マイノリティ・レポート
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さぼり

はぁ・・・やっと追試が終わった。。。
補講2週間はエグイ。もう勉強なんて嫌だ・・・。

って事で日記再開です。(^^)v

言えなかった普通の言葉

2005年2月25日

今日は久しぶりに学校へ行った。
用件は後輩へ部活運営に関する引継ぎだ。
俺は久しぶりの学校に喜んでいた。
久しぶりすぎて学校までの道のりがいつもより長く感じた。
やはり、考えてしまう。アイツ居るかな・・・と。

学校へ着くと俺はまず先にいつもの場所へ行く。
2号館前のいつもの場所。
タバコを吸って久しぶりの学校の空気を味わう。
たった15日間来なかっただけでこれだけ懐かしく感じる。
今までどれだけ頻繁に来ていたのかよく分かった。

そんな俺に後輩から連絡があった。この後輩は約束をしていた後輩ではない奴で、俺が学校に来ると言ったら、用事があるわけでもないのに、「あっ、じゃあ私も行きます!」っと言ってきた後輩だった。部室で暇をしているらしく、俺に来いという。
しばらくタバコを吸って、部室へ行く。
見慣れたはずの部屋、なのに全てが懐かしく思える。

そこには後輩が一人で待っていた。
俺はバイト先から貰ってきたご飯を食べながら談笑していた。
その後、約束していた後輩に連絡してみると、
「すみません・・・寝てました。」と。その時点で2時過ぎ。
後輩が5時からバイトだと言うので引継ぎは違う日にすることになった。

俺は学校に来た理由をなくしてしまった。

もう一人の後輩と遊んでみる。
でも、やっぱりアイツの事が気になる。

そこに友人Mが来た。学校へ来る途中、メールで「デートしよか?」と送ってて、それに応えてくれたようだった。
3人になった。3時を過ぎて3人でまだ少し寒い外へタバコを吸いに行く。
そこは良く人が通るところで、行きかう人の中にたまに知り合いが居る。
それがなんだか嬉しかった。

そこで30分ほど話し込んでいると、学食からアイツが出てきた。
こっちに気付いた様子でこっちに歩いてきた。

「あー。来てもうた。どないしよ。。。」
それが俺の心情だった。
会う前は「一目でもいいから会いたいな。」っと思っていたのに。

アイツはMと楽しそうに話している。

俺が見たくない光景だった。

そう思う自分も嫌いだ。

アイツとは一切視線を合わさないようにしていた。
それが俺のできる精一杯の行動だった。
俺は持っていた携帯の動画を見ている最中だった。
それを俺以外の3人で見回していた。
最後にアイツが見て、携帯をどうしようか迷っている。
俺はなかなか手を伸ばす事ができなかった。
アイツを見るのが怖かった。
やっとの思いで俺は手を出す。
それに気付いたアイツは少し笑い俺に携帯を渡す。
完全に俺だけがバカみたいに思えた。

その後、俺は沈黙になりタバコを吸うことだけに集中していた。
後輩が席をはずす。その時点でアイツとM、俺だけになる。
俺は俺を隠してくれる最後の壁が消えたようで、余計に居づらくなった。
アイツとMは相変わらず楽しそうに話している。
俺はもう見たくなかった。嫉妬している自分も見たくなかった。

後輩が戻り、俺は自分を少し取り戻した。
話に区切りがついた頃、広場で遊ぼうという流れになった。
俺は後輩やMとだけ喋りながら不自然な会話を続けていた。
アイツは完全に気付いている、、、俺がまだ喋れないことを。
でも、アイツは何一つかわらない態度で振舞っている。
たまに俺に会話を振るときだけを除いては。
俺の発言に突っ込みをいれるアイツの口調だけは変に遠慮しいて不自然だった。

後輩は遊具を取りに行き、また3人が残された。
するとすぐに、俺は広場へ行前にタバコを買いにコンビにまで行くと告げてその場から逃げた。その後ろをアイツらの声がついてくる。
どうやらアイツらもコンビニへ行くようだ。
10m後ろから聞こえる笑い声。そのまま走りたくなった。
曲がり角を曲がった瞬間俺は走っていた。
そのまま、学内のコンビニ横のトイレへ駆け込む。
鏡に映る自分。本当に情けなく、カッコ悪かった。
鏡の中の自分に言い聞かせた。
「普通に喋れよ。」「また逆戻りかよ。」「少しは成長しろよ。」
そこには嫌いな自分に渇を入れる自分が居た。
威勢良くトイレを出て、コンビニへ行く。アイツらが先に店内にいた。

