王様の横で王妃様が墨をする
ほど近い椅子から市井の者が話をしている
仮住まいの庭は今日も賑っている
命からがら皇宮を出て王様と王妃様が落ち合った
この仮住まいで王様は民と直接話すことを始められた
隊長は初めは反対をされたが説得されたらしく
俺たちに「よく守れ」と命を出した
その隊長が皇宮への帰還の命を受けた
俺の組が同行を告げられる
トルベ・トクマンも一緒だ
ドチさんを伴って皇宮へと向かう
当面の役目は皇宮の人心掌握と
今回の件に関する反王様派の粛清になる
「迅速かつ秘密裏に動く」
隊長はそうおっしゃった
******
「皇宮に戻れば顔ぐらいは拝めると思っていたのに」
久しぶりの兵舎の食堂でトルベが呟く
お目当てのミンジュン殿が出仕していないことを
聞かされたようだ
「今回の目的が達成されて王様が戻れば
ちゃんとミンジュンさんに会えますよ~」
お気楽なトクマンが宥めている
「んなこと言ってねえ」
「痛、殴らなくてもいいでしょう」
トクマンが涙目で訴えている
「コウこそユナ殿に会いたいだろう」
俺の顔を覗き込んでくる
当たり前のことを聞くなと頭を小突いてやる
帰還の件はユナ殿の兄上から聞こえているだろう
無事の知らせはスリバンに頼んで届けてもらっている
心配しているだろう
なにより俺だって顔を見たい
ため息をついて席を立った
******
コウ様…
柔らかそうな頬に手を伸ばす
恥ずかしげに頬を染め
伏せていた瞼をあげて黒目がちの瞳が
俺を映す
ゆっくりと抱き寄せて首筋に顔を埋める
甘い香りを楽しむ
小さな息づかいと肌の温かさを
白い首筋に這わせた唇に感じる
頬を撫で柔い薄紅色の唇へと向かう
離れそうになる腰元をもう一度緩く
抱き寄せる
「起きて下さい」
野太い声に驚き目を開けると
うっすらと頬を朱に染めているトクマンと
目が合った
抱き寄せていた体を突き飛ばす
「何をしている」
「こっ、こっちのセリフですよ
おっ俺は起こしにきただけで
抱きついてきたのはこっコウさんのほうで」
トクマンよ
分かったから赤くなるな
さっさと役目を終えて
ユナ殿に会いに行こうと
再度心に決める
