https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201903/CK2019031402000168.html
 

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 政府は十三日、インターネット上の違法ダウンロード規制を強化する著作権法改正案の今国会への提出を断念した。無断掲載された作品などのダウンロードを規制する対象を、現行の動画と音楽から全ての著作物に拡大する内容だったが、漫画家や出版業界から「表現行為を萎縮させる」などと反発が相次いだ。自民党は同日、関係部会の役員会で、提出は次期国会に先送りすることを決めた。 (坂田奈央、新開浩)

 自民党は改正案を、海賊版サイトに対する抑止効果があると評価しており、所管する文化庁に対し、著作権者らへの丁寧な説明を行い理解を得るよう求めた。文化庁は今後、改正案の内容を再検討する。柴山昌彦文部科学相は十三日、「国民の声を丁寧に聞きながら対応を検討する」と話した。

 党の関係部会は二月に改正案を一度は了承したが、今月一日の党総務会は、漫画家らから相次いだ異論を踏まえ了承を見送り、部会が検討し直していた。

 改正案は、違法ダウンロード規制の対象を、無断で掲載された漫画や雑誌、写真、論文などの「静止画」やゲームソフトなど有償の著作物すべてに拡大。スマートフォンで見ている画面を保存するスクリーンショットも、繰り返し継続的に行うなどの悪質な場合は規制対象となる内容だった。

 規制範囲の広さに対しては関係団体の懸念が拡大。日本漫画家協会は先月末、対象を「原作のまま、まるごと複製する行為」や繰り返しの複製などに狭めるよう求める声明を出した。

 同協会理事長の里中満智子さんは、本紙の取材に「網をかける範囲が広すぎて、悪気のない一般ユーザーが萎縮するのではないか。法律の拡大解釈も心配だ。海賊版業者の撲滅は必要なので、きめ細かな、誰も誤解しないような法案をまとめてほしい」と語った。

 神戸大大学院の前田健准教授(知的財産法)は「国会提出の見送りは当然。改正案は違法となる対象が広すぎて、国民の情報収集に支障がでる可能性もある。慎重に議論し直すべきだ」と指摘した。