これは私が実際に体験した、切ない恋の物語です・・。
第1章「出会い」
あれは中学校の初登校の日、私は隣の席の子と仲良くなった。
とても可愛い子で、話も良く合う。
名前は「鬼拳めろん」といった。
彼女はアンデスメロンから産まれ、
その後ライオンに育てられるという複雑な生い立ちの持ち主であった。
私は彼女を楽しませようと、自分が伊賀忍者の末裔であり、
食えるキノコと食えないキノコの見分け方を熟知しているという事実や、
子供の頃からシンセサイザーに触れ、
今ではエレキギターをまるで割り箸の様に上手く扱えるという話をした。
「ふぉっ!ふぉっ!ふぉっ!」
彼女の笑い声、笑顔はまるで天使の様だった。
正直、惚れていた。。
まだ出会ってから一日も経っていないのに、
こんなにも、こんなにも、お互いの事を信じられるなんて・・。
第2章「運命の悪戯」
私は言おうかどうか迷っていた。
「もし君が良ければ、世界で一番素敵なSE○をしよう」
だが、この事は結局いえず終いだった。
そして今日までそれを伝える事は出来なかった。
私はミスを犯してしまった。取り返しの付かないミスを。。
それは初登校から2日後の事であった。
英語の授業中、教師が「fuck the fucking fuckers!」を訳せと命じた。
これは直訳すると「くそったれなあの野郎をシカトぶっこいてやる!」というモノで、
私はその言葉の下劣さは直ぐに分かった。
だがしかし、その上で私は「あの野郎」という所に、
彼女の名前を入れて発表してしまったのだ。
彼女は信じられないという顔をしたが、
私はその時何故か満面の笑みを浮かべていたと思う。
本当に、どうしてそんな事をしてしまったのか分からない。
ただ一つ言えるのならば、運命の悪戯としか言いようが無い。。
第3章「狂い始めた、歯車」
それからである。
私が机を離れる度にこんな手紙が残される様になったのは・・。
「社畜、家畜、鬼畜、この銘刀のサビにしてくれようか byめろん♪」
私は心底震え上がった。
自分がそこまで彼女を怒らせたという事に気付き、涙した。
私は直ぐに彼女に心から謝ろうと思った。
しかし、それを彼女は受け容れてくれなかった。
「あたしが貴様を許す事など、この先70有余年あろう筈が無い!
貴様のよぬこ濱口似の顔なんて見たくないっ!去れ!去れいっ!」
そして、机には変わらず置手紙が残される。。
それを見る私に向けられる、クラスメートの嘲笑、冷笑の眼差し。。
私はあまりの非情さに耐えかね、その場から逃げ出してしまい、
やむなく転校する事になった。
初登校から3日後の事であった。
第4章「時の流れ」
それから5年程の時が経ち、あの凄惨な記憶も薄れ掛けていた頃、
高校生になった私に一枚の年賀状が送られて来た。
いや、それは送り付けられたといった方が良いかも知れない。
何しろ風呂上りにベランダで煙草を吸っていた私の足元に、
破魔矢に巻いた矢文形式で送られてきたのだから。
差出人は「山田めろん」であった。
モチロン、彼女からの手紙だ。
手紙には「私幸せになったから!貴様を許すことにした!」と、
真っ赤なサインペンで殴り書きにしてあり、写真が入っていた。
そこに写っていたのは彼女とその旦那に子供、顔だけの老婆。
・・・心霊写真である。
どう考えても彼女に住所を教えた記憶は無いのだが、
そんな事は少しも気にならない。
それより、時の流れが彼女を美しい女性に変えてくれた事に私は感謝した。
私は相も変わらず野暮な男だったが、
この恋で学んだ事が沢山ある。
それは、人を思いやる気持ち。。
人を愛すには、まず人から愛されないといけない事。
恋する時、私は何があってもその事は絶対に忘れてならないと思った。。