とある人が、恥ずかしい厨二全開の小説を書いているそうなので、
自分もどれだけ厨二パワーを出せるのか試してみた!
だいたいの構成は飯食ってる間に考えたから、
あとは思いつくままにキーボードを叩く簡単なお仕事。
なぁに大丈夫だ、ストーリーなんてクオリティを求めなければ、書き始めたら浮かんでくるものさ!
みんなもやってみよう!最初からわざとであると宣言しとけば何も恥ずかしくないぞ!
~本気で厨二病になってみたらこうなった小説~
タイトル:「クリエリア」
俺は今、「世界」というものについて考えている。
高校の授業中だが、そんなことに神経を向けている場合ではない。
俺たちが存在するこの「世界」とは、一体何が基準の「世界」なんだろうか?
朝目を覚ました「世界」が、昨日と同じ「世界」だとどうして言えるのだろうか?
自分の目の前に広がる「世界」とは、本当に一つなのか?
「世界」とは、なんだ?
「同志、同志!」
突然、隣の席から声がした。
「は?」
いきなり現実に呼び戻された事に苛立ちを覚えつつ、声の主に聞き返した。
「なんだよ?」
「同志、前だ!」
声の主は俺の前方を指差している。それにつられ、俺も前を向くと…。
「げ。」
俺が今いる「世界」、つまり教室の支配者である教師が俺をにらんでいた。
「君、私の話を聞いているのか?そんなに窓の外が気になるのなら、出ていきなさい。」
「…すいません。」
「(…ふっ。教師の奴め、俺がどれほど重要な事を考えているか、わかっていなようだな。まぁいい。)」
俺が再び「宇宙の本棚-アカシックデータバンク-」との通信を試みていたところ、隣から邪魔が入った。
「同志、何か考え事かな?」
先ほどからの小声の主は、隣の女子、実知琉。おそらくだが、常人ではない。俺と同じ能力者だ。
見た目はどこにでもいる細身の女子高生だが、中身はもう駄目だ。いわゆる不思議系である。
「考え事?当たり前だ。俺が思考するのを止めた時は、世界の終わりを意味する。」
「…『クリエリア』について、新たな情報は?」
「いや。引き続き俺は情報収集(という名の妄想活動)を行う。お前は、目の前の奴の監視だ。」
「了解。同志。」
実知琉は俺の事を同志と呼ぶ。俺もこいつだけは、仲間であると思っている。
そもそもの始まりは、ある日の授業中の事だ。
俺はいつ始まるかわからない「世界の再構築-ニューフロンティア-」に備え、休息を取っていた。
そこで、夢を見て…いや、決して寝ていたわけではないから、「神の託宣」とでも言うべきだろうな。
見たのは、ある日の記憶だ。俺が学校の図書室へ行くと、本棚の隅に一冊のラノベらしきものがあった。
タイトルは覚えていない。パラパラとめくっただけなので内容もわからない。
しかし、一つだけ覚えている事があった。そのラノベの中で出てきた言葉、「クリエリア」。
意味はわからないが、俺はその言葉にとてつもない何かを感じ、記憶に強く残っていた。
そして…やってしまったんだ。学生時代に必ず一度は誰かがやっているのを見るあの現象。
「夢の中で叫んだつもりが、その言葉を叫んで目が覚めてしまう」というアレだ。
気付けば俺は、教室で夢から覚めると同時に大声で叫んでいたのだ。「クリエリア!」と。
…もちろん教室の時間が止まってしまったのは言うまでもない。正直、恥ずかしいってレベルではなかった。
だがその時、それまで特に仲良くなかったこの実知琉だけが、俺に話しかけて来たのだ。
「知ってるの?『クリエリア』のこと。」
その事件以来、なぜか俺は「同志」と呼ばれることになってしまった。
