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電卓セレクション

「シャープ」電卓の情報を載せていきます。

 

経理仕様の電卓「EL-N36」です。
2020年現在、生産終了のモデルになります。発売は、2009年1月。
後継モデルは現行の「EL-N942」になります。
 

 

手のひらより少し大きい程度のナイスサイズの電卓です。
キーを素早く操作して計算をするためには、このサイズ以上の大きさが必要になります。
一見して仕事用の電卓であるのがわかるデザインです。

 

 

経理仕様電卓といいますが、何をもって経理仕様というのかははっきりしていません。
シャープでは実務電卓のカテゴリーに「経理・事務仕様」電卓という項目があり、そこに分類される電卓になります。
一般的な計算の他に以下のような機能がついています。
・小数部桁数指定
・アディングモード
・四捨五入・切上・切捨
・グランドトータル
・時間計算・日数計算
また、12桁であることは必須です。

要するに、ビジネス計算機能が充実している高級モデルがこのラインのモデルになっています。

 

 

キーは、典型的なシャープ配列です。
このキーは、部分的に2色成型キーになっていて、すり減ってもキーの文字が消えません。
写真ではわかりずらいのですが、数字とカンマの12個のキー、赤いクリア(C)キーの合わせて13個のキーが2色成型です。

頻度の高いキーということだと思いますが、そういうことだと「+」キーが含まれていないのが不思議です。「+」キーは大きさが他のキーより大きくて区別がつくので文字が消えてしまっても問題はないのですが。

 

 

この電卓の特徴の一つが、ラバーのクッションが周囲に配置されていることです。
液晶表示部の周りとその下の部分の2つに分かれて、ぐるっと黒のラバーが巻かれています。

 

 

このラバーは、電卓を手に持って使うときに滑らないでしっかりとホールドできるようにする為のものです。
シャープ電卓では一時期このようなラバー電卓シリーズがあり、この電卓もその1機種になります。
しかし、他のラバー電卓は明らかにラバーが付いていますという出っ張ったデザインなのに対し、この電卓は、キー部分を下側に細くするデザインにして、その横にラバー部分を出っ張らせずに配置することで洗練されたデザインになっています。

ラバーが付いていることのもう一つの利点が、電卓を落としたときに壊れづらいということがあります。
このサイズの電卓は、社内会議や外出でパソコンやノートなどと一緒に持ち運ぶことも多いのですが、他の物と比べサイズが小さいこともあり、結構落してしまうことが多いです。
その時に、間違いなく角が当たりますが、ラバーがクッションになるので安心です。

 

 

そして、裏側にはしっかりと4箇所に滑り止め用のゴムが付いています。
机の上に置いて使うことが多いので、これは非常に重要です。
下側の滑り止めゴムは、細い溝がいくつも横に入っているので、使ってみると特に縦方向に滑りずらいです。

 

 

角度調整は液晶がフラット固定タイプなので、デスクスタンド方式で1段階です。

 

 

スタンドを立てるとこれ位の角度が付きます。
色々とこの電卓について紹介してきましたが、私が一番いいと思うのがこのデスクスタンド方式であるということです。
液晶の角度をつけて見やすくする方法としては、
①デスクスタンド方式
②最初から角度をつける
③チルトディスプレイ(液晶部分が動く)
の3つがあるのですが、②はカバンなどに入れて持ち運ぶときに液晶部が邪魔になりますし、③は便利なのですが、耐久性が劣ります。

フラットボディで持ち運びがしやすく、ラバーでより壊れずらいというのはこの電卓しかありません。
後継の現行モデルは、液晶表示は大型で見やすいのですが、最初から角度がついたタイプで、本体サイズも大きめになってしまっているため、このモデルがいいという人も多いです。
私も大事に使っていこうと思っています。

 

1964年6月発売

 ● 初号機

 電卓の話をする上で、このモデルを最初に紹介しないわけにはいきません。
 1964年発売、世界初のオールトランジスタ電卓がCS-10Aです。

 

 

 世界初の電卓としては、イギリスのサムロックコンプトメーター社のアニタマーク8が有名ですが、CS-10Aの特筆すべき点は部品が半導体素子だったということです(アニタマーク8は放電管)。トランジスタから始まる半導体素子の革新ともに電卓が進化していったことを考えると、とても重要な製品であったことがわかります。


