北ノ京ニハヤルモノ ~中国北京の最新トレンド~

北ノ京ニハヤルモノ ~中国北京の最新トレンド~

中国北京で暮らし始めて5年半。
「3年ひと昔」と言われる中国の進化に日々驚かされるばかり。
日本で報道される中国事情よりもっと生々しく泥臭い、
最新の中国人消費者の動向を発信していきます。

Amebaでブログを始めよう!

北京で勤務した5年強。

クライアントや友人から「中国人と働くのって大変だね」という言葉をしばしば聞いた。

特に現地で採用しても、
そこからいい社員に育てていくところで苦戦している人が多かった。

すぐにやめてしまう、言い訳ばかりする、給料を上げろ攻撃がすごいなど、

日本でのサラリーマン経験ではなかなか出会わないシーンに戸惑っているようだった。

私は、幸いなことに人材マネジメントは「うまくいっていた方」だと思う。

なので、どうやったらいい中国人社員を採用、育成できるのかを
思いつくままに書いてみようと思う。

(ちなみに私がいたのは日系広告代理店です。
業種によっては当てはまらないこともあるかもしれませんが)

 

=====

 

発展空間。

日本では聞きなれない言葉だが、中国人マネジメント上は本当によく聞く言葉である。

 

たとえば、

採用面接時は、「どんな発展空間をもらえますか?」

やめるときは、「もう発展空間を感じないので」など。

 

意味を日本語に置き換えるとすると、「成長機会」というの言葉が当てはまる。

つまり、

「この会社で自分はどんなチャンスをもらえてどのように成長できるのか?」

「この会社ではもうこれ以上自分のスキルアップの機会がないからやめる」

と言っているのだ。

 

日本式採用だと、

「まず採用してみて何ができそうかを見極めてからミッションを与えよう」

といって、日本語ができるから採る「とりあえず採用」をしがちだが、

採用される側の中国人にとっても、採用する側の日本企業側にとっても
これはとても危険だ。

 

中国人、特に若い中国人ほど、

「この会社で何が学べ、どんなスキルを身につけられるのか」を重視する。

それだけキャリアに貪欲で成長欲求が高いということでもある。

 

私は面接時に、できるだけ具体的に広告代理店のマーケティング担当部門が
どのような仕事をしているのかを説明するとともに、

「入社したら、こういうステップでスキルを身につけていきます」

というスキルアップストーリーをあわせて話すようにしていた。

 

たとえば、マーケティングリサーチについてならばこういう具合だ。

 

まず、エントリークラス人材なら、

「入社したら、まずは担当業界の基本的な専門用語を覚えてください。

そして、その業界の直近動向や市場規模、最近の広告投下状況など
基本的なデスクリサーチができるようになりましょう。

そして、データベースから必要なデータを取り出せるようになりましょう。

そのあとは、リサーチ結果をエクセルでグラフ化し、分析して、
報告書を作れるようになります。

それができたら、自分でマーケティングリサーチを企画できるようになりましょう。

ここまでを1年間でできるようになることを成長の基準にしています。」

 

それに対して、候補者から

「おおお、身につけられることはたくさんあるのですね、発展空間がありますね」

と言ってもらえれば魅力的な会社と感じてもらえたとになるし、

「大変そうですね・・・」と怯む候補者ならば即不採用である。

 

また、ミドルクラス以上の人材なら、こう話した。

「意識していただきたいのは、常に自分の作った資料が、
社内の他部門やクライアントを満足させられるかが評価の基準であるということです。
やったかどうか、時間以内にできたかどうか、は評価の基準にはなりません」

 

量より質で評価する、とはっきり伝えることで、

ミドルクラス以上の人材でも、

「これまでやってきたキャリアを生かせるが、
さらなるプロになる発展空間があるのだな」

と思ってもらえるし、

「ちょっとやったことがあるだけ」の経験値売りで面接を突破しようとする
低付加価値人材を採用してしまうという失敗を避けることもできる。

 

面接時に候補者に「我が社での成長機会」をうまく説明できるかどうかは、

中国においてモチベーションの高いいい人材確保のためのコツだと思うし、

ミスマッチで不要なコストを積み上げないために
採用側がやっておくべきリスク回避策である。

 

「我々と一緒に成長していきましょう」などと
曖昧なありがちな精神論で中国人に擦り寄ると、

「あの会社に発展空間はない」という噂があっという間に広がり、
かえって自社のブランド価値を下げてしまう可能性もあるのだ。