でも、俺にはできなかった。
二人の顔をほとんど見ないまま、俺は自分の買い物だけを済ませ外に出た。
そこにMの声が響く。
「T(俺の名前)まてやー」
「後輩が先に返ってきて誰もおらんかったら可哀想やろ!」
なんて、その場で思いついた言い訳を言って俺は走った。

俺は元の場所に戻りまたタバコを吸い始める。今日、2箱目だった。

少しすると落ち着き、後輩が来る。そこで、俺は自分をごまかすようにおどけて、笑っていた。少ししてアイツらも来た。また、楽しそうな声とともに。

広場には誰も居なくて、時折、授業を終えた留学生が通るくらいだった。
広場でも俺はアイツを見れなかった。
アイツがボールを持つと俺の体は自然と違う方向へむいていた。
アイツからボールをもらうのがなぜか嫌だった。

1時間半はあっという間に過ぎた。
日は傾き、俺らは帰り始めた。
部室の建物に入る前に少し立ち止まる。
他愛のない話をはじめる。
Mは先に戻った。
アイツは話もそこまでしないのに、なかなか戻らない。
俺は後輩と喋っていないと不安になる。
後輩は気付くわけもなく、楽しそうに話を続ける。
アイツと俺だけ変な空気だったのは確かだった。
無駄な時間ということに気付いた後輩は戻ろうといった。
俺はそれに従い、建物の中に入る。
ちょうど階段のところまで来て、俺と後輩は普通のように部室へ戻る為、階段を上っていった。でも、その後ろにアイツの姿はなかった。アイツはアイツの居場所へ戻っていった。

「バイバイ」とか一言の挨拶もないまま別れた。言えなかった。
アイツが部室へは戻らない、階段を上らないと分かっていたのに。
後ろに居たアイツがそのまま通り過ぎていくのに気付いていたのに。
俺は何も言えなかった。ただの別れの挨拶すらも。

俺は部室に戻ると抜け殻のようになっていた。

1時間ほどして帰宅の支度をする。その時、もう6時半を過ぎていた。
後輩と別れた俺は帰る途中、またいつものタバコを吸う場所にいた。
そこで気付けば30分もタバコを吸っていた。
俺が来た方向をずっと見ながらアイツが来るのを待っていた。
来るはずもないのに。

バカだと気付くまでに、諦めがつくまでに手は寒さでかじかんでいた。

電車待ちの上りのホーム、下りのホームをまた見ている。
タバコをふかしながらいつものように見ていた。

俺は、、、

ただ、気を引きたかっただけなのかもしれない。
俺の気持ちを悟って欲しかっただけなのかもしれない。
いつもの様に優しい言葉を掛けて欲しかっただけなのかもしれない。

情けない自分だけが上りのホームに居た。

いつまで経っても俺だけ成長できてない...

カミングアウトまでの思い

2003年7月下旬

俺は迷っていた。
アイツに俺の事を言おうか、言わないでおくのか。

最近、会うと良く聞かれる。
「俺ばっかずるいわーお前のも聞かせろよ。」
そんな言葉に俺は
「時間が来ればゆーよ。いえたらな。俺のは重いぞー」
なんて笑いながら言ってた。

俺は今の今まで誰にも言ったことのない自分の事を、
言えるのか不安だった。一生、誰にも言うつもりはなかったから。
このまま言わなかったら、俺らの関係もこれ以上深くなることはない。
そうも思っていた。
心配になりアイツに聞いてみた。
「やっぱ、俺の言った方がいいよな?」
いつもとは違う態度の俺に何か感じ取ったのか、それ以降アイツは、
「言える時が来たらでええよ。楽しみにしてるな。」
なんて笑顔でかえしてくる。反則だ。。。

俺は相当悩んでいた。

カミングアウトするのは怖い。でも、アイツなら受け止めてくれる。
優しくしてくれる。俺の事、嫌ったりしない。
そんな気がしていた。

独り言

「ランキング」って気にせんとこうと思っても、なーんか気になりますよね。
これ以上、上がることもないでしょうけど。。。笑
上がったら上がったで、知り合いに見つかりそうで怖い気もします。