それから「クリエリア」について2人で話したのだが、不思議な事にそれがなんなのかまだわからない。
実知琉の話によれば、その言葉を知ったのは俺とほぼ同じ状況だった。
ある日立ち寄った市の図書館で、俺と同じくラノベのようなものに出会ったらしい。
その話を聞いて気になったので2人でそのラノベについて調べてみたものの、全く手掛かりがつかめない。
もう一度図書室へ行ってみたところ、その本は無くなっていた。
誰かが借りていったのかもしれないが、残念なことにタイトルがわからない。
本棚に戻ってしまったタイトルのわからない本を探すなど、無理に等しい。というかめんどくさすぎる。
ちなみにネットで「クリエリア」と検索しても、全く引っかからなかった。
どんなに売れていないラノベだとしてもグー○ル先生なら知っていそうな気がしたのだが、
それらしき情報は全く得られなかった。
「同志!」
またもや、隣の席から声がする。
「起きろ。もう授業は終わりだ。」
「え?」
まわりを見渡すと、教室の空気はすでに昼休みの昼食モードだった。いつの間にか寝ていたようだ…。
「ふむ、よくやった、実知琉。お前がいなければ危うく昼飯を食べ損ねるとこだった。」
「ふふっ。我々は同志なのだ。それぐらいは当然。」
「…ん?ところで、今何時だ。」
「休み時間終了5分前ってところだな。」
「なっ、お前…!」
「頑張れ、同志よ!」
グッ!とガッツポーズで俺に心にもないエールを送って来る。
「お前絶対わざと起こさなかっただろ!…あぁ、話はあとだっ!」
俺はとりあえず購買へダッシュした。しかし、この時間にまともなパンなど売っているはずもない。
仕方なく、いつも1つだけ売れ残っている人気ワースト1位の「練乳&ハチミツ入りあんパン」を購入。
初めて食べてみたが…まずすぎる。噂通りの壊れた甘さだ…。作ったやつの味覚はどうなっているのか。
ちなみに、このパンの入荷数は1日2個らしい。
毎日1つだけ売れ残っているのだから、もう1つは誰かが毎日買っているというわけだ…。
どんなやつがこんなパンを好んでいるのか、顔が見てみたい気もする。
教室に戻ると、実知琉が満面の笑みで待ち構えていた。こいつ、相当ないじめっ子だ。
「飯にはありつけたか?」
「いいや、何も。」
あんなものにお金を払ったというのはなんとなく言いたくなかったから、ごまかしておいた。
「もう授業始まるぞ。」
「わかってるよ。ったく。」
そんなやりとりをしていると、後ろから俺を呼ぶ声がした。
「あ、あの。」
振り返ると、そこには同じクラスの女子、見夜子(みよこ)の姿があった。
「よかったら、これ、どうぞ…。」
見夜子が差し出した手のひらには、ラップで包まれたおにぎりが乗っていた。
「えっ!?ちょ、ちょっと待って!」
「は、はい?」
あ、ありえん…。この俺が女子からおにぎりをもらうだと…?
何が起こった?そんなフラグをいつ立てた!?
見夜子はクラスの中でも控え目で、正直影が薄い存在だ。これまで一度も話した事はなかった。
…はっ!そうか!今がその時か。これがフラグ成立の瞬間か!
「本当にもらっていいのか?」
「は、はい、お昼ご飯、余っちゃって、それで…」
ふ。なるほど。俺の能力が自然に発動してしまったようだ。
俺の666個の特殊能力の一つ、「心理操作-エモーショナルミラージュ-」が。
こいつは間違いなく俺に惚れている。俺にはそれがわかる。
なぜなら「心理 把握-エモーショナルセンサー-」を発動すれば、相手の心はまるわかりだからな。
俺が本気を出せば、人間の女など簡単に支配できるのだ。
もちろんいつでもできるが、まだその時ではない。まだその時ではないのだよ!
