第十ニ話 クエン、さん


「そうだったのか!」


ユーが、レンア国の王だなんて!と、ミウロが驚く。敵意は、未だユーに見えるからか湧いては来なかった。


どうしてこうなったのか、とすぐに思考が停止したが。


『アク王のクエン殿がどうしてまたこんな所に』護り鳥が顔をしかめて声を低くする。


「俺がか?そうだね、ちょっとした偵察みたいなものよ」


「この世界をどうするつもり?」


エルが少し怯えた様子で聞く。


「そうね。何でも開くのに苦労しない世界にしたいわね」


「ユー、じゃなかった。エルは、ユーの正体を知ってたのか?マヨマヨとか言ってたけど」


「いや、オイラは知らないよ?本当は、さらにマヨマヨって言ってみたかっただけだよ!」


「マヨマヨの魔法だ、これは」


クエン王のフリをしていたおじさんが口を挟む。ユーは、そうねぇと低い声色で唸る。


「ま、解けちゃった方よ。これ」


「そうなんだな。ところで、アル神がそのレンア国を問題視してたぞ?」


「あー、そんなこと知ってるわよ。アル神は、何でも開けるのに苦労していないといけない世界のままにしたいんじゃないかしら」


「どういうことだ」


クエンは、遠くを見る。風がそよぐ。雪が溶け、暖かい日差しの戻ったラウー国の中にあるこの森。クエンは、その森で何をどう開けるものがあるのかと少し思索した。


それは、不思議な夢のようなものだと考える。


開くとは、開けることなのだろうが。その動作は様々によるがゆえだ。


「あのぅ、クエン、さん?」


エルがオドオドと聞く。ここで注意しておくがクエン、さんは、クエン酸ではない。


そこにアル神がパッと現れた。


『クエン、さん、よ』


もう一度注意するが、クエン、さんは、クエン酸では((((


「なに、アルちゅーやつ」


『アル中ではない!アル神だ!』


「誰もアル中とは言ってないわよ?アル神さま」


「アル神様!クエンさんをどうにか止めないといけないんでしょ?」


元ユーの言葉をさえぎるかの如く、発言したエルの体温が上がる。緊張と嬉しいが混じる。

だが、この世界の行末も今のこの自分の一言で決まるような予感がしていた。


『そうだな、そのことだ。もう我から出向こうと思った次第だ』


 アル神は見守っているだけしかできないと言っていたことをミウロは思い出した。


ーーということはだ。それを覆すほどの何かが起きたのかもしれない。


『なんでも開くことに全力を捧げることは、いいが。

それよりその奥に何か目論みがないか、と思ったのだ』


 クエン、さんの肩がぴくりと動く。冷や汗が滝のように溢れ出る。


「そそそそそ、そんなことないソース!」


どこに売っている商品なのか。

訳のわからないセリフだ。書いておきながら(現実)。そして、くれぐれもソー〇〇スの言い間違いではない。


『我は、全てを見抜くぞ。もうやめてはどうだ。その全世界の人々の開けるものを全て我がものにするために、他国を攻撃するのは』


アル神が、クエンに詰め寄る。クエンは、土下座した。とてもあっけない。


「は、ははー!」


『クエン、よ。天罰を受けさせたくはないのだ。我も』


「すみませんでした!」


 クエンは、もう一度「ははー」と両腕をもう一度上げ下げした。



それから、レンア国のクエンは他国を攻撃するのをやめた。


こうして世界に平和が訪れ、ミウロたち、光の勇者の冒険はあっけなく幕を閉じた。