
感情と心身の繋がり
第二話 背骨の構造、働き、部位ごとの感情の関係1
1.解剖学的根拠◆◆
背骨(脊柱)は、約33個の椎骨が連なってできており、首からお尻まで伸びています。
★構造:各椎骨の間には椎間板というクッションがあり、衝撃を吸収します。椎骨の中央には脊柱管というトンネルがあり、その中を脊髄が通っています。
◆働き:
★身体の支持:体を支え、直立姿勢を保ちます。
★運動:身体を曲げたり、ねじったりする動きを可能にします。
★脊髄の保護:最も重要な機能の一つで、デリケートな脊髄を外部からの衝撃から守ります。
◆部位ごとの特徴:
★頚椎(C1-C7):首の部分。頭部を支え、可動性が高いです。
★胸椎(Th1-Th12):胸の部分。肋骨と連結し、胸郭を形成して内臓を保護します。比較的安定しています。
★腰椎(L1-L5):腰の部分。体重を支える主要な部位で、大きな可動性があります。
★仙骨(S1-S5):骨盤の一部。複数の椎骨が融合しています。
★尾骨(Co1-Co4):仙骨の下に位置し、退化した椎骨が融合しています。
解剖学的には、特定の感情が特定の椎骨に「宿る」という直接的な構造はありません。しかし、ストレスや精神状態が、筋肉の緊張や姿勢の変化を引き起こし、それが特定の部位の痛みや不調として現れることは広く知られています。例えば、緊張で首や肩が凝る、ストレスで胃がキリキリする(胸椎レベル)、といった例が挙げられます。これは、自律神経系を介した身体反応と関連しています。
2.生理学的根拠◆◆
生理学的に見ると、背骨は神経系と密接に関わっています。
★脊髄:脳と全身をつなぐ神経の「幹線道路」であり、中枢神経系の一部です。脊髄からは各臓器や筋肉、皮膚につながる脊髄神経が枝分かれしています。
★自律神経系:感情やストレス反応に深く関わる神経系で、交感神経と副交感神経からなります。
★交感神経は主に胸椎と腰椎から出ており、ストレス反応(心拍数上昇、血管収縮など)に関わります。
★副交感神経は主に脳幹と仙骨から出ており、リラックス反応(心拍数低下、消化促進など)に関わります。
★脳脊髄液:脳と脊髄の周りを満たしている透明な液体で、物理的な保護(クッション作用)と、栄養供給、老廃物除去の役割を担っています。この液体の循環は、全身の健康に重要とされます。
感情的なストレスは、自律神経系のバランスを崩し、特定の部位の筋肉の過緊張や血流の変化を引き起こすことがあります。例えば、不安や怒りといった感情は交感神経を優位にし、首や肩、腰などの筋肉を緊張させやすくします。これにより、痛みやこりとして現れることがあります。内臓の働きも自律神経によって調整されるため、感情的なストレスが胃痛や便秘などの内臓不調として現れることもあります。これは、感情が「内臓の鏡」であるという考え方を生理学的に裏付ける一端と言えるでしょう。
3.世界医学論文根拠◆◆
西洋医学(現代医学)の主流においては、特定の感情が特定の背骨の部位に「宿る」という直接的な概念は一般的ではありません。しかし、『心身相関(mind-bodyconnection)』の概念は広く認識されており、精神的なストレスが身体に与える影響については多くの研究があります。
★慢性疼痛と心理的要因:慢性的な腰痛や頸部痛、肩こりなどの患者では、うつ病、不安障害、ストレスなどの心理的要因が高い割合で認められることが多くの論文で示されています。心理的ストレスが、筋肉の緊張、炎症反応の増悪、痛みの閾値の低下などを引き起こすメカニズムが研究されています。
★アレキシサイミア(失感情症)と身体化:感情を認識したり表現したりするのが苦手な人(アレキシサイミア)は、感情を身体症状として経験しやすい傾向があることが指摘されています。これは、感情が「内臓の鏡」という考え方にも通じる部分があります。
★ストレス性身体症状:ストレス反応が、頭痛、肩こり、腰痛、胃腸症状、動悸など、様々な身体症状として現れることは、心身医学や精神神経免疫学の分野で広く研究されています。
これらの研究は、感情が特定の部位に直接「宿る」というよりは、感情的なストレスが自律神経系や内分泌系、免疫系を介して、特定の部位の筋肉や内臓の機能に影響を与え、症状として現れるというメカニズムを示唆しています。
まとめ◆◆
背骨は、解剖学的・生理学的に見ても、神経系の中心として身体の機能を司り、感情的なストレスが身体症状として現れる重要な部位です。
特定の感情が物理的に「宿る」というよりは、感情が自律神経系などを介して身体に影響を与え、その結果として特定の部位に不調が現れると理解するのが現代医学的な見方です。
一方で、東洋医学やスピリチュアルな視点では、背骨の各部位がエネルギー的な観点から特定の感情と深く結びついていると考えられています。これらは異なる概念体系ですが、心と身体が深く繋がっているという「心身相関」の重要性は共通して認識されています。
ご自身の身体の声に耳を傾け、心身のバランスを整えることは、どの視点から見ても非常に大切です。