「じゃあ遠慮なく。」
そう言って俺の手がおにぎりをつかもうとした瞬間。
「待て。」
どこからか制止がかかった。声の方を見ると、いつのまにか見夜子の後ろにもう一人女子がいた。
「こんなやつに…私以外の人間に見夜子の手作り料理を食べさせるわけにはいかない!」
「は、はぁ?」
こいつの名は確か…、陽羽理(ひばり)。
「見夜子のおにぎりが食べたいなら、私を倒してからにしろ!」
「ちょ、お前何言って…。」
わけがわからず、俺も対応に困る。
「ひ、陽羽理ちゃん、恥ずかしいよ…。」
対応に困っているのは俺だけではなかったようだ。
「なるほど…。見夜子をかけた戦いという事か。男を見せろ!同志よ!」
おとなしくしていた実知琉が、ついに発言してしまった。こいつの発言はいつも他人を巻き込む爆弾だ。
「うるせぇ!話をややこしくするんじゃない!」
「やるってわけだな?来い!見夜子は私が守る!」
陽羽理は見夜子をかばう形で割って入り、俺をにらみつけている。
「あのな、そんなこと一言も言ってないだろ!第一…」
キーンコーンカーンコーン。
ちょうどいいところで、授業開始のベルが鳴った。
「勝負はおあずけだ。放課後、屋上で待っているぞ。」
「いや、それお前のセリフじゃないから、実知琉…」
「へぇ…、そっちこそ逃げるんじゃないよ。」
陽羽理が俺に向けて挑発し、席に戻って行く。いやだから俺は何も言ってないんだが。
「戦わなければ生き残れないぞ?」
実知琉も席に着きつつ、必要の無い助言をしてくる。
「どうしてそうなるんだよ。せっかく飯が食えそうだったのになぁ。」
「元々、見夜子のおにぎりをお前が食うなんて、あのボディーガードが許すはずなかろう。」
ふっ。まぁいい。俺には特殊能力によって陽羽理の本性が見えているからな。
俺が他の女の作ったおにぎりを食べるのが嫌だったに違いない。
あいつも俺に惚れているはずだからな。能力の発動を抑えないと大変だな…ククク。
結局、俺はあのふざけたパンをかじっただけで午後の授業へと突入した。
何もやる気が起きない。もうひと眠りするかな…。
そう考えて机に突っ伏した束の間、どこからかとんでもない大きさの爆音が聞こえて来た。
「あぁ?なんだ、この音は…?」
顔を上げクラスを見渡すと、みな固まっている。視線の先は、窓の外に向けられていた。
「ん…?」
急いで俺も外を確認する。
「うおお、なんだアレ!」
俺がそうつぶやくのとほぼ同時に、クラス中が驚きと悲鳴の声を上げていた。
窓から見える風景には、いつもの青い空が無かった。
窓からの視界を埋め尽くすほどの巨大な飛行艇のようなものが、空から校庭に降りて来ている。
「み、みんな落ち着いて!落ち着くんだ!」
教師が慌てて声をかける。しかし、教師自身も平常心ではいられないでいるようだ。
しばらくすると、飛行艇は校庭に着陸。その間、俺たちは何をすることも出来なかった。
「おいおい、どうなってんだよ…。」
もはや授業中であることなど忘れ、生徒の多くが窓から身を乗り出している。
「おい、中からなんか出てくるぞ!」
誰かが叫んだ。
「人…人だ!」
「ホントだ!誰だよこんな事してるのは!」
むむ…。平静を装って賢さを演出していた俺も、さすがに気になってしょうがない。
「東原高校の皆さん。」
「………!?」
誰かの声が、機械を通した大音量で聞こえて来た。声は間違いなく外から聞こえてきている…。
「皆さんに聞きたい事があるのです。」
丁寧な口調の男の声だった。こんな不自然な状況でも、怖いというイメージは感じさせなかった。
「私達は今、ある書物を探しています。その一つがこの高校にあるという情報を得たのです。」
書物…?おいおい、冗談だろ。それでなんでこんな事をする必要があるんだ。
「『重なる世界』という書物を知っているものは、ぜひ名乗りを上げていただきたい。」
「おい、お前知ってるか?」
「いや、知らねぇな。」
「そんなの、聞いたこともないよ。」
