2025年12月8日、愛南町内泊の龍王神社で、毎年恒例の「龍王祭り(チャガドン祭)」が行われ、神事や餅投げでにぎわいました。
この祭りは、地域で古くから受け継がれてきた小さな伝統行事です。
龍王神社の「龍王」は、海の神様を指す呼び名で、地域によって信仰の形は少しずつ違いますが、愛南町周辺では特に 海の安全・豊漁・航海守護 を司る存在として大切にされてきました。
龍王神社が建つ「龍王の鼻」は、かつては海に突き出した小さな岩礁でしたが、現在は埋め立てによって道路が整備され、陸続きになっています。
岩礁だった頃には、11月8日の開催で、神主が船で渡って神事を執り行い、その後は若宮神社で相撲やお神楽が奉納されていたと伝えられています。
祭りの幟には「海津彦神社」と記されています。
「海津彦(海津見彦)」とは、1500年以上前から信仰されてきた海の神・ワタツミ(ワダツミ)のことです。
古い伝承では、ワタツミは牙と手足の生えたマッコウクジラのような姿をしていたとも言われています。
そういえば、私たちの世代には馴染み深い元ちとせさんの代表曲「ワダツミの木」に登場する“ワダツミ”も、この海神を指しているのですね。
もしかすると、この龍王神社の正式名称は「海津見彦神社龍王宮」である可能性もあります。
同名の神社は高知県をはじめ全国の海沿いに点在していますが、「海津見彦」「海津見」「綿津見」など表記が揺れ、実態ははっきりしない部分も多いようです。
その中でも、小さな社が鎮座しているこの龍王神社の形態は、非常に貴重なものと言えるでしょう。
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①【🐉 龍王とは何者なのか】
龍王は、海をつかさどる神格として日本各地で信仰されてきた存在です。
ただし「龍王」という名前そのものは、古代神話に直接登場するわけではなく、民間信仰の中で育まれた呼び名です。
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②【🐉 龍王のルーツは「ワタツミ(海神)」】
龍王信仰の根底には、古代から続く ワタツミ(海津見・綿津見)信仰があります。
- 『古事記』『日本書紀』に登場する海の神
- 海の底にある「綿津見宮」に住むとされる
- 海の安全・豊漁・航海守護を司る
- 古い伝承では、巨大な海獣(マッコウクジラのような姿)として語られることもある
このワタツミが、時代を経て「龍」「龍王」と結びつき、海辺の集落で祀られるようになりました。
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③【🐉 なぜ“龍”なのか】
日本では古くから、水を支配する存在=龍というイメージが強くあります。
- 雨を降らせる
- 川や海を守る
- 水害を鎮める
- 航海の安全を守る
こうした役割が、海の神・ワタツミと重なり、「海の龍=龍王」という姿で信仰されるようになりました。
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④【🐉 龍王宮・龍王社が海辺に多い理由】
日本の海沿いには「龍王宮」「龍王社」「海津見神社」など、名前の揺れを持つ小さな社が点在しています。
その多くが、
- 岬の突端
- 岩礁の上
- 船着き場のそば
- 漁港の入口
といった場所に建てられています。
これは、漁師が出港前に手を合わせるための祈りの場として発展したからです。
愛南町の龍王神社も、まさにこの典型で、かつては岩礁の上に祀られ、神主が船で渡って神事を行っていました。
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⑤【🐉 龍王信仰の特徴】
龍王信仰には、次のような特徴があります。
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🔹 1. 海と生活が密接な地域で発展
漁業が盛んな地域ほど、龍王宮が多く見られます。
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🔹 2. 小さな祠が多い
大きな社殿を持たず、岩の上や海辺に小さく祀られることが多い。
愛南町の龍王神社も、この「小さな海神信仰」の典型です。
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🔹 3. 祭りは素朴で地域密着
龍王祭り(チャガドン祭)のように、
餅投げや神事を中心とした、地域の人々が守り続ける行事が多い。
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⑥【🐉 龍王=海津見彦(海津彦)?】
龍王神社の幟に「海津彦神社」とあるように、龍王はしばしば 海津見彦(ワタツミ) と同一視されます。
- 海津見彦
- 海津見
- 綿津見
- 和多都美
- 龍王
これらは地域によって表記が揺れ、
どれも「海の神」を指すと考えられています。
愛南町の龍王神社も、正式には「海津見彦神社 龍王宮」 のような性格を持っていた可能性があります。