あと、カテゴリー「過去」の話は全て思い出して書いているので、
曖昧な部分多々あります。言葉とかは記憶に限りなく近いようにと書いてます。2004年になれば日記参考にしながら書けるから楽になるぞー。

あと、変な書き方してますけど、ノンフィクションです。

散歩

2003年7月初旬

ただ好きな人を知っただけでどこまで仲良くなれるんや?
と、思う人もいるかもしれないけど、それはアイツの性格に関係してくる。

アイツはもともと恋愛とは無縁の人間で、今まで付き合ってきた人はいなく、
好きになった人も中学にいただけという、本当に野球一筋で今まできたらしい。
だからそれを恥ずかしいしやかっこ悪いと思いっていたらしく、
恋愛を他人に相談するということは今まで皆無だったようだ。

6月の飲み会の後日、アイツがこう言っていた。

「俺、こんなん人にゆーの初めてやしほんま誰にもゆわんといてや。」と。

でも、人に言えたのが嬉しいらしく、いっつも嬉しそうに俺に言ってきた。

そうして、それ以降、この話をネタに良く喋っていた。たまに、俺がアイツをからかったりして、どんどん仲良くなっていった。
アイツはみんなから好かれていて、人気がある人柄だったから、
俺は俺しか知らないという事に優越感を覚えていた。
それだけで嬉しかった。

ひとつ人にはあまり言わない自分の事を俺に言えたアイツは、
俺にだけ良く自分の事を喋るようになっていった。
それにつれて俺は余計にアイツの事を好きになっていく。

この時点で俺の好きになったら駄目だというストッパーは完全に外れていた。

アイツと二人で居る時間が次第に増えていく。

そんなある日、いつもの様に部室に行くと何人かいる部員の中にいつもの様にアイツが居た。

「K(アイツの名前)、ちょっとはなしに散歩しよっか。」
っと笑いながら言ってみる。
返事は分かっていた。
「おう。ええよ。」

部室を出た俺らは手ぶらで日差しの強い学内の広場へ行った。
その日は気持ちいいぐらい空が真っ青でたまに見える雲が夏を感じさせた。

芝生の上に二人して腰を下ろす。

「あぁーーー」っとアイツは背伸びしている。

そんなアイツの横に居るだけで本当に幸せだった。
すらっとした背筋、きりっとした目、坊主頭。
そんなアイツの姿によく見とれてしまう。

不意に「なん?」
っと笑いながらたずねられた。
俺はしまった。っと思い「なんでもないわ。」
っとごまかす。

鈍感なアイツが気付くはずもなく、俺はごまかす為に話をふった。
「で、最近どう?」
最近は毎日の様に喋っているから変化があるはずもないのに、、、
ただ、部室で少し元気がなかったアイツを見ていてそう聞いてみた。
アイツは少し黙って、話し始めた。

「実はな、今朝の4時頃にばーちゃんが倒れてん。」
これにはビックリした。というより、次の言葉に迷った。
俺:「まじで?ばーちゃん大丈夫なんか?」
K:「すぐ退院できるらしく大丈夫みたいやけど、めっちゃ元気やったばーちゃんが倒れたんが信じられんくてな。」

表情はいつもとは違って少し曇っていた。今までに見た事ないアイツだった。
元気が取り柄のアイツがこうだと、俺まで沈んでしまう。
俺は何を言ったらいいのかわからなくなって、
「そか。はよ帰ってお見舞いいけよ!ばーちゃん入れ歯なくて困ってるで。」
っと言ってみた。
その頃の俺とアイツの間でよく、アイツのばーちゃんの入れ歯のネタが流行っていたからだ。

アイツは笑いながら、「もう持って行ってるわ!」と元気に返してきた。

その後、俺はアイツの元気を取り戻そうと色々笑わせようとした。
アイツはそんな俺の気持ちを汲んでか、ずっと笑ってくれていた。

あっという間に2時間ほどの長い散歩が終わった。

俺はその日からアイツが大好きな空を良く眺めるようになった。

友達の始まり

2003年6月

全てはここから始まった。

6月のある日、確か金曜日だったと思う。
アイツと俺を含め、同じ部活の5人で飲もうという事になった。酒に目がない俺は、誘われるがまま飲み会に参加した。それと同時にアイツとの初めての飲み会に心が躍っていた。そしてメンツの中の1人、ユウスケの家へと行く。そこはもう今までに何度も来ている家で、勝手も良かった。コンビニでありったけの酒を買い、ウォッカや焼酎など、度数の高いものが目立っていた。

