(恋のTOP便つづき)
秋になり、わたしは同棲中の恋人と、
あることが原因で距離をおくことになった。
佐川急便の彼は相変わらず元気で、
見ているだけでこっちまで元気になれる気がした。
彼には、人を惹きつける何かがあったのだ。
受付嬢は仕事柄、おもしろいお客さんの話をわたしによく教えてくれる。
中でも、集荷の際に彼が残していく台詞がおもしろく、
その話をきくたびに、わたしも彼と喋れるようになりたいと思った。
そんなある日、わたしは突然何かに導かれるように、
受付嬢へ「彼に『ファンです』って伝えといて!」と頼んだ。
実際、この気持ちが恋なのかどうかはわからなかったが、
それでも、なぜか「今言わないといけない」と思ったのだ。
このふとした出来事がわたしの生活を、
もっと大きく言えば人生を変えたのである。
数日後、心優しい彼女はちゃんと彼に伝えてくれたらしく、
わたしに小さなメモを渡してくれた。
そこには彼の字で、携帯のメールアドレスが書かれていた。
大胆なわりには、へんなところで小心者になるわたしのことである。
どんなメールを送ればいいのかまったくわからず、
結局、彼にメールを送ったのはそれから一ヶ月後だった。
メールは、もっぱらお互いの自己紹介ばかりだった。
しかしある日、「俺に荷物頼んだときのこと覚えてる?覚えてないやろなー?」
というメールが入った。
そして、6月のあの日、わたしに一目ぼれをしたのだということを教えてくれた。
それまでは、仕事中まわりの人の顔をあまり見ないので、
わたしのことにも気づいていなかったらしい。
あの日から何度も話しかけようとしたが、
強烈なキャラにわたしが引くと思い、なかなか声をかけられなかったという。
そこでわたしは、初めて彼の気持ちを知ったのである。
嬉しくて眩暈がしそうだった。
年末の繁忙期にもかかわらず、彼は朝から晩までメールをくれた。
彼を知れば知るほど、彼への想いがどんどん強くなり、
距離をおいていた恋人には、好きな人ができたということを伝えてお別れをした。
佐川急便の彼との出会いがなければ、わたしたちはまだどうにか関係を修復しようと
努力をしていたかもしれない。
しかし二人の未来には、大きな問題が山積みだったのだ。
7年間いっしょにいた恋人だったが、もう未練などはなかった。
それからわたしたちは、忙しい合間を縫って、会社帰りに会うようになった。
彼は集荷の途中なので、たった数分会って話すだけだったが、
何よりも「ちょっとでも会いたいねん!」という彼の言葉が
わたしを嬉しくさせたのだった。
こうして、彼とわたしの恋が始まったのである。