昭和40年代、貞子は東京都内の私立大学の文学部卒業後、北陸の女子高校に
国語教師として赴任した。
貞子は近眼なので、メガネを掛けていた。赴任3年目で学級担任になって、
女子生徒一人ずつ個人面談をし始めた。その中に沙織がいた。
貞子「沙織さんは、部活が剣道なのね。」と言って健康診断表を見る。
「視力は0.08ですね。剣道ではメガネは外しているの?」
沙織「剣道用のメガネはあるけど、私はメガネを外しているわ」
貞子「それで、相手が見えますか?」
沙織「ぼやけてよく見えないけど、心の目があるから、空気を察して相手の
動きを感じるの。また、集中すると見えるような気がするわ」
貞子「そうなの?。私も目が悪いから大学で弓道部に入っていたの。
弓道は静のスポーツだし、メガネがないと的が見えないし、でも
弓を弾く時に、弦がメガネに当たって、何度もメガネが飛んだことが
あったわ。そう私の視力は0.06よ。5m視力検査表の3mくらい前に行かないと
一番上の0.1の記号の空いた位置が分からないわ」
沙織「わかる。私も0.1の記号が〇にしか見えないわ」
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M子 は短大卒業後、自動車販売会社に就職した。
自動車運転免許は、就職前に取得して自動車通勤していた。
自動車運転免許試験には視力検査があり、0.7以上が条件である。
M子は0.8だったので、裸眼でクリアできた。
会社では、パソコンでの業務が多く、近業から視力が減退していった。
自動車運転免許証の有効期限が近づいた或る日、M子は不安になって、
眼科クリニックで診察を受けた。視力は0.5だった。近視と診断された。
そのため、メガネ店でメガネを作った。
メガネをかけてメガネ店を出ると、風景が鮮明に見えた。
M子はこれにすごく感動した。
日常生活にはさほど不便を感じていなかったので、自動車運転時のみ
メガネを掛けてもよかったが、M子は普段からメガネをかけることにした。
温泉への入浴は、普段メガネをかけている方も、メガネを外すのが通例であるが、
中には、メガネをかけたまま浴槽に入る方もいる。
温泉旅館は客室から浴場までは、迷路のような廊下を通り、脱衣場へと続く。
そこまでの間の通路は、段差がある箇所が多く、近眼の女性にはメガネなしでは
不安である。
さらに浴場へは段差があることが多いため、メガネ外すのは足を踏み外す恐れ
がある。そのため、入浴もメガネをかけるのである。
浴場は湯気でメガネが曇るが暫く待てば曇りが取れる。
内湯から露天風呂へも段差があり、メガネをかけているとよい。
露天風呂からの眺望は爽快である。身も心も和む。
但し、サウナ風呂は熱気でメガネに悪影響を与えるので、入室前に外すとよい、
コロナ禍でマスクをする習慣が今も続いている。