そして、飲み会スタート。

開始30分で友人Mが脱落。爆睡モードに入った。
残るは女の子1人とユウスケと俺、そしてアイツ。
唯一の女の子は酔って、あまり言葉を発しなくなっていて、横になりながら俺たちの話を聞いているだけだった。
アイツは酒に強く、ペースが速い割りにあまり酔っている気配はなかった。
俺もテンションは上がっているものの、まだ問題なし。
ユウスケは弱く、酔っ払っていつもと違う人間のようになっていて、それをネタに男3人で相当盛り上がっていた。

そして、飲み会が始まって3時間ほど経った頃、俺が酔った勢いでアイツには普段しない恋愛の話をふってみた。しかも出だしがこうだ。
「俺、K(あいつの名前)の好きな奴だいたい分かるで。」っと。
そしたら、アイツが「えっ?誰ー?」っと聞きなおしてきた。
俺は検討もつかないくせに、気を引きたいが為に言ってしまっていた。俺はまずい。と思い、「ここでゆってえーの?」っと自分が言わなくてすむように運んだつもりが、「よしっ。こっちこいやー」っと玄関の方へ物凄い力で手を引っ張られて行った。
アイツよりか体重の重い俺がいとも簡単に引きづられていったから驚きだった。
玄関まで引っ張られた俺に、あいつは小声で、俺に相当顔を近づけ、酔ったせいなのか、照れているのか、顔を少し赤らめながら、「だれ?」っと聞いてきた。
俺は近づいてきたアイツに顔をまともに見れないくらい恥ずかしくなってその場を逃げようとすると、それを阻止するよう壁際まで追い込まれ上から覆いかぶさる様にして逃げれないように手まで握って問い詰められた。嬉しいのと恥ずかしいのでいっぱいで今でも良く覚えている。
もともと全く検討がつかなかったとは言え、ここまでくれば何か言わないといけないと思い、酔いが回っている頭で必死に考えた。そこでちょうどその前日、部活の女友達が言っていた言葉が出てきた。
「K(アイツ)ってHの事が好きなんかなぁ?なんとなくそんな感じじゃない?」と。俺は即座にこれに頼ることにした。

俺:「Hやろ?」
K:「・・・。」
俺:「ほぅ。図星か。」

内心、なんて分かりやすい奴だと思った。
ここで余裕が出て形勢逆転。俺が問い詰める方になった。

俺:「そうなんやろ?」
K:「・・・ぅ・・。」
俺:「「うん」やんな?な?」

なかなかハッキリと「うん」と言わないアイツに俺は延々と繰り返し聞いていた。余裕が出てきてから俺は心臓が早くなっていて、なんか胸と頭がカーっと熱くなっている事に気付いた。「やっぱ、女が好きなんやなぁ。」っと、分かっていた事なのに、悲しかった。泣きそうだった。

5分ぐらい問い詰めた後、ようやく「そうや。誰にもゆーなよっ!誰かにゆーたら本気でしばくしな。」と照れながら笑いながら返してきた。「誰にもいわんって」っと今の自分の気持ちを隠すために必死で笑いながら言う。それが嘘くさく見えたのか、「ほんまけぇ?」と何度も聞きなおしてくる。
その間も終始、手は握ったまま。俺はこの時間が続いて欲しいと願いながら、いたづらに笑いながら「大丈夫やって。誰にもいわんって」っと繰り返していた。

そしてその後、どんなけ真剣な顔をして言っても信じないアイツにいい加減、しんどくなってきた俺は、いきなりアイツに抱きついた。

ハグしながら「信じろや。」っと一言だけつぶやいた。アイツは今までの威勢を失って「おぅ。」っとだけ言った。

6月も下旬、Tシャツ一枚のアイツの体温は高く少し汗ばんでいた。酒のせいか好きな奴に抱きついているせいか、俺の脈拍はパンクしそうなくらい早くなっていて、少し後ろめたさも感じながら俺はその時間に酔っていた。

