弟には去年の夏頃から付き合っている、同い年の彼女がいる。I子ちゃんという。なかなかかわいい女の子だ。いとこ(女)が同じ高校だったらしく、何かと情報を流してくれる(友達というわけではないらしいけど)。「なんかね、天然だよ」いとこ談。


そんなに会う機会も無く、やーやが生まれてから2ヶ月実家にいた頃ですら、ちょこっと話する程度だった。実家を離れた今、ますます見ることはなくなった。ま、仲良くしているようだ。弟の「家に帰らない病」はI子ちゃんが病原菌であろう事は周知の事実である。菌って言っちゃ失礼か。


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で、先月。正月実家へ泊まりに行ったとき、妹も来ていた。


やーやを眠らせたので、リビングでゆっくりしていると風呂から上がった妹がやってきた。仕事の話やら最近美味しいお菓子の話やらをした後、妹が聞いてきた。


「ねー、I子ちゃんってどう思う?」


どうもこうも、よく知らない。


どうやら、妹はI子ちゃんのことがあまり好きではないらしい。久々のゴシップなので食いついてしまった。なんでも、I子ちゃんの‘‘天然’’に、計算高さを感じるというのだ。


言われてみれば、そうかもしれない。I子ちゃんのとぼけた発言の裏には、「こう言ったら、うけるんじゃないかな?」といった意思が隠されている気がすることが、ままある。全然違う答えを言ったり、変な勘違いをしたり。だから、すべてにおいて心からの発言とは思えない節がある。


そういえば。妹に、獅子舞の時の話をしてやった。


獅子舞の時の話とは。


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私の実家の集落では、正月に獅子舞が各家をまわる。60件前後かな。メンバーは、老若男女様々だ。ここ2・3年、実家の関係先で不幸が続いたため、今年は久々に獅子舞が来ることとなった。そこで、私たち一家も泊まりがてら見に行くことにした。


弟は、獅子舞が大好きだ。愛している。太鼓を叩くし笛も吹く。獅子にもなる。そんなこんなでやっと獅子舞ができるものだから、彼は浮かれていた。弟が心から自慢できるものの一つが、獅子舞なのだ。数人に声をかけたらしく、獅子舞当日、弟の同級生だの同僚だのその彼女だのがやってきた。


ん?I子ちゃんは来ないのかな?仕事かな。


午後、どやどやと獅子舞メンバーがやってきた。弟もいる。やる気がみなぎっている。


賑やかに獅子舞は行われ、私たちも噛んでもらい、楽しく時間は過ぎた。泣くかと思われたやーやはきょとんとし、余裕さえ感じられた。やるな。獅子舞は程なく、次の家へと去って行った。I子ちゃんは来なかった。


夜だいぶ遅く、弟は帰ってきた。や否や、「今日のおれのできはどうだった?」と聞いてきたので、褒めてやった。嬉しげだ。I子ちゃんのことが気になったので、聞いてみた。誘わないはずがない。


私「I子ちゃん何でこなかったの?」


弟「I子ね、獅子怖いんだって」


I子・・・。幼稚園児かよ・・・。


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「ぜってーおかしいって!」と妹。まあ、私もその場で大笑いしてしまったけれど。そう言われた時の弟の心中を想像し、妹と盛り上がってしまった。


そして妹が首をひねって言うには、「男って、そういう女が好きなのかなー?」。どうだろう。好みもあるとは思うけど。


女は女の計算に敏感だ。そういえば、男の人に計算ってあるんだろうか。こう言えばかっこいい、とか。う~ん。いまいちピンとこない。所詮私も女だなあ。


やーや、やーやは変な女にひっかかっちゃだめよ。女の計算は怖いのよ。かといって、どんな人ならいいかと言われても困るんだけどさ。私みたいな?それはそれで困るわ。いろいろと。特に家事方面で。



ここ3日くらい、やーやがいろいろな発音で何かさかんに話している。前は「アー」とか「ダー」とか「ウー」が主だったけど。


よく言っているのは、「タイタイタイタイ・・・・」だ。なんだか「痛い痛い」と言っているようでちょっとドキッとしてしまう。んも~、やめてよ~。いじめてるみたいじゃないか~。どこからか覚えてきたのかな~?んも~。


「あのお宅、いつも痛い痛いって聞こえるけど、なんなのかしら?あら、まあ。」と、どこぞの家政婦さんに事件扱いされちゃうよ。


事件といえば。実はやーやが寝返りをしない。7日で7ヶ月になったのに。普通は5ヶ月くらいでできるらしいのにな。毎日、体を横に傾けて、あと少し力を入れればうつぶせになる、という体勢にしてみている。けれど、どんなにきわどい体勢からでも、ふんばって仰向けに戻ってしまう。脱力する母を前に、にやつく息子。


