阪急電車/有川 浩
¥1,470
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出版社 / 著者からの内容紹介
恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車……関西のローカル線を舞台に繰り広げられる、片道わずか15分の胸キュン物語。大ベストセ ラー『図書館戦争』シリーズの著者による傑作の連作集。

ど、どうなんだろう。このお話は。面白かったと言い切っていいのだろうか…。

さっきアマゾンを覗いてみましたらば殆どの方が星五つをつけていらっしゃる。え・えーって。ひっくり返りそうになりました。

いや、面白くなかったわけじゃないんです。ですけどね。。なんていうか。道徳的というか。見方が色々偏りすぎてるというか。らぶらぶなシーンもベタ甘すぎて。個人的にはダメ~~でした。

残念。

有川さんは、恋愛そのものをテーマに取り上げたものより、戦闘系(或いは別のテーマ)プラス付属として恋愛、っていう話を書かれたほうがいいのではないかなあと。いや、ひとり言です。すみません。


 

鼓笛隊の襲来/三崎亜記
¥1,470
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わたし三崎さんのお話を読むのは今回が初めてだとばかり思っていたのですが、二冊目、ですね。以前に「バスジャック」を読んでました。ごめんなさい。「バスジャック」殆ど内容を覚えていません。

今回のこのお話は短編集でした。面白かったです!

全部で九つのお話が入ってましたが、表題作の「鼓笛隊の襲来」と「突起型選択装置」が特によかったです。ちゃんと内容、頭に刻み込まれております。大丈夫です。なんていうか、二作とも軽い衝撃を覚えるような作品でした。こういう発想、なかなかないですよね~~。

人間の心の僅かな隙間に不思議が入りこんでくる、みたいな作品たちばかりです。よかったです。


   


図書準備室/田中 慎弥
¥1,470
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初・田中慎弥さんです。

同じ山口県に住むもの同士。ということで手に取りました。

工業高校出身で、一度も働くことのないまま小説を書いていらっしゃる方です。母親とふたり暮らし。何でここまでこの作者のことを知ってるかというと、芥川賞に二度ノミネートされたということで、地元のテレビ番組や新聞で一時期騒がれましたから。

表題作の「図書準備室」はこれはもしや作者が主人公? というような内容のものでした。読み初めはかなり良かったです。引き込まれました。が、後半どうにも面白くない。で、もうひとつの「冷たい水の羊」も読んでみたんですが、同じ、でした。後半、面白くなくなってしまうんですね。

そして暗かった…。

「冷たい水の羊」はどうなんだろう。最後光明が射したのか。そういう話なのか。そうだったらいいなと、思いましたが、主人公の暗さが全てを台無しにしてしまいそうで怖いです…。


 


5年3組リョウタ組/石田 衣良
¥1,680
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出版社 / 著者からの内容紹介
中道良太25歳。涙もろくて純情で、でも根っから「いまどき」の男子でもある若き小学校教師が地方都市の名門公立小学校を舞台に縦横無尽の大活躍!!

新聞連載ということで、普段の石田さんの作品より少し良質な気がしました。軽すぎないというか。

ただ話の内容が健やかすぎてちょっと物足りなかったかなあ。

最後の章なんか子供の一途過ぎるあまりクラスメイトを極限まで追い詰めるある種悪い面をかなり現実的に書かれてるなあと感心したのに、その対処法があまりにも楽観的過ぎて、えー、こんなもん? とちょっと拍子抜けしてしまいました。

でもリョウタ先生はかなりいまどきの人間で、でも自分の周りにこういう先生って見たことないなあと。未だ、教師ーって感じのひとばっかだなあと。思いました。あれって外向け用の仮面なのかなあ…。


 ★ 

ダイイング・アイ/東野 圭吾
¥1,680
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出版社 / 著者からの内容紹介
誰もが少しずつ嘘をつき、
誰かを陥れようとしている。

記憶を一部喪失した雨村慎介は、自分が交通事故を起こした過去を知らされる。
なぜ、そんな重要なことを忘れてしまったのだろう。
事故の状況を調べる慎介だが、以前の自分が何を考えて行動していたのか、思い出せない。
しかも、関係者が徐々に怪しい動きを見せ始める……。

俺をみつめるマネキンの眼。
そいつは、確かに生きていた。

相変わらず上手、ですね。

ぐいぐい引き込まれるように読みました。

ただ何か残るものがあるかといえば、あまり…。

死にいくものと目を合わせてしまうというのは確かに怖いだろうと思います。ましてや加害者ともなれば。

その怖さを案外さらりと書いています。

残るものがなかったのは、おそらく主人公に共感できなかったから。善人ではないですからね、この主人公。

それにしても成美さん。どこにいっちゃったんでしょう。江島さんがあの調子では一生見つからないかも。人間、欲をかいてはいけませんというお話でした(だったんでしょうか??)。


  

乳と卵/川上 未映子
¥1,200
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出版社 / 著者からの内容紹介
娘の緑子を連れて豊胸手術のために大阪から上京してきた姉の巻子を迎えるわたし。その三日間に痛快に展開される身体と言葉の交錯

