大体話をしていると、何となく「この人はH目的だな・・・。」と

雰囲気で分かるものだが、

不思議とあっくんとは、そんな関係にはならないだろうと思っていた。


会話のなかに、下ネタもなく、手を触ってくるようなこともなかったし。


あとで聞いた話だが、あっくんはこの時点で、もうHがしたくてしたくて

たまらない状況だったらしい(笑)




この時あっくんに名刺をもらったが、うちから意外と近い会社だった。


○○営業所 所長    そんな肩書きが書いてあった。


「携帯番号も教えておくね。」


この時初めて番号を教えてもらったが、携帯の待ち受け画面には、

男の子がニッコリと笑っている写真・・・。


少し胸が痛んだ・・・。





本当にこの人なの? 何でこんな素敵な人が、チャットで出会う相手を探しているの?


私はなかなか信じられない気持ちで、彼の後についていった。



食事をすることになっていたのだが、すぐ近くの高層ビルのレストランに行った。

エレベーターの中でも、二人きり・・・というわけではないのにドキドキしていた。


レストランに入り、景色が良く見える、窓際のカウンター席に座った。


夜になれば、きっと夜景がキレイなんだろうな。


二人でアジアン料理を注文したが、はっきり言ってあんまり食べられなかった。


緊張はしていたが、何だか段々お喋りになってきている自分がいた。


こんなに素敵な彼が、私のことを相手にしてくれるはずがない・・・。


と思い始めていたから・・・。


だから友達に話すように、家庭のこと、趣味のこと、生活のこと、いろいろ喋った。


彼は優しく聞いてくれて、自分のことも私に話してくれた。


何だか初めて会ったような気がしない、不思議な人だった。


最初は、お兄ちゃんのような感覚だったかもしれない。



私たちは、ティファニー前で待ち合わせしていた。


私は早目に家を出て、とりあえず百貨店のトイレの中で着替えをした。

夫には、「少し買い物を・・・。」と言ってあるので、あまり洒落た格好で外出するのも不自然だと思い、

着替えをあらかじめ用意していたのだ。


今日は何だかとても清楚な格好。

好きな服を着て、香水をふる。


どんな人が来るかも分からないのに、精一杯お洒落をしている私がいた。


ティファニー前と言っても、どこの入り口・・・などという、詳しい待ち合わせ場所は決めていなかった。


しかも、私たちは最初お互いに警戒していて、携帯番号も交換していなかった。

もしうまくいかなければ、出会うこともなかったのだ。



とりあえず、ティファニーの辺りで、背筋を伸ばして待ってみる。

どこから誰が見ているか分からない。

私は緊張していた。


入り口から、少し離れたところに、背の高い男の人が一人・・・。


それらしい人はいないなぁ・・・。まさかあの人じゃないだろうし・・・。


画像では一度見ているが、一度きりなのでイマイチ分からない。



私はその男の人を、見て見ないふりした。


浅黒く日焼けし、とても男前な彼だったので、まさかと思ったのだ。


あんな人が待ち合わせ場所に来るはずがない。きっと彼女か何かと待ち合わせしているんだよね。

私ってば、普通のマトモな人と会いたい!って言っておきながら、図々しいぞ!


と思いながら、私は来るはずであろう人を探した。



そのうちに、浅黒い彼がチラチラコチラを見ながら近づいてきた。


よっぽど近くまで来た時に、初めて目を合わせた。


「あの・・・待ち合わせの・・・。」


「はい・・・。」


これが私たちの出会いだった。

会話で意気投合してくると、今度会ってみない?という話題になってくる。


大体いつものパターンなのだが・・・。


私は、ノッポのことは記憶から消し去り、とにかくマトモな人に会いたかったので、


「お茶だけなら・・・。」


と言って快諾した。長い愚痴もいっぱい聞いてくれたし。


突然あっくんが、


「画像持ってない?」



と言う。


画像は絶対人に送らないようにしているので、一枚も無い、と答えた。


コチラが送らないので、あっくんも送ってくれないと思っていたら、

あっくんは案外あっさりと送ってくれた。


今では、その場だけ画像を特定の人だけに送って、すぐに消してしまうことも出来るので、

その点は便利なのだ。


え?この人!?


あっくんから送られてきた画像を見て、一瞬ビックリした。


何だかとてもイケメンで素敵な人で、普通にモテそうな人だったからだ。


こんな人でもチャットするんだな・・・。


一瞬画像を見ただけですぐに削除されてしまったので、

その場限りだったが、私はドキドキしていた。


実物と画像が違うことって良くあるし、期待し過ぎちゃいけないよね(^_^;)


そう自分に言い聞かせながらも、私たちは会う約束をしていた。


女の人がチャットルームに入っていると、

男の人から次々に声がかかってくる。


その夜も何人かから声をかけられたが、私はその中の一人とお喋りすることに決めた。


それが、あっくんだった。


あっくんは、基本的なことは聞いてきたが、Hなことは何も話題に出さなかった。

そのことがとても珍しかった。


年齢は35歳で、家族は奥さんと子供が一人、家も職場も私の家から、遠すぎず、近すぎず・・・と

言った情報を、会話の中から聞き出した。


私はとにかく今日あった出来事を聞いてほしかったので、

早速そのことを話題にした。


「今日、男の人と会ったんだけど、本当に強烈な人だったの。」

「どんな人~?」

「歯が無くて、ワキガで、とにかく不潔だった。43歳って言ってたけど、もっと上だと思う(>_<)」

「すごいねぇ。」

「しかも、ケンタッキーでおごらされたの・・・。」

「・・・・・。」


とにかくその日ノッポと会ったことを全部聞いてもらって、私はとても気分がスッキリした。

あっくんも、「そんな人がいるんだね~。」と、ビックリしていた。


私たちは、会話の中だけで、既にとても意気投合していた・・・。

何だかひどく疲れてしまった・・・。


5年ぶりに男の人に会って、普通にお喋りして帰るつもりだったが、

まさかああいうタイプの人が来るとは・・・。


お洒落した自分がバカバカしかった。


一体何しに行ったんだろう?おごらされてるし・・・。


私は、自分にノッポのにおいがうつっていないか、とても気になって、

自分の洋服のにおいを、クンクン嗅いでみた。


何とか大丈夫・・・(>_<)