「何で仰向けに戻るんだよ~?」聞いてみた。


「ブッ、ブブブ(ツバを飛ばしている)」


どうやら言いたくないようだ。まあいい。言われてもどうせ分からない。


かくゆう私も、はいはいを全くしなかったらしい。なぜだ、私よ。自分のことでもわからないのに、他人のことが分かるわけないよね。ま、もうすぐ8ヶ月健診だからその時診てもらおう。


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お刺身を見るたび思い出すことがある。正確に言うと、刺身についている黄色い花を見るたび、だ。私は数年前まで、それはタンポポだと思っていた。


ある日、「なんで刺身にはタンポポがついてくるんだろう」と言ったところ、ひさりに「それは菊だ」と言われた時の衝撃は例えようがない。私の質問に答えたことにはならないのだけれど、その時はそれどころではなかった。


余談だけれど、その答えは図らずも去年知ることになった。


結婚式の試食会に出た時に、給仕さんが教えてくれた。なんでも、菊をちぎって好みで醤油に放し、刺身をいただくのだそうだ。試しにそうして食べてみたら、ほんのり菊の香りがして雅な感じ。


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私の妹も物事をよく間違う。印象深いのは、某生命保険のCMで、小田和正さんの「言葉にできない」が流れていた時。みんなで「いい曲だよね」としみじみしていたら、突然妹が歌いだした。


「フレッシュグッデ~イ フレッシュグッデ~イ♪」


一同の間に衝撃が走った。もちろん正しくは「うれしくて うれしくて♪」。


最近では、久々に会った弟の友達を見て一言、


「××君、赤茶けたんじゃない?」。


わかるだろうか。本当は「あかぬけた」と言いたかったと。間違っても、お店に来たお客さんに「赤茶けましたね」なんて言わないことを、姉は祈ってるよ。


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パパもしばしば小さな間違いをする。歌詞なんかはいつも違っている。印象深い間違いは、好きだった芸能人の話をした時。


パパはのりピーのファンだったらしい。何かのりピーのマネをしてみて、と頼んだら、


「うれしマンモス~」と言い出した。


本当にファンだったの?パパー。正しくは「マンモスうれぴー」。


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やーやが騒ぐので、おんぶして家事をすることにする。すると、束ねた髪をさっそく引っ張りだした。最近の彼の得意技だ。思わず


「痛い痛い痛い~!」


・・・あっ、これか!?

小さい頃になりたかったものに、なれた人ってどれくらいいるんだろう。それ以前に、目標がずっと変わらずそこに至ることってあるんだろうか。


実は、私の妹がそうである。


あの子は、確か幼稚園の頃から、「大きくなったら美容師になる」と言っていた。それはずっと変わることは無く、卒業時に作成されるアルバムに必ずある、‘‘将来、あなたは何になりたいですか?’’という項目には、小学校でも、中学校でも、高校でも、同じ職業が記入されている。高校卒業後は、希望通り理容美容専門学校へ進学し、今に至る。


それって、すごいことだよなあと、いつもしみじみ思う。自分にないものだから、余計にそう思ってしまうのかもしれないな。なにかひとつの事に向かって進む意志の強さ。私はB型のためか(世の中のB型の人ごめんなさい)、持続力がない。中間試験とか、そういう一週間くらいで終わるものならドーパミン全開で突っ走れるけれど(しかも一夜漬けタイプ)、長期戦はまるでだめだ。ていうより目標自体に飽きて、終わってしまう。なりたいものだって、習い事だって。


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昨年まで、私は非常勤の高校教師をしていた。けれど、それは夢っていうのとはまた違う。それ以外無かったからというのが一番近いかも。ちょっと消極的だけれど。先生になりたくて大学に入ったのではないし、教員免許を取ったのも、大学でなくては取れない資格を取っておこうと思ったから。でもなんやかんやで、大学卒業後はずっとその道で頑張ってきた。


ただ、ばくぜんとした夢・としては、結婚して子供を生んで、普通に仲良く幸せにくらしたいな、とは長年思ってきた。特にお金とか、地位とか、そんなのは無くていいから。すっからかん、は困るけども。


その点では、パパありがとうって感じ。やーやも、私達のところに生まれて来てくれて、ありがとう。これからもよろしくね。パパ早く風邪治してね。


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さて、仕事についての話になるけれど、美容師って仕事は、ハサミさえあればどこに行っても食って行けるからなあ。いいよなあ。私は個人的に、職人さんというのが大好きだ。仕事振りを見るたび、すごくわくわくする。たとえば、和菓子職人さんとか、宮大工さんとか、漆塗り屋さんとか。人の手ってすごいよな~。


だから、やーやにも将来は何かの職人さんになってほしいな。かっこいい~。でも、危ない場所での仕事だったら、「母が危ない仕事はダメだって言うから」って断るんだよ。あら、それってマザコンじゃないか。