「ルチア・イスマエル…」
昨日の優しくしてくれた女の子の名がルチア・イスマエルということが判明した。
昨日の彼女が言っていた、森の奥に用事があるというのは、きっと探索へ向かうためだったのかと予測ができた。
彼女もきっと頑張っているんだ、と奮起してまた探索へ早足で戻る。
「最初から1人で戦うんじゃなくて、誰かと協力して探索できないか提案してみようかな。」
探索の入り口前で、誘えそうな人はいないか周りを伺う。森の小道は子どもでも探索できるから、家族連れが比較的多い。その中に割って入るのも気が引けるので中々誘えないまま。
すると目の前に赤いジャケットの白髪の男性が1人。
「君は…何か困っているのかな?あまり見ない顔だね」
羽のついた特徴的な黒い帽子を被っているその男性は、不安そうに辺りを見回すジュリーに気づいてくれたのだった。
「あの、私今日帰化したばっかりの元旅人で、探索に行こうにも武器も何もかもまだ弱くって…」
あぁなるほど、と言わんばかりに目を見開き、私に着いてきなさいと腰から下げた銃を手に持ち、そのまま探索へ。
話を聞くとその男性の名はフィルさん、魔銃士という役職の方らしい。その役職の方は主に銃を扱い、普段は北の森ではなく、薬師の森付近を探索しているらしい。
過去に、狩りをするおじいちゃんに付き添ったとき初めて銃を見たが、1発放つたびに反動が凄まじく、恐怖を感じたことがあった。そしてまだ幼いからという理由で、おじいちゃんからは銃の代わりに小刀のようなものを与えられた。それが現在のジュリーが剣を扱う理由である。
すると草の茂みから急に現れたボココイ、完全に油断していたジュリーはざっと後方へ足を引く。そのときに既にフィルさんは銃を構え、的に1発当てていた。
あまりの速さに空いた口が塞がらないジュリー
状況がやっと飲み込めたときにはジュリーは完全に興奮し切っていた。
「…フィルさん!凄いです!どうやったらそんなに上手になれるんですか!」
偶然出くわしたよく知らない奴からいきなり褒められてフィルさんはやや困惑ぎみな様子。
「どうやったらって…まあ練習あるのみ、だろうな。こればっかりは経験がものをいうんだろうよ。」
動揺するフィルさんには気にも留めずに、ジュリーの心のときめきは止まらない。
「フィルさん、私もっとフィルさんみたいに強くなりたいんですけどどうしたらいいと思いますか!」
「え?まぁ、嬢ちゃん剣を扱うようだったら、近衛騎士とか目指せばいいんじゃないか?基本的な形は仕上がってるようだしな。それにあそこの集団は本物だ。そんじゃそこらの人間が入れるもんじゃねぇんだ。あの集団に入ったら戦いが上手くならざるをえないだろうよ。」
近衛騎士…、たしかあのルチアさんが応募してたのも近衛騎士だっけ。と思い出すジュリー。
ジュリーは固く決心した。
「今よりもっと強くなって近衛騎士とかいうなんとかになってやる!」