ただただ上手くかみあう事がなかった母との記憶。
わたしは母が怖くて、しかし全て彼女の言う事が正しいんだと思いながら 開かない扉の階段で琵琶をずっと剥いていた。団地の階段は今でもあの果実の香りを消そうとはしてくれない。
神様はいないとしんじていた。あの小さな世界では、祖母が自分にとっての神であり母が支配者だったから。
祖母には社交性と敵対心を教わり、母には怒りや諦めを教わった
でも忘れられない子供らしい幸せな思い出もある。
透明な金魚のキーホルダーだ。
母が(おそらく)旅行先で私のために買ってきてくれたものだ。
それは値段やモノではない
『私』を思い出して買ってくれたという何物にも変えられぬ贈りものだった。
だからそれ以上の贈り物を私は知らない。
いまだに人から貰ったりやあげたりが苦手だ。
記念日が苦手だ。
大切な記念日、何かをもらった時どんな顔をしたら相手が喜んでくれるのか、それすら不自然な自分が怖い。
過ぎるが故に考えることを止めるのが癖になってしまっていてなんだか全てが面倒になってしまう。
あの時の透明な金魚のキーホルダーは私が切り貼りしなかった表情を縫いつけた。
嬉しくて嬉しくて毎日太陽に翳して見ていた。
いつも綺麗で胸が締め付けられた。
透き通ったあの中に私のひとつを置いてきてしまったのかもしれない。
まだあるのかな…箱の中に