用意している。ARROWS NX/Aは5.2インチ/5インチとディスプレイが特に大きいので、うれしい機能だ。

 ELUGA Pはほかに、「フィット」系のUIが片手に優しい。「フィットホーム」ではアプリトレイが画面下半分にのみ表示され、片手でアイコンをタップしやすい。あまりカタログなどでは大きくうたわれてはいないが、(フィットホームの)ホーム画面上のどの部分から下にスワイプしても通知バーを起動できるのもうれしい(真ん中や下部をスワイプしてもOK)。「フィットロック」では画面に触れた場所にロック解除やアプリ起動のショートカットが表れ、どの場所からでもロックを解除できて便利だ。「フィットキー」ではキーボードのサイズを自由に変更できる。

 ELUGA P以外でも、片手で快適に文字を入力できるよう、キーボードを左右に寄せたり、サイズを自由に変更したりできる機種は増えている。ARROWS NX/A/F-07E、MEDIAS W/X、Xperia A/ULは、文字入力画面からそのままキーボードの幅と高さを指で自由に調節できる。GALAXY S4、AQUOS PHONE、Optimus itはキーボードを左右に寄せることはできるが、自由に調節したり、高さを変更したりはできない。また、文字入力画面から直接キーサイズの変更はできず、変更するには「設定」→「言語と入力」にアクセスする必要があるのも少々不便。

 今回の23機種の中で、日本語入力システムに唯一「FSKAREN」を採用しているAscend D2は、文字入力画面のサブメニューからキーサイズを指で自由に変更できるが、なぜか高さしか変えられない。横幅も変えられるようアップデートしてほしい。

[田中聡,ITmedia]