広がる便利なスマホのワイヤレス充電、先行ドコモに強敵出現?早くも競争激化の予感

Business Journal7月12日(金)3時49分

スマートフォンブームのなかでも、ガラケーからスマートフォンに買い換えたくないという人は存在する。そんなガラケーユーザーがスマートフォンに買い換えたくない理由の1つが、バッテリが持たないことだという。最近では大容量バッテリやシャープのIGZOのような省電力の液晶ディスプレイの搭載などによって、駆動時間の問題は改善されつつあるが、それでもまだまだガラケーの比ではない。

 不意の充電切れに備えてモバイルバッテリや充電用ケーブルを携帯しているスマートフォンユーザーも少なくないだろう。

●ケーブル接続を不要にするワイヤレス充電

 そんなバッテリ問題の1つのブレークスルーになりそうなのがワイヤレス充電技術だ。現在、ユーザーはスマートフォンを充電するには通常、パソコンとUSBケーブルで接続したり、ACアダプタ+USBケーブルで充電している。これに対して、ワイヤレス充電では充電パッド(充電装置)の上にスマートフォンを置いておくだけで充電してくれる。

 ワイヤレス充電は、ケーブルを接続する必要がないということが大きなメリットであり、家や会社で充電する場合はもちろん、ワイヤレス充電のインフラが整備されれば格段に利便性が向上する。

 つまり、対応するワイヤレス充電装置がある場所なら、ちょっとカフェで打ち合わせをしたり、食事をしたりしながらも、充電用ケーブルなどがなくても手軽に充電できるわけで、モバイルバッテリを持ち運ぶ人も減ることだろう。

●先行するワイヤレス充電技術「Qi」

 スマートフォンで利用できる世界初のワイヤレス充電技術であり、世界的に普及が始まっている規格が「Qi(チー)」だ。現在、このQiを「おくだけ充電」という名称で呼んで、普及を進めているのがNTTドコモであり、現在の新機種ではQi対応機種が増えている。たとえば、2013年夏モデルではLG電子の「Optimus it L-05E」、パナソニックの「ELUGA P P-03E」、シャープの「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」などがある。

 そして、日本でもQiの充電インフラの普及が徐々に始まっており、「ナチュラルローソン」の一部店舗のイートインコーナー、カフェ「プロント」の一部店舗、カラオケチェーン「ビッグエコー」の一部、マッサージチェーン「てもみん」の一部店舗などに設置されているが、正直まだまだこれからというところだろう。

●WiPowerの持つアドバンテージとは?

 そんな状況のなか、クアルコムが「WiPower」という新しいワイヤレス充電の規格を開発し、製品化が近い。このWiPowerはQiとは異なる磁界共鳴方式を採用しており、ほぼ接していないと充電できないQiに対して、4センチ程度離れていても充電できるという特性を持っている。また、Qiが一度に1つのデバイスしか充電できないのに対して、複数のデバイスを同時に充電できる。このような利点を生かして、材質にもよるが、テーブルの裏などにWiPowerの充電装置を取り付ければ、簡単にワイヤレス充電テーブルを作ることが可能だ。

 クアルコムは世界のスマートフォンが搭載するCPUの大部分を製造している有名な会社だが、このWiPowerデバイスはクアルコムだけが製品を作るのではなく、「A4WP」という団体によって普及を進め、技術をライセンス契約などで提供していくという。

 ワイヤレス充電技術としてはQiが先行しているわけだが、その利便性からインフラの普及次第ではWiPowerがそれを抜く可能性もありそうだ。インフラ以前に、WiPower搭載のスマートフォンが普及するのかといった声が聞こえてきそうだが、A4WPはサムスンも参加しているので、世界的に大きなシェアを持つGALAXYシリーズなどが対応していくとすれば、それもあまり問題ではないだろう。

 このように、遠くない未来には、ワイヤレス充電規格の戦いが見られるかもしれない。何にしても、スマートフォンをケーブルによる充電という呪縛から救ってくれるワイヤレス充電技術は要注目だ。