学校の中が騒然となる。しかし、心当たりのある人間は一人もいないようだった。
…だが、俺だけは違った。うっすらと、どこかで聞いた覚えがあった。何なのかはわからない。
「おや、どなたも知らないようですね。それでは…。」
一呼吸おいて、謎の男は一層慎重な口調で話しかけてきた。
「…『クリエリア』という言葉を知っている方はいませんか?」
その言葉を聞いた瞬間、俺の全身を電撃が走りぬけた。
「『クリエリア』!?」
俺は思わず叫んだ。そして、実知琉の顔を見た。
「お、おい。今あいつ、『クリエリア』って…。」
「言ったな。」
「言ったなってお前…。俺たちが探してた、あの『クリエリア』じゃないか!?」
ネットで検索してもわからなかった言葉が、謎の男の口から飛び出した。
「どういうことだ!」
「いや、私もなにがなんだか良くわからない。」
「そ、そうだよな…。」
ただただ顔を見合わせていると、男の声が再び聞こえて来た。
「ふむ。どうやら残念ですが…実力行使しなければならないようですね。」
男の声と共に飛行艇の一部が開き、中から何かが出てくる。突き出したいくつものあれは…。
「おいあれ…ミサイルじゃねぇか!?」
「まじかよ、どうなってんだよ!」
「に、にげよう!みんな!」
すでに学校はパニック状態だった。だが、俺はみんなとは違う理由で焦っていた。
「おい、実知琉!どうする!」
実知琉は黙って外を向いている。
「とにかく逃げるぞ!」
手を引こうとしたその時、実知琉が口を開いた。
「…行こう。図書室へ。」
「は?」
「探すんだよ。あの本を。タイトルがわかったのだ。今なら探せる。」
「正気か?逃げる方が先だろ!」
「いや、私は行く。逃げたいなら先に逃げろ。」
「…あぁ、くそっ!わかったよ、行くよ!」
俺たちは学校外へ逃げる生徒をかき分け、図書室へ向かった。
「確かこのあたりで見つけたっていってたか?同志。」
「あぁ、ちょうどここの隅に…。」
「あった!」
二人は同時に声を上げた。「重なる世界」。これだ。
「そこで何をしているのかしら?」
「!!!」
背後から、女の声がした。
「あら?ごめんなさい。脅かすつもりはなかったのよ。」
「あなたは、あの飛行艇の者か?」
実知琉が女に質問を投げかける。
「そうよ。」
「本を探していると言ったな?」
「そうよ。何か知っているの?」
「この本は、一体何なのだ?」
「“この本”…?“この本”ってことは、そこに本があるのね?」
「…何を言っている?」
実知琉は果敢に女に対して質問を続ける。
確かに女の発言は俺も意味がわからない。本は実知琉が隠しもせず堂々と手に持っている。
「その本ね、あたしには見えていない。あたしだけじゃない。普通の人には、それは見えないの。」
「…!」
俺はわけがわからず、実知琉の顔をうかがう。実知琉も何が起こっているのかわからないようだ。
「さぁ、こちらにそれを渡しなさい。」
実知琉は手に持った本を見つめたまま、すぐには返答しなかった。
「あら、迷っているの?残念だけど、あなた達に選択権は無いのよ。」
そう言って女が取りだしたのは…。
「じゅ、銃!?」
俺は思わず叫んでいた。それまで堂々としていた実知琉も、さすがに顔が引きつるのが見えた。
「さぁ、渡しなさい。」
「お、おい。そんなの早く渡しちまえ!」
恐怖のあまり、実知琉を急かす。
「…同志よ。」
「なんだ!」
「こんな時、アニメやラノベならどうする?」
「はぁ?」
女に気づかれないように、小声で話を続ける。
「この状況でこれを渡して、事態が解決する作品があったか?」
「お前、何言ってんだ!?」
「私達はなんとしてでもこの本を守らなければならない。違うか?」
「何コソコソ話しているのかしら?」
女は銃口をこちらに向け、隙を見せない。
「…決めた。同志、逃げるぞ。」
「はぁ!?どうやって!?」
「私に考えがある」
そう言うと実知琉は、俺の耳元でとんでもない事をささやきはじめた。
