琵琶湖のおもいで18
なまずは食えない

 ナマズを釣り上げたことがある。
釣れてしまったというのが正しい。

 鯉の投げ込み釣りをしていたときだった。
鈴がチロチロと鳴った程の弱々しい引きに続き糸がだらんとゆるんだ。
竿を抜き取り、リールを巻く。
何かがかかっている気配はあるが、獲物からの引きがほとんど
ない。藻かゴミにでも引っかけてしまったような感覚だった。

 どんどん巻いて岸に黒い物体が寄ってきた、見ると30cm程
のナマズであった。
ナマズもまさか、釣られるとは思っていなかったのだろう、
引きのない不思議な感覚の釣りだったとの記憶が残っている。

 釣り上げたナマズは、ナマズが好きな親戚のおじさんに届けた。
「蒲焼にして食うと旨いでぇ」と喜ばれた。
我が家では、ナマズは食わなかった。

 ところで、なまずのつぶやきのナマズの由来である。
私の氏名のひらがな書き全7文字の最初、真ん中、最後の字を綴ると
「なまず」となる。

 気が付いたのは、中学の美術の授業のときだった。自分の店を
持ったときとの想定で、屋号(商標)とそのデザインを考えるとの
課題があった。
そのとき、屋号の一案として、ひねり出したものだ。
そのとき以来、密かに使ってきた。

 私はナマズを食ったことがない。
これからも食うことはないだろう。