望みもしないのに


もうすぐクリスマスであることを知らせるイルミネーション。


夜の街は嫌いじゃない。


酔っ払いでさえも、


街の活気を感じる。


繁華街ならなおさらだ。


薄汚れた街の真実を見せ付けられる朝に比べれば


夜のほうが気が楽だ。




待ち合わせ場所にでもなっているのだろうか。


その場所は、


小さな広場になっていて、


カップルや人待ち顔な人が多かった。




私も、


しばらくぼぅ、と流れる人並みを見つめていた。




「いくら?」



中年の男が声をかけてきた。


上品とはいえないなりだったが、


私を娼婦とでも思ったのだろうか。


当たらずとも遠からじだ。



「・・・ま、とりあえずいこっか」



せかすように彼は私の肩に手をかけた。





人ごみを少し外れたところにあるホテル街。


その中のひとつに連れて行かれた。



パネル式の部屋選択で、


男は空室の中で一番安い部屋を選んだ。



エレベーターに乗り込むと、


突然唇を重ねてきた。


いやらしく絡ませる舌。


酒のニオイと、不潔な男性のニオイがした。




部屋に入ると、


いきなり私の股間をまさぐり、ズボンを脱ぎ、


挿入してきた。


私のカラダをむさぼるように上下して興奮している男の様子が


なにか別な動物のように感じた。


テクニックもなにもない。


ただ自分の性処理だけの行為。




男がイッた後、


私はひとりシャワーでカラダを洗った。


汚い男に触られたあとを消すように。


ごしごしごしごし。




シャワーからあがると、


男はもういなかった。


テーブルの上にわずかなお札が無造作に置かれていた。


あんな男だったが、会計もすませているようだった。


私も身支度して、ホテルを出た。




まだ・・・


街は賑やかで華やかだった。




ここにも・・・


なかったようだ。




つづく・・・