展覧会に携わる仕事をした時、
具合の悪くなったお客様の対応をしたことがあった。
六十代のご婦人で、娘さんと思われる女性が同伴していた。
二人は嫁姑の関係だということだった。
救護室で様子をみている間、
義娘さんはお義母さんの手を握りながら、わたしにそっと言った。
「お義母さんには、自信を失くしてほしくないんです。
今でもいろんな所に一人で出掛けて行くの。
だから、いつまでもそんな風に
積極的に楽しんで暮らしてほしいから。」
自信を失くしてほしくない…
その言葉は、義娘さんの気持ちを痛いほど表していた。
心に強く響いた。衝撃に近かった。
もう何年も前のことなのに、
絆について考えるとき、いつもその時のことを思い出す。
本物の思い遣りと愛する気持ちは、
血の繋がりをも超えるのだと思った。