梅の花の散りゆく時期になると必ず思うことがある。
土に散り落ちた花は、散ってのち朽ちてゆく姿までも美しいと。
K様宅のお庭もまた、そう。



特に紅梅の深い紅色は、苔むす土に鮮やかに映える。

初めてそれに気づいたのは何年か前の鎌倉の旅。東慶寺の境内を散策した時だった。
ちょうど今の時期で、桜にはまだ早い。梅が咲き終え、ざわめく竹林と草木が息づく素敵な場所だった。
そこで紅梅の、既に咲き終えて土と苔の絨毯にそっと撒かれた姿が鮮やかに目に飛び込んできた。



花びらが、本来、自然の中であるべき、最後の姿とはかくも美しいものかと。




アスファルトで舗装された道路に散る花びらの最後、茶色く変色し、ドロドロと排水口付近に溜まる姿のなんと悲しいことか。樹木は…、土の土地にあってこそ本来の姿で。
例えば、桜並木に綺麗とはしゃぐ現代人は、その桜の表面のほんの一部だけしか見れていないのだろう。

道路の街路樹の桜が、ちょっと悲しく見える、近年の私なのでした。





土、苔、花。