まあ、なんと読みにくい文章だろうと、最初は思ったのですが、慣れてくるとそうでもなくなるのか、読み終わるころにはすっかりはまってました。

内容は案外単純なものです。母と子の葛藤を、母の姉からの目線で書いてありました。豊胸手術をする為に上京した母。反して初潮も迎えていない反抗期の娘。母の手術を迎えるまでの悶々とした遣り取り。

こういう話、嫌いではありません。娘の緑子ちゃんは可愛いです。いいコだと思います。母の気持ち(胸をおっきくしたいという気持ち)は、わたしにはよくわからないままでしたが。

起承転結のはっきりとした読みやすいお話でした。

文章は独特でしたけど。


  

静かな爆弾/吉田 修一
¥1,365
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いまはバラエティ番組にまわされてしまったテレビ局の制作スタッフが主人公。バラエティを任されていながらそれでは満足できず、自分では副業だと言いながら、海外での爆破事件の真相を追っています。(あれ? バラエティの仕事をしてる場面ありましたっけ? 冒頭部分に少しだけあったかな…。)

その主人公が公園で出会ったのが響子という聴覚に障害を持つ女性。この女性との出会いのシーン、静まり返った音のない世界、このシーンがかなり好きでした。あと、耳が聞こえない彼女を遠くから眺め怖いと感じるシーンも。

言葉は必要だけれど、そこに嘘は必ずあるし、嘘を隠そうとしても隠しきれなかったり。厄介なものだなと思いました。

吉田修一さんの書く男性は自分勝手な行動を起こすひとが多くて。いや、現実もそういうひとが多いし、自分勝手だから優しくないわけじゃないんですけど、この主人公もご多分にもれず…。それが原因で途中響子さんとぐしゃぐしゃっとなります。だけどその後の主人公の必死さには胸を打たれました。ラストもいいです。うまくいくといいね~~と、思いながら読み終えました。

個人的には吉田さんの書く世界、かなり好きですね。


   



フラミンゴの家/伊藤 たかみ
¥1,400
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うーん。良くもなく悪くもなく。といったところでしょうか?

離婚した元妻がガンの手術をすることとなり、その間だけという話で娘を預かることになった父親のお話です。父親目線と娘目線の両方の語りで進みます。

それなりに面白かったのですが、何か足りなかった。あっという間に父娘は仲直りするし、父親の現在の恋人と娘もすぐ打解けちゃう。そんな簡単なものでしょうか? 何となく児童文学を読んでいる感じがしましたね。主人公の正人にもっと大きな災難がふりかかってもよかったかも、と思っちゃいましたが…。鬼、ですかね?(笑)


  

ゴールデンスランバー/伊坂 幸太郎
¥1,680
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内容紹介
俺はどうなってしまった? 一体何が起こっている? 首相暗殺の濡れ衣を着せられた男は、国家的陰謀から逃げ切れるのか? 二年ぶり千枚の書き下ろし大作。

すっごーく面白かったです。

伊坂さんらしいお話。たっぷりと堪能させていただきました。

どこもかしこも繋がってて、ほんのちょっとした他愛のない話でさえ、伏線だったりします。

少し前に読んだ伊坂さんの短編集が、全くといっていいほど面白くなかったので、大丈夫かなあこのひと、なんていらぬ心配をしてたんですが。全く杞憂でございました。

内容は首相暗殺の濡れ衣を着せられ警察の追っ手から逃げる男の話です。

ベースにはケネディ大統領の話しがあります。首相暗殺犯として逮捕され、一般市民に銃で撃たれた男オズワルド。オズワルドになりたくないと思う青柳君が、とにかく警察に捕まりたくない、無実を証明できないまま撃ち殺されたくないと戦います。

読んでる途中は清々しかったのですが。最後はどうなんでしょう。あれでよかったのでしょうか。背後には結局何があったのでしょうか。そのあたりはわからないままです。ただ、青柳君が首相暗殺犯としてもう何ヶ月も前から用意周到に仕立て上げられていたということ。その手の込んだ遣り口。……怖いです。

お薦め度◎!


   ★ 




空中庭園/角田 光代
¥1,680
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面白かったです。

これは直木賞をとるより以前の作品になりますね。

京橋家のお話です。六編の短編が入ってますが、それぞれ六人の視点から京橋家というものがどういう存在であるのかを書いています。

面白いのは、誰も皆、家族のことをある種軽んじていて、バカだ愚かだのうたりんだなどと言っていますが、それぞれの立場に立って見ると、みんなそれなりにあれこれ悩んでいるということ。

それにしても家族が何を胸に抱え生きているかなんて。わかんないもんですねえ。怖いような気もしましたが、自分のことを思ってみれば、そんなもんかもと納得できるところもありました。

最後のお話だけ、書き下ろしになっています。

京橋家の息子コウ視点。

この短編の最後の部分によってかなり救われた気分になります。よかった。

それにしても角田さん。この頃よりいまの作品のほうがもっと輝いてる気がします。

それでもこのお話もとても面白かった。

角田さん、やっぱりすごい、です。


  ★