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「それまで」の俺

「なんか、おもろいことないんかなあ」

今日も、いい年をした大学生が、暇を持て余している。

別段、バイトや、サークルに熱中しているわけではなく漫然と過ごしている。

そのくせ、腹のうちでは、自分の熱中できる何かを探しまわっている。


樫山 直樹 22歳。


よくある話で、受動的に興味を持つタイプなのかもしれない。

自分は動かないが、自分の持つ興味の対象は動いている。

だから、いつかは強烈な興味に出会うことができるのでは。

そして、その興味は、今日出会うのかもしれないではないか。


直樹は、大学の芝生の木陰で、ベンチにもたれかかりながら、

友人の彰人に聞いてみた。


「お前、自分から動けや。いっつも俺には、はよ彼女作れとか

 えらそうな口きくくせに、自分はいったいなんやねん。

 ほら、あそこの女、ええやんけ声かけてこいや!」


「・・・いや、ええわ。そういうんじゃないねんな。
 なんか、こう、初めて恋愛をした高校生のような、

 情熱的でわかりやすい恋がええねん。」

「一つ言ってええか。」


「なんやねん、言えや。」


「お前さあ、彼女おるやん。」


「おるで。彼女のことは、すきやし、

 よく気付いてくれるし、ある意味理想的な彼女なんかもしれんけど。

 なんか、ちゃうねん。俺は、燃えたいんや。」


「あほらし、付き合ってられへんわ。

 あ、今日アメ村のDayでイベントするらしいけど、

 どうすん?お前も来るやろ?」


「イベントなあ、恋愛できんの、それ。」


「はいはい、くんねんな、ほな、八時に、TSUTAYAな」


「あいよ。」


大学三回生の夏、刺激を求めて、夜の街を歩く若者。

直樹には、その場限りの関係がどうも理解できなかった。

自分の裸体をさらけ出すに足る人間が、その場限りであっていいのであろうか。

そんな、保守的な考え方が、直樹の脳裏をかすめていくのである。

そのたびに、直樹の運命の女性へのあこがれは、強くなった。

自分が、すべてをさらけ出し、相手も自分のすべてをさらけ出す、

そんな関係を求めている。


友人に話せば、「SEXしたらええやん。」の一言が返ってくる。

直樹自身、その言葉のとおり、一晩の関係を楽しもうとした。

しかし、結果は彼の予想を大きく下回ってしまう。


「ただの運動。」


直樹が、射精した瞬間に、小さく脳内で叫んだ言葉である。

運動とは、内向的な営みである。

自分の中の筋肉に自分で刺激を与え、

精神を自分の肉体に統一させながら、

外界と接触する営み。


それは、sexではなかった。


彼は、sexとは、相手との結合であると信じていた。

肉体を超越して、パートナーとの精神の結合が、

肉体に快楽をもたらすものであると考えていた。


しかし、彼は、まだその境地に足を踏み入れたことはなかった。


彼は、そのユートピアを探し求め、この世をさまよっているのである。


実は、彼には一度、運命と呼ぶことのできる出会いを持っていた。

それは、高校生の時に3年間ずっとつきあっていた、梨香だ。


彼女がいたから、いまの直樹があるといっても過言ではなかった。

梨香の、幻影を打ち消すために、真実の愛を探しているといっても、

いいのかもしれない。

それほど、梨香は直樹に深く刺さっていた。


梨香との出会いは、