 同時期、同様な電卓を他社(キヤノン、ソニー、大井電気)も開発していたことはよく知られていますが、その中でシャープが世界初になったことは偶然ではないと思っています。「真似されるものをつくれ」という社風を持つシャープが、一番に発売することに最もこだわっていたことがその理由なのではないでしょうか。

 ● 電卓(電子式卓上計算機)

 当時のカタログを見ると、「シャープ電子式卓上計算機<コンペット>CS-10A」とあります。そのころ、まだ「電卓」という名称は決まっておらず、メーカーごとに呼び名はばらばらでしたが、この電子式卓上計算機(略して電卓)が一般的になっていきました。

 

 

 ちなみに、<コンペット>というブランド名は、「コンピュータ」と「ペット」をあわせたものとのこと。このコンペットというブランド名は、卓上タイプの電卓にCSという型番とともに今でも使われ続けています。


 この、電子式卓上計算機のセールスポイントとしてカタログに記載されているのが、「演算素子からカム・ギアが消えた!」という一文です。カム・ギアで構成されている機械式計算機は、故障が起きやすい、騒音がひどい、スピードに限界があるという記載がされています。


 これを見ると、CS-10Aの発売時に、ターゲットにしていたのは歯車の機械式計算機を使用していたユーザーということになりますが、実はこのときリレーを使用した電気式計算機というものが存在していました。国内で機械式が普及し出したのは終戦後(1945年以降)で、国産初のリレー式計算機が1957年に発売になっているので、CS-10Aが発売された1964年まで結構年数があります。安いものではないので、この時代まで機械式が結構生き残っていたのだと思います。

 

 ● フルキーボード方式

 CS-10Aの大きな特徴の1つが、フルキー式のキーボードです。各桁に1から9までの数字ボタンがあるこの配列は、1900年前後の歯車式機械計算機から見られる方式です。

 

 

 このフルキー式の利点は、入力した数字がキーが押し込まれた状態になるので目で確認できること。そして、入力された数字を保持する機能をキースイッチが行ってくれるので数字記憶用に使用するトランジスタの数を減らすことができたという話もあります。


 そのキーの数も10桁それぞれに10の数字があるので100個必要なところを、キーを一つも押していない時を"0"にすることで90個に減らしています。

 ● 20桁表示

 この電卓の表示は20桁もありとても珍しいです。今の電卓で一番多い物でも14桁、経理仕様のものは12桁が標準です。
 この20桁表示には理由があります。入力キーで紹介したとおりこの電卓の入力は10桁で、10桁×10桁の計算をすると最大20桁の値になるため20桁の表示を用意したということになります。

 今の電卓はどうなっているかというと、12桁電卓ならば12桁の入力ができ、表示も12桁です。計算結果が表示しきれない値の場合はオーバーフローとなって、表示できる範囲の上位値だけ値が表示されてそれ以上計算ができなくなります。


 10桁入力で20桁表示というこの方式はシャープの電卓の中でもこのモデルだけです。20桁も表示装置を用意するのは非効率なのですが、計算した値をちゃんと全部表示しないといけないと考えたのではないかと思います。

 

 ● 定数ダイヤル

 この電卓の手前には11個のダイヤルがついています。これは、定数ダイヤルといい、計算でよく使う決まった数を予め設定して置くことができます。

 

 写真では、ダイヤルが取れてしまっているところもありますが、一番左のダイヤルが小数点の位置を設定するダイヤルで、残りの10個が数字を設定するダイヤルです。

 例えば、「12345」という数を設定する場合は、左から「0 0000012345」とします。
 また、円周率「3.14」を設定する場合は、左から「2 0000000314」とします。
 
 計算で、定数ダイヤルの値を使う場合はどうするかというと、「DE」キーを押すことで使用できます。

 

 

 ● 最後に
 
 CS-10Aは、紹介してきたように同時期に開発されていた他社の電卓と比べると独自のものが多く見られる電卓だと思います。発売を競っていたCanon,SONY,大井電機の電卓はいずれもテンキー方式で、表示桁数も14桁程度ですし、先のアニタマーク8もフルキーなのは同じですが、表示数は少ないです。
 ある意味、いろいろ盛り込みすぎたところがあったのかと思いますが、独自の方式にこだわったところは大変好感が持てます。