腕をといて自由になった手をアイツは俺の肩にのせて、飲み会の部屋に戻って行った。

今でも、あの体温は忘れられない。

この事から俺らは仲良くなっていた。

アイツ

2003年5月

5月のはじめ、俺の生活といえば部活で相変わらず忙しかった。そして、ますますアイツのことが好きになっていった。アイツは話せば話すほどおもしろくて、でも、自分の事を話すのは苦手で、それを話させようと俺は毎日、部室に行きがんばっていた。そんな日々が続いていた。

アイツは小学校から野球をしていて、ずっと丸坊主で、年中焼けていて、背丈は185ほどあって、横に並ぶと少し見上げる感じだ。すらっとしていて、でも、見た目よりはいい体格をしている。服装は白色のさわやかな感じの服しか着ず、あまり、最近の若者とは無縁な感じだ。
そんなアイツがよく口にするのは家族の話、ばーちゃんと畑に行ったとか、一緒にジョギングしてきたとか、たまに地元の友達とやっている草野球チームで試合をしてきたとか、チームメイトの話とか、俺には全く関係のない話を遠慮もなく笑顔でしてくる。そこであった面白い話を俺が共感できるはずもないのに、楽しそうに言ってくる。俺は、それがとてつもなく可愛いく見え、それに笑顔がほころんでしまう。優しい目をしていて、そんなことでも、なんでも許せてしまう。地元は大阪市内で、大阪市内で育ったとは思えないほど、純粋なやつだった。10人に聞けば10人からそう返ってくると思う。
性格は優柔不断で、でも男らしくて、優しくて、恋愛下手で、言葉では言い表せないくらい、いい奴だった。

アイツに少しでも近づこうとしてから3ヶ月、ある日を境に急速に関係が深くなっていった。

否定する自分と好きな自分

2003年4月

なんとか進級できた俺の大学生活2年目が始まった。その頃は部活の仕事がようやく本格的に始まってきて、毎日忙しい日々を過ごしていた。暇さえあれば部室へ足を運ぶようになっていた俺はいつの間にか、アイツの姿を探すようになっていた。
その頃の自分の思いとしては、おもしろい奴だなぁっということだけで、特別な感情があるとは思わなかった。というより、特別な感情を持ちたくなかったのかもしれない。傷つきたくなかった―――。

高校2年の頃、剣道部に所属していた俺は同じ部活で同級生のYの事が好きになっていた。それが俺の初めての男を対象とした恋だった。
自分がゲイだというのはそれ以前の中学の頃から分かっていた。でも、中高の間ずーっとそれをひた隠しにしていた俺は他人や自分を騙し続けていた。気付かないフリをしていた。
それがどれだけ辛い事かだなんて言い様がない。自分のことが嫌いで、自分を自分で否定して、いつも違う自分を作って、本当のことを言えなくて、いっつも周囲を騙している気分で、自己嫌悪の毎日で、良かったことなんてひとつもなかった。毎日が苦痛だった。でも、そのYの事は素直に好きだった。Yのことを考えている時はほかの事を忘れられて幸せだった。

そのYも野球が好きで、やんちゃで、いたずら好きで、笑顔が可愛くて、でも、剣道をしているときは真剣でカッコ良くて。俺は毎日のようにYと遊んでいた。よくじゃれ合っていたし、喧嘩もしていた。でも、少し変だったのが、学校では一切喋らなくなったということだった。途中までは学校でも良く喋っていたのだが、俺が意識しすぎたせいか、学校では全く喋らなくなっていて、俺の家や学校帰りにしか喋らなくなっていた。

そんな日々が続き、いつしか、Yが俺の家にとまりに来た日、あいつが言った。「お前、俺ん事好きやろ?」これには面食らった。「はいはい、大好きですよ。」っと言ってその場は濁しておいたが、その後、ずっとその言葉が頭に残ることになった。それ以来、俺とYは離れていった。高校3年の時はずっと暗かったし、一人になれば泣いていた。相談できる奴が一人も居なくて、自分で消化するしか方法がなくて、孤独だった。そんな高校時代が終わり、大学には新しい気分で入学した。っといっても、1回生の夏ぐらいまではYの事を忘れられなかったのは事実。