とにかく忘れたい一日だった。



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その日の夜、私はいつものようにパソコンに向かっていた。


案の定、ノッポからメッセージが届いている。


「とても気に入っちゃったから、また会ってよ。」


・・・。返事は出さなかった。


とにかく今日の話を、誰か別の、マトモな人、普通の人に聞いてほしかった。

こんな人に会ったんだよ!こんなことされたんだよ!って。

もちろん夫に話せるはずもなく・・・(・・;)


私は、チャットで話を聞いてくれる人を探し始めた。


その時出会った人を、まさかこんなに好きになるだなんて、この時は思ってもみなかった・・・。






とりあえずお茶だけ・・・と言ってあったので、私たちはすぐ近くの

「ケンタッキー」に入ることにした。


はっきり言って、もう帰りたくてたまらなかった。


「じゃあ、遅れて来たから、ナナちゃんのおごりねっ♪」


は?


目を丸くしている私に向かって、


「俺、コーラとチキンね。」


だなんて言っている。


その後も席を立とうとしないので、さっさと帰ろうと思い、私は10歳も年上のその人におごったのだ!


「ナナちゃん本当に32歳?」

「25歳くらいにも見えるよ~。」


なんて一人で喋っているが、帰りたくてたまらなかった。


ケンタッキーにいる他のお客さんたちの視線が気になる。


この二人、一体どういう関係なんだろう??


そんな好奇心の眼差しが、思い切り私たちに向けられていた。


それに、何と行ってもノッポの体臭がキツく、みんなコチラを見て見ぬふりするのだ。


「時間が無いから・・・。」


と言って、早々に帰ろうとすると、ノッポはTシャツの上から、

私の胸を触って来たのだ。


最初から嫌らしい視線でジロジロ見ていたが、ケンタッキーなら・・・と思って油断していた。


「柔らかいね~。久しぶり♪」


なんて言って、ニタニタしている。


「また連絡ちょうだいよ。」


私は、この人にはもう絶対、一生会わないと思いながら、散々な思いで逃げ帰って来た。

その人はいかにも危なそうな人だった。


43歳って言ってたけど、明らかにもっと上でしょ?


一回通り過ぎて、駅の売店に立ち寄り、本気で帰ろうかとも思った。

でももしかしたら人違いかもしれないし・・・。


とりあえず、近くの公衆電話から携帯に電話してみることにした。


トゥルルル・・・・


「はい。」


遅れたせいなのか、とても不機嫌そうにその人は出た。


「あの・・・ナナですけど。遅くなってすみません。今着きました。」

「今どこ?」

「改札口近くの公衆電話からです。」

「じゃー行くわ。」


あの人じゃありませんように・・・祈る気持ちで待っていたら、

例のノッポがこちらに近づいて来る。


「あの・・・ナナちゃん?」


「はい・・・。」


ニッと笑った口元に目を向けると、前歯がほとんど全部無い・・・。

喋る度に、歯の隙間から空気が漏れて、ヒューヒュー言っている。


そして何と言っても強烈だったのが、そのノッポは、どれだけ離れていても分かるほどの、

ワキガの持ち主だったのだ。

その日ワタシは、5年振りに男の人と会う約束をしていた。

43歳・既婚の人だ。

10歳年上・・・許せる範囲。


5年振り・・・

さすがに緊張していた。

身支度に時間がかかってしまい、遅れ気味だった。


今まで何人もの男の人に会って来たが、特別、どうしようもなく怪しい人には出会わなかった。

いま考えてみたら、運が良かったとしか、言いようがない。


待ち合わせ場所は、とある駅の改札口。

着いたらとりあえず私が携帯に電話する・・・という手筈になっていた。


「背が高いから、すぐに分かると思うよ。」


数日前のチャットで、そんなことを言われていたので、

改札口付近で、とりあえず背の高い男の人を探してみる。

いつもドキドキする瞬間だ。




いた!!!


一際目を引く、ノッポでひょろ長い男の人が、改札口でどこか一点を見つめて、

腕組みをして待っている。


きっと彼だ!



直感的に悟ったが、目を反らして、あの人じゃないよねぇ?きっと違うよねぇ?と、

認めたくない自分がいた・・・。





2週間ほど前の、夜のことだった。


私はごく最近またやり始めたチャットの中で、彼と出会った。


いや、まだ会話だけのやりとりの世界だったので、実際出会うことになろうとも、

その時はあまり思っていなかったかもしれない。

ただの会話だけで終わる人も、もちろん何人もいる。

結局チャットでの出会いだなんて、お互いのタイミングが合うかどうかだ。


私は専業主婦をしているが、夫とは四六時中一緒・・・。

子供がいないのでまだ時間は取れるが、それでも一人で自由に動ける時間は、

ごくごく限られていた。


最初の出会いはタイミングが合う人とでないと、出会うことさえ出来ない。


その時の私は、とにかく無性に誰かに会いたかった。

とにかくマトモな人に・・・。

マトモなら誰でも良かった。

2,3日前に会った人が、とんでもなくマトモでない人だったから・・・。