 最後にスペック(規格)を書いておきます。カタログに記載されたままの内容です。
 どんな計算や何桁の計算ができるということは全く書いていないのが面白いです。

 ■ 規格

 電源:AC90~110V 50~60Hz
 消費電力:90W
 使用温度:最高45℃まで
 使用トランジスタ:530本
 使用ダイオード:2,300本
 クロック周波数:5KC
 外形寸法:高さ 250mm 横幅 420mm 奥行 440mm(いずれも最大寸法)
 重量:約25kg

 

 

ミニミニナイスサイズのデザイン電卓「EL-760R」です。
2020年現在、発売中のモデルになります。発売は、2017年6月。

手帳タイプよりも少しだけ大きいサイズのいわゆるカラー電卓になります。
この760という型番がついたモデルは、この760Rで3代目です。

 

一見して「かわいい」と思うデザインと色ですが、電卓では結構珍しい「ツートンカラー」と「丸キー」が採用されています。

まず「ツートンカラー」について見ていくと、電卓のちょうど真ん中で色を変えているのが珍しいです。2色を使った電卓というのは今までもありましたが、液晶表示の周り、キー周りの色を変えるといったものでした。これは最初にボディのパーツが決まっていて、パーツ毎に色を変えて2色にしたという作りですが、760Rのツートンカラーは最初にデザインありきで、そのためにパーツを設計するという凝った作りになっています。

 

 

分解してみると分かるのですが、上側のパーツと下側のパーツを別々に作り、ねじ止めをしてつないでいます。部品数も多くなりますし、強度などの問題もありそうなので普通ならこんなつくりにしないと思いますが、デザインを優先したのでしょう。

 

 

カラーバリエーションは5つあり、ホワイト系(W)が上:ベージュ,下:白、ブルー系(A)が上:青,下:紺、レッド系(R)が上:赤,下:紺、グリーン系(G)が上:緑,下:茶、ピンク系(P)が上:白,下:ピンクです。面白いのが、上の色をメイン色にしているのが3つと、下の色をメイン色にしているのが2つと分かれていることです。
個人的には、グリーン系とピンク系がアイス(ミント、ストロベリー)っぽくて好みです。

 

 

次に「丸キー」についてですが、「丸キー」の電卓はシャープの歴代の電卓でも数機種しか見当たりません。おそらく四角キーに比べ、丸キーの方が押しづらいのが理由だと思います。760Rもキーの押し心地は少し固めです。キーの大きさを大きくすれば押し心地は改善すると思われますが、それだとデザイン的に野暮ったくなってしまいますし、この手の電卓はたくさんの計算をする用途ではなく、ちょっとした計算をする使い方をするものなので、これで全く問題はありません。
キーの文字色もちょっと凝っていて、それぞれのボディカラーに合う読みやすい色になっています。ピンク系は上側と下側では文字色が違いますし、グリーン系は下の文字色が上のボディ色になっています。

 

横からボディを見ると傾斜しているのがわかります。液晶部分が傾斜しているモデルは多いですが、760Rはツートンを活かすためにボディ全体で傾斜を持たせています。そして、背面には滑り止めがないので手にもって使う分にはいいのですが、机に置いて使うと滑ってしまうのは欠点です。私は背面下側に滑り止めゴムを張り付けて使っています。

 

 

もう一つ、使っていて気が付いたちょっとした欠点があります。それは、液晶表示が角度によって見づらいことです。私の場合パソコンを真正面に置いてあるため、電卓は自分の右斜め前や左斜め前に置いて使うことが多いです。その時、他の電卓に比べて表示されていない数字の線が濃く見えてしまうのです。角度を浅くすると全部8表示になって見えます。液晶の偏光板のせいだかよくはわかりませんが、この点は改善してほしいと思います。

 

 

色々書きましたが、500円台の値段というのを考えると、とても良くできた電卓だと思います。デザインを手抜きせずにこの値段は驚異的です。
最後に、デザインに関して付け加えるとパッケージも面白いです。こういうデザインのパッケージは電卓では今まで見たことがありませんでした。
お手頃値段の電卓なので、気に入った色があれば気軽に使ってみると良いと思います。