夜の街と聞いて思い出すのは、これまでの上司達です。

スナック好きな人。

フィリピンパブ好きな人。

キャバクラ好きな人。

風俗好きな人。

色んな人達がいました。

色んなエピソードがありました。

中でも忘れられないエピソードは、ガラケー真っ二つ事件です。

当時の上司は、キャバクラ好きな人で、毎週末、私と先輩は、上司に連れられてキャバクラに行っていました。

その上司は、相当に入れあげていて、奥さんに黙って、キャバ嬢専用携帯を持っていました。

いつもは仕事用のカバンに入れ、家に帰る前には電源を切り、バレないようにしていました。かつ、自分が酔って切り忘れることがないよう、キャバクラに付き合う私と先輩に、帰る前には電源を確認させる徹底ぶりでした。

ですが、事件の当日は、上司は同伴出勤して、次の休みにはデートの約束も取り付け、それに浮かれてべろんべろんに酔ってました。

それに付き合っていた私と先輩も酔い加減は似たようなもので、上司を家に送り届けた際に、携帯電話の電源が切られていないことに気づいていませんでした。

上司の奥様に、私達が上司を連れ回して酔わせたという形で謝り、預けて帰ろうとした時、その携帯電話がメールの着信音を立てました。上司の上着の胸ポケットの中で。

それまで、明け方近くにも関わらず、にこやかに応対してくれていた奥様の表情が固まった瞬間、一気に酔いが醒めました。

私と先輩が取り繕う暇もなく、サッと上司の上着の胸ポケットから携帯電話を取り出した奥様は、二つ折りのそのガラケーを開くと、メールを開きました。

「今日も来てくれてありがとう❤
    今度のデート、楽しみにしてます❤」

そんな感じに書かれていたメールを上司と私達に見せつけた後、にこやかな表情のまま、奥様は両手でガラケーを真っ二つにしました。

完全に酔いが醒めた私と先輩に帰ることを促した奥様は、折ったガラケーを玄関に投げ捨てると、上司を引っ立てて家の奥へと行きました。

私達二人は、その姿に恐怖に震えながら、そそくさと帰途に着きました。

女性から感じた、あれほどの恐怖は、後にも先にも無いです。


上司は、奥様に実家に帰られ、半年くらい謝り通して許してもらっていました。

それでも懲りずに、さっさと新しい携帯電話を買い、今度はそれを先輩に預ける方法を取って、キャバクラ通いはやめませんでしたが。

この手の人達は、こんなことがあっても止まらない、止められない。

パトロールして、注意喚起したところで、馬耳東風、馬の耳に念仏。

正直、こればかりはどうしようもないんじゃないかなあ、、、