本を読むと、ときどき日常が少しだけ脱線します。
今回の脱線先は、まさかの昼ごはんでした。
『ゆうれい居酒屋』を読んでいたある日、私は完全に油断していました。
幽霊と人情、そして少し切ない人生模様。そこまでは想定内でした。
問題は、物語の途中でさりげなく登場した
「塩昆布とオリーブオイルのパスタ」です。
塩昆布。
オリーブオイル。
パスタ。
材料はまさかのこの3つ。
頭の中でこの三つが並んだ瞬間、小さな会議が始まりました。
「それは本当に合うのでしょうか」
「意外と合うのではないでしょうか」
「そもそも居酒屋でパスタなのでしょうか」![]()
![]()
![]()
翌日の昼。
冷蔵庫を開けると、ありました。
塩昆布。
オリーブオイル。
そして、パスタ。
これはもう運命だと受け入れることにしました![]()
エプロンも着けず、特別な準備もせず、静かにお湯を沸かします。
フライパンは使いません。
にんにくも入れません。
具材で誤魔化すこともしません。
原作に忠実であることが、今日の私のささやかなこだわりです。
パスタが茹で上がり、湯切りをしてお皿に盛ります。
そこへ塩昆布をぱらり。
オリーブオイルをくるり。
あまりにも簡単で、「これは料理と呼んでよいのでしょうか」という疑問が浮かびます![]()
しかし本の中では、確かに一皿の料理として存在していました。
そう考えると、これは文学に基づいた昼食だと言えそうです![]()
ひと口目を食べて、少し驚きました。
想像していたよりも、とても静かな味です![]()
塩辛さが前に出るわけでもなく、オイルの主張が強いわけでもありません。
それぞれが程よい距離を保ち、出しゃばらずにそこにいます。
二口目で、これは美味しいと感じました。![]()
![]()
三口目では、不思議と気持ちが落ち着いてきました。![]()
![]()
![]()
派手さはありません。
写真映えもしません。
けれど胃がびっくりしませんし、食後に重たさも残りません。
まるで「今日はこれで十分でしょう」と静かに言われているような感覚です。
皿が空になっても、幽霊は現れませんでした![]()
不思議な出来事も起きませんでした![]()
ただ、穏やかで良い昼時間が過ぎていきました![]()
本の中の料理を実際に作ってみると、
物語が自分の生活の中に溶け込んでくることがあります。
ページの向こう側にあった世界が、
台所と食卓の間にふっと現れるような感覚です。
本を読むと、たまにこんなことが起きます。
だから私は読書をやめられませんし、
冷蔵庫の中身も、油断できないのです。
最後まで読んで頂きありがとうございました![]()