「チャンスは一度、行くぞ。」
「なっ、おい、ちょっと待…」
「この本が欲しいのだな?」
俺の話など聞かず、実知琉は女に話しかけ始めた。
「渡す気になったようね。」
「あぁ、くれてやる。…はぁ!」
掛け声と共に、本を相手に…、いや、相手の遥か後ろへ思い切り投げた。
「なっ…!どういうつもり?死にたいの!?」
女の丁寧な口調は一変し激しくなり、俺達に銃口を突き付ける。
「う、うわぁ…。」
俺は恐怖のあまり、その場に尻から座り込む。
「くっ…!総員、出てきなさい!」
女の号令と共に、どこからか黒服の男達がわらわらと出て来た。
「本を探しなさい!見えなくても、この付近に落ちているはず!」
「さ、逃げるぞ、同志。」
実知琉が差し伸べた手を取り、俺は立ちあがる。そのまま、二人で図書室を走り出た。
「うまくいったな。」
誰もいなくなった長い廊下を走りながら、実知琉が俺に話しかけた。
「全く無茶しやがって。本気で死ぬかと思ったぞ…。」
俺の手には、しっかりと“一冊のラノベが握られている。”
―――実知琉が俺に伝えて来た作戦は、こうだ。
「いいか。私が本を投げるフリをする。だが実際は投げずに、私の足元に落とす。同志は倒れるフリをして、それを拾ってくれ。奴は本を探すのに必死になるだろうから、その隙に逃げるのだ。」
…結果として、作戦は完璧に成功した。
そんな手を使わずとも俺の特殊能力の一つ、「超動体視力-アイ オブ ゴッド-」を発動すれば、
弾丸など造作もなく避けられたのだがな。今回は実知琉に華を持たせてやることにした。
「ところで、どこに向かってるんだよ?」
そう聞くと、実知琉は立ち止まり首をかしげた。
「ふむ。どこだろう。考えていなかった。」
「なんだよ、どこか当てがあるのかと思ってたよ。」
しばらく考えたが、どちらにも特にアイデアは浮かばず、とりあえず他の生徒たちと合流することにした。
「まず、何が起こっているのか確かめなくては。それからこの本について考えよう。」
二人が再び歩き出したその時。
「『クリエリア』。」
どこからか声がした。俺たちは驚いてまわりを見渡す。しかし、誰もいない。
「『クリエリア』。」
今度はもっと近くから。どこにも姿が見えないが、ハッキリと聞こえてくる。幼い女の子の声のようだった。
「誰だ。」
実知琉が誰もいない空間へ話しかける。
「実知琉!何か見えるのか!?」
「いや、何も見えていない。」
「私はここにいるよ。」
またもどこからか声がする。
「ど、どこだよ!出てこいっ!」
俺はやけくそになり、強気に叫ぶ。頭の中に声だけが響いてくる。怖い。こんなことあり得ない。
「その本を開いてみて。」
「…!?」
俺と実知琉は顔を合わせる。だがどちらも、状況が全く理解できない。
「どうする、実知琉。」
「…本を貸せ。」
実知琉が俺の顔を真正面から見つめ、こちらに手を向けてくる。
「…どうなってもしらないからな。」
俺は考える事を放棄し、実知琉に本を渡す。こんな時でも実知琉の顔は強気だ。
「この本を開けばいいのだな?」
実知琉が何者かに尋ねる。
「うん。そうすれば、私と会えるから。」
「…開くぞ。」
実知琉がゆっくりと本を開く―――。
「あ…!」
実知琉が驚きの声をあげるのが聞こえた。しかし、そんな事より…。
「おい、実知琉!実知琉!?」
俺の前から、実知琉が消えた。
「同志もあの子が見えるのか!?」
「実知琉!?そこにいるのか?実知琉!」
「どうした?私はここにいるぞ?」
何が起こったのかわからない。実知琉の声は聞こえるが、姿が見えない。
「一度、本を閉じて。」
女の子…そこにいるという女の子の声がする。
「わかった。」
そう答えた声がした後…実知琉が目の前に現れた。
「実知琉!」
「なんだ。こんなに名前を必死で呼ばれたのは初めてだぞ。」
「だって…実知琉が急にいなくなって…。」
「なに…?私はずっとここにいたぞ?」
「声は聞こえてたんだけど、姿が見えなくなって!」
