シルバーウィークが終わり、勤務地に帰ってきまして、2日働いてまた夜行に飛び乗った阿呆は私です。もののふ白き虎という舞台に心の底から虜になっております。名古屋公演が休日でないことが悔やまれる。大阪公演の4公演で私の観劇が終わってしまうと思うと物凄い鬱が押し寄せます。
感想はこの前書きましたが、今日は考察してみたいと思います。もののふ白き虎という舞台に何故ここまで引き込まれるのか?やはり脚本と演出が秀逸であると感じます。ずっと悌次郎は何故こんなに誰もが憧れる天才として気高く、ある意味人間離れした少年として描かれているのに、貞吉はこんなに人間らしいんだろうかと思いながら観劇しておりました。
よく考えれば、あれは貞吉と斎藤の過去の追想の物語。だから最初は何故白虎隊の皆があそこまで貞吉に拘るのか、私にはよくわかりませんでした。
「いつか白き虎となり、狼よりも遥か高いところまで行くことです」
それを皆が憧れる土方に面と向かって言えるほどの強い想い。きっとそういうところが貞吉には元々あったのでしょう。だからこそ悌次郎をはじめ、皆はあそこまで貞吉を認めていた。
けれどそんなことは貞吉にはわからない部分です。総じて自分の長所短所は自分には見えにくい。さらに傍にずっとすごい、憧れている親友がいる。貞吉はおそらくずっと自己肯定が低いままだったのだと思います。自分は生き残るべきではなかったのではないか?生き残るのであれば、悌次郎が。そんな想いを貞吉はずっと抱えていたのだと思います。
「あなたと私は、同じような気がしたから」
と貞吉が斎藤に語りかけるシーン。最初は単に同じ生き残り、という意味だと思っていました。けれど3日の空きを挟んで観た5回目、6回目の観劇で、憧れの人を亡くし生き残ってしまった同士なのではないか?と思うようになりました。斎藤も、陰湿な男だとか気にくわないとか言いながら土方に憧れていたのではないか。冒頭のシーンでの「お前も、土方か」の、お前"も"は斎藤自身を指しているのではないか。たぶん斎藤自身はもう自分の中で決着をつけているのだと思います。それはきっと土方の斎藤への最期の言葉を頼母様が届けてくれたから。だから自分も貞吉に、悌次郎の最期の言葉を届けてやらねばならんと、そう思ったのではないでしょうか。最期の想いを知らないばかりに14年も苦しみ続けていることを、貞吉からの電報で気付いたのではないでしょうか。
誰かが生き残り、後世に伝えなければ、敗軍の将など悪として語られ、誰も真実には触れることができない。白虎隊はただ新撰組に憧れ、故郷の会津を守るために戦った少年たちでした。笑いもすれば泣きもする、普通の少年です。ただそれはやはり、誰かが残さねば知られることないものだったのでしょう。
『残す言葉は自らの筆にしなければ』
本作で貞吉を形作っているのはまさにそこだと私は思いました。作中で何度も母親に筆を送る貞吉の姿、また冒頭で手紙をしたためる姿。言葉を後世に残す役割を与えられた、それが貞吉だった。だからこそ、白虎隊の姿が様々な書物となり、今世まで残っているのだと思います。作中、歌の好きな母親への手紙で書かれていましたが。
『この日々を、残して欲しいと思うのです』
きっと、いつかこんなふうに笑い合える日々が、精進し合える日々がなくなることを、貞吉は予期していたのでしょう。おそらく自分が残す役割を与えられるとは思いもせず。
自刃することができなかった貞吉は、亡くなった隊士たちに対しての罪悪感でずっとずっと苦しんできたのだと思います。虎として、誇り高く、死を選べなかった自分を許せなかった。それが悌次郎の言葉で救われる。俺たちは虎だ、という言葉。そして、後ろには俺たちがいる、という言葉で、貞吉はようやく前を向けたのだと思います。14年間、きっと振り返ってばかりだった過去に、ようやくひとつの答えを出すことができた。
それが最後の
「結局酒の飲み方は下手なままだったな、昔も今も」
「でも"これから"は違います」
に繋がるのではないかと。これは、貞吉がようやく未来を向くことができた、という意味の言葉なのではないかと。それを考えると本当に分かりやすいのに深い作品でした。一度だけではたぶんここまで考えることはできなかったと思います。でも一度観ただけでも充分理解はできます。最後まで観ると冒頭のシーンの「???」ってところもわかります。ただ、二度三度観て欲しい舞台、というところは変わりません。本当に素晴らしかった。
そして、劇中歌をぜひサントラにしていただきたい。公演後に友人(住んでるのは同じく西の方なのにシルバーウィークもこの土曜日も二人とも銀河劇場にいた)と話しながら帰っていると毎度その話になります。「サントラが欲しい~!」と悶えながら、泣き喚いております。
は~~こんなに素晴らしい舞台に次いつ出逢えるのか。いつにせよ、そのときには今回同様思う存分お金を突っ込めるように切り崩しまくった貯金を元に戻さねばと思う次第であります。