関東鉄道事故・そのとき(2)
私の住む町

 アルゼンチンでも同様の列車事故が発生したようだ。
列車衝突事故のリスク回避は、1両目に乗らないこと。
過去の事故事例から前の車両の被害が桁違い高い。
「1両目に乗らないこと」は、わが家の家訓にしてある。

 あまりにもタイミングが良いというのか、悪いというのか、
同様の列車事故に脱線した。

 さて、続きである。


 ・・・・・・

 しばらく気を失っていたように思う。
激突した瞬間の記憶はない。

 気が付くと床に転がっていた。
社内外とも「しーん」として暗かった。

 まず、音が聞こえてきたように思う。
ガサコソと人の気配の音やシューという音がかすかに
聞こえてきた。

 次に薄明りの中、乗っている列車は前上がりの斜めに
なっていた。
ドアが斜めにブラブラして開いているのが見えた。

 次に油の匂いがした、「危ない」と思った。
電車から出よう、ブラブラしているドアを押し開け飛び
降りた。
そこには商品棚がありカバンが並んでいた。
「駅ビルに突っ込んだようだ」と思った。

 天井のスプリンクラーから水がしたたり落ちてきていた。

 相変わらず油の強い匂いがする。
「逃げなきゃ、外に出なきゃ」。
明るく見えた方に向かった、何人かがついてくる。
明るく見えたのは大きな鏡、「違うこっちじゃない」と
叫んだ。

 別の方で「こっちだ」との声がした。
エスカレータが見え、エスカレータを登り外に出た。

 駅ビルの外に出て手の甲から少し血が出ているのに気が
付いた。
スーツ・鞄・靴がぐっしょりとしている、「これでは会社に
行けないな」と思った。
公衆電話から家と会社に電話を入れた。

 そうこうしているうちに、負傷者は駅の西口出口に誘導
された。
救急車がひっきりなしにやって来て、負傷者を運んでいる。
順番が来て、近くの病院に収容された。

 ここまで、あっという間の出来事であり、パニック状態の
中にいた。