「どういう事だ…?」
そう言って実知琉の視線が前へ向くと…実知琉の表情が一変した。
「そんな…いない…?」
「な、なんだよ!」
「女の子が…小さな女の子がそこにいたのだ…。」
「な…女の子なんていないぞ!?」
「本を開いたら、目の前に女の子がいた。」
「そう。本を開かないと、私は見えないの。」
またもや、何もないところから女の子の声がする。
「だから、今度は二人で本を開いて。」
「なるほど、本に触っていれば見える…ということか。聞いたか、同志。」
「あ、あぁ…。」
俺は実知琉の持っている本の端をつかんだ。そして、実知琉が再び本を開く―――。
その瞬間、頭に衝撃が走った。
まるで目の前からライトを浴びたかのように、視界が光で埋め尽くされた。
「うっ…!」
あまりの眩しさに思わず一瞬目を閉じる。同時に、宙に浮いているかのような感覚を覚えた。
すぐにその光はおさまり、恐る恐る目を開けると…。
「わ…!」
見えた。女の子だ。小学生ぐらいだろうか?小さな女の子が、俺達の目の前に立っていた。
先ほどの宙に浮いた感覚はもう無い。まわりの風景にも何の変化もなかった。
ただ一つ違うのは、目の前に女の子が突如として現れたことだ。
「やっと会えた。初めまして!私の名前はクリア!」
女の子が俺たちにほほ笑む。全く理解不能な状況だったが、恐怖は感じなかった。
「初めまして。クリア。私の名は紫乃宮実知琉だ。こいつは私の同志。」
なに普通に答えてんだよ!とツッコミを入れたいところだが、今はただ実知琉を見守ることにした。
「『しのみやみちる』さんと、『わたしのどうし』さんね。」
「いや、それ名前じゃねぇし!」
「ところで、聞きたい事が山ほどあるのだが…聞いてもいいか?」
スルーかよ!とツッコミを入れたいところだが、ややこしくなりそうだからやめておいた。
「うん、みちるお姉ちゃん。」
「ふむ。ではまずは…」
実知琉が女の子に質問しようとしたその時だった。
遠くから、いくつもの足音が聞こえて来た。ほどなく、聞いたことのある声が耳に届く。
「いい?必ずあの二人を見つけるのよ!」
…さっきの女だ。本が無い事に気付いて、俺達を追って来たのだろうか。
「おい、やべぇよ!こっちに来る!」
「大丈夫だよ、どうしお兄ちゃん。」
「え…?大丈夫って、ここにいたら見つかっちまうだろ…?」
「ううん、大丈夫。絶対に見つからないよ。」
先ほどの恐怖を思い出しつつある俺に、女の子が笑顔でそう答える。
「…なるほど。私達にクリアが見えなかったように、奴らにも私達の姿は見えない。そういう事だな?」
「お姉ちゃん大せいかーい。」
廊下の角を曲がり、数人の黒服の男が近づいてくる。
その足音と共鳴するかのように、俺の心音も大きくなっていった。…が、しかし。
男達は俺達の存在に全く気付く様子も無く、そのまま通り過ぎていった。
「…ほ、ほんとだ。」
「もう、どうしお兄ちゃんったら、怖がりすぎだよ。」
「そうだぞ、同志よ。見えないとわかっていただろうに。」
「うるせー。堂々としていられるお前の方がおかしいだろ。」
あぁ、「寿命が縮まった」とは、こういう時に使うのが正しいんだろうな。
「さて、話を戻してもよいか?クリア。」
「うん、いいよ。」
「まず…、私達のこの状態は、一体どういう事なのだ?」
「えっとね、難しい事はわからないけど…。ここは、お姉ちゃんたちの世界とは違う世界なの。」
「違う世界?だが、私達は移動などしていないぞ?」
「風景も立ってる場所もそのままだしな。」
「ううん、それでもここは違う世界。この世界の名前は、『クリエリア』。」
「…!」
自然に実知琉と目が合った。俺と同じ事を思ったのだろう。
「それは、この本に出て来た『クリエリア』か?」
「うん。その本を開くと、ここに来ることができるの。」
「なるほど…。この世界は、通常と同じ世界に見えるが全く別の空間ということか?」
なるほどって、コイツはわかってるのか…?
