旧東ドイツの人
海外こぼれ話

 土産物箱をひっくり返したらBerlin Wallの入った紙箱が
出てきた。

 あの年の暮か次の年に出張した友人からもらったお土産だ。
紙箱には、かっては東西を分ける象徴が、いまや自由を
勝ち取った誇りの象徴だとのようなことが書いてある。

 蓋をあけるとその歴史が書かれた紙片とえんじ色の巾着袋が
入っている。
中に3cmほどのコンクリート破片が入っている。

 89年11月、壁の上に乗って壁をハンマーで砕く映像が
繰り返し流された。
ベトナム統一から方向も違い時間もかかったがドイツも統一
かと、感動的にそのニュース映像を見た。

 その砕かれた欠片が私の手元にあるのだ。

 その後、次々に冷たい壁は取り除かれ東欧諸国は独立
していった。
劇的な時代であったのだ。

 2000年代に入って、独国の某有名通信メーカーとJVで
仕事をする機会があった。
2、3年一緒に仕事をして、節目々に親睦会を重ね、それなりに
チーム個々人に親密な関係もできた内々の打ち上げ会のとき。

 東西ドイツの融合は企業内ではどのように進んだとかの話に
なった。
チームメイトが、「統一前の東ドイツの生活はどのようなもの
だったのか知っている」と聞いてた。

 それまでそんな話はしなかったので知らなかったが、なんと
JV先のチームリーダーが旧東ドイツ人だった。

 彼は、ことば少なに「ひと言でいうならば」といった言葉は
重かった。

 曰く、
「子供が生まれて車が欲しいと思った。購入の申請をした。
車が手に入ったのは、子供が二十を迎えたときだった。
こんな世界さ」と。

 その後は、また愉快な話題で魚・アスパラでワインを楽しんだ
・・・。