トランクひとつが私の財産。


歩いて・・・歩いて・・・


どこへ向かうでもなく。


なにを求めるでもなく。




ただ、


留まっていることができないから。


だから、歩く。




寝るときは適当な木の根元で


ブランケットにくるまって寝る。




そんな生活がどれくらいつづいてるのだろう?


それさえももうどうでもいいこと。



ひとつの街についた。


にぎやかな街で、


昼も夜も暗闇がない。



私は、


街の端の店の角に座って休んでいた。



「食べるかぃ?」


顔を上げると、横に男が立っていた。


手にパンを持って。



彼の目を見ながら、


パンに手を伸ばして受け取り、食べた。


水もくれた。




「みかけない顔だね。


今日来たのか?」



黙って頷いた。



「じゃ、寝るとこもないんだろ。おいでよ」






彼に案内された部屋は、


いかにも男一人暮らしのような


雑貨とゴミにまみれた狭い部屋。



「座ったら?」



ベッドに腰掛ける彼は自分の隣をぽんぽんと叩いて私を呼んだ。


言われるままに、


彼の横に腰掛ける。



外からの照明で


部屋の電気がついていなくても充分に明るいその部屋で、


彼は私の肩を抱いた。


そして、


唇を重ねた。


キスをしながら、


彼は私の服を脱がせていく。


私は


黙ったまま


抵抗もせず


されるがままだった。




ベッドに押し倒されたときには


一糸纏わずだった。


自分の服も脱いだ彼は


私のアソコを触ってきた。


くちゅ・・・くちゅ・・・


外の騒音に混じって愛液が分泌していることを知らせる音。




二人は何も言葉を交わさなかった。


部屋には、


交わった部分の湿った音。


私と彼の喘ぎ声。













朝。


「スープ、うめぇだろ?」


男の言葉に、軽く頷き、


席を立った。



「もういくのか?もうちょっとゆっくりしてっていいんだぜ」



「・・・・・・・・」



顔だけ向け、何も言わずに彼の部屋を後にした。




この街には・・・


なかったようだ。






つづく・・・