「うーんと…。ちょっと違うかも…。この世界はね、お姉ちゃん達の世界とピッタリ重なるように存在しているんだって。パパが言ってた。」
「ふむ…。では、クリア。この本は何なのだ?」
「それはね、私のパパが書いた本。」
「どうして私達にだけ見ることができる?どうやら、他の人間には見えないようだが。」
そうだ、さっきの女は確かに、この本が見えないようだった。
「うーんと…それはわからないや…。」
クリアはそこまでこの世界についてわかっていないようだったから、俺は違う質問を投げることにした。
「なぁ、あの飛行艇は一体何なんだ?あいつらは一体何者だ?」
「あの人達はね、この『クリエリア』を壊そうとしている悪い人達。」
「悪い人達って…まじかよ…。」
「この世界を壊すために、本を探しているの。私はね、それを守るためにこの学校に来たんだ。」
「守るとは…どういうことだ?」
実知琉がクリアに問う。
「戦うの。あの人達と。」
そう答えたクリアの表情は、真剣だった。冗談を言っているなんて、とても思えなかった。
悪の組織と戦う?そんな漫画じゃないんだから…と思ったが、すぐにその考えは消え失せた。
実際に、俺はありえない現象をすでにいくつも見て来た。もはや何が起こっても不思議ではない。
「戦うって、実際にはどうするんだ?」
俺は率直な質問をクリアに聞いてみた。まさか、魔法とかだったりしてな。
「ついてきて。」
そう言うと、クリアはおもむろに歩き出した。
「どうする?実知琉。」
…実知琉の返答など聞かなくてもわかるが、一応確認してみる。
「もちろん、ついていくしかないだろう。」
「だよな。そういうと思ったよ。」
俺達は、クリアと共に校庭へ向かうことにした。
こんなわけで、俺が常日頃から夢見ていた漫画のような非現実が、突然にして現実となってしまった。
ある日見つけた一冊のラノベから、まさかこんなことになろうとは。
俺をこの先待ち受けているのは、一体どんな物語なのか。
俺が踏み入ってしまった世界、「クリエリア」とは、なんなのか。
物語はまだ、動き出したばかりである。
な ん だ こ れ は。
どんだけ俺本気出してんだよwwww頭お花畑すぎワロタwwwwwwww
書く前に決めた設定。
「主人公が厨二病」「ヒロインがそれを上回る厨二病」「ヒロインが主人公を同志と呼ぶ(自分でも意味不明)」
「キャラの名前が厨二病」「見えないラノベ」「ラノベを開くと世界が変わる」「悪の組織がそのラノベを狙う」
「学園物」「登場する全ての女の子が主人公の事を好いている」「クリエリアというもうひとつの世界」
これだけ決めて、あとは気の赴くままに文章を書き連ねてみたらこうなった。
出てくるキャラの性格や設定はその瞬間に決まって行った。ってかキャラの登場自体が全て即興。
クリエリアの世界も全部即興で生まれた。最初はラノベの世界に入るイメージだったはずなのに。
もちろん、このあとどうなるかなんて何も考えてないです。
ホント途中からのハマり度がやばかった。本気になってたw
ぶっちゃけ、めちゃくちゃ楽しんでた。
やばいこれは頭おかしいとか思いつつも、こうやって公開しちゃう俺は真性の厨二病。
暇な時はこういうことしてみるのも面白いかも。
みんなもレッツ厨二病!!!