この経験でもう傷つきたくない。自分がそういう奴だとバレると嫌われてしまう。

そんな気持ちが生まれてしまって、アイツの事を好きになりたくないと、好きじゃないと否定する自分がいた。でもいつの間にか、授業が終わると部室へ電話し、アイツがいるかどうかそれとなく確認していた。一緒に帰る駅までの帰り道、俺はずっとアイツを笑わせたくて、笑顔が見たくて、多分、顔を赤くしながら喋っていたんだろう。
そして4月も終わる頃、夜、家で寝るとき、目をつぶるとアイツの事が思い浮かんできた。これはYの時にもあった。これで、俺はアイツのことが好きなんじゃないか?と初めて気付いた。そこから、本当に好きになるのには時間はかからなかった。もとい、自分で否定しなくなるのに時間はかからなかった。

何故かわからないが、少し嬉しかったように記憶している。

笑わせよう

2002年12月

部活に入って半年が経とうとしていた。
僕は部活にやる気がなくなっていた。でも、仕方なく演劇の主役という大役を引き受け毎日練習に励んでいて、その分だけ部室へ足を運ぶ回数も必然と増えていった。

その頃のアイツは1回生にも関わらず、部活の幹部になっていた。なにせ1回生だけでも50人弱はいる大きい部活で、その中で幹部になるのは2人というやる気のある奴だけがやるという仕事をしていた。でもそんな事、その時の俺には関係なかった。というか知らなかったと言った方が正しいのかもしれない。

演劇の練習もやっていくうちにそれなりに楽しくなってきて、責任感や使命感も出てきて12月の演劇の公演を無事済ませる頃には、多少、部活が好きになっていた。
そこに数少ない部活の友人が4ヶ月だけの仕事をやらないか?と俺を誘ってきた。仕事というのは次に入ってくる1回生のケアや活動を取り仕切るリーダーというものだった。その頃、同時に部活に入ったクラスの友達4人は次々と辞めていった、でも、そんなのには流されたくなかった俺はその誘いを引き受けることにした。

この選択がこの大学生活の中でも大きな分かれ道だったのは間違いない。

この事から、俺の部活への関わりが一気に深まった。

年が明けて2003年1月、幹部の会議に出席しなくてはいけなくなった。それは週1回必ずあるもので、放課後に行われていた。冬休みに入ってからは1週間毎日の様にやった時もあった。活動やイベント、運営の事など様々な議題があった。そしてその会議の度に俺は他のメンバーと打ち解けていき、次第に自分の居場所を少しずつ作り上げていった。

アイツと話始めたのはこの頃からだったと思う。最初は探り探りで、徐々に話せるようになっていった。
いつしか、俺とアイツ、友人M、他2名ほどで居る時間が増えていった。そのメンバーで居る時はクラスの友達と居る時より楽しくて、次第にほとんど部室にばかり遊びに行くようになっていった。

そこの頃のアイツは本当に会話が下手で、こっちから笑いのネタにしようとすると直ぐに「ごめんむりやー」と笑ってごまかしていた。でも、本当にバカがつくほど正直で誰にでも優しくてある意味、真面目で何にでも大笑いしていて、とにかく笑顔が印象的な奴で、暇があれば部活の奴とキャッチボールをしているスポーツ少年だった。

そんなアイツの姿を目で追い始めていたのは春休みも終わりかけの3月頃のことだった。気付けば、いつもの5人で居る時も、いつでもアイツの事を笑わそうとしていた。




初日

アイツと初めて出会ったのは2002年、大学一年の七月頃。
その当時の俺は18歳でその春から大学の短期大学に通っていた普通の人間だった。俺にとっては外国語がやりたくて、どこでもよく、成り行きで入った大学だった。ただ、友達がほしくて、楽しく過ごしたいと思った。だから4月にクラスの友人が入るといって、見学に行った部活に入ることを決めた。結局、入部したのはそれから2ヶ月も経った6月末の事だった。
理由はその頃、日本中で誰もが熱狂していたワールドカップで自分もその一人であったためである。先に入部した友人たちが「部活でワールドカップ見にいけへんし・・・。」そんな安易な理由だった。

入部してまもなく、その日は休日で部活のイベントがあり、学校へ行くため、最寄駅のバス停からバスに乗った、そのときだった。そこには背筋がよくすらっと背の高い坊主のアイツがいた。一見すればまるで野球部の奴だと誰もが思うほどで、誰もこんな文化系のクラブなんかには居るはずのないと思うやつだった。
アイツとはそれまでに入部の為に部室へ行ったときに何度か顔を合わせた事がある程度で、話をしたことはなかった。

バスの中でお互いの存在に気付く。「あっ、おはよう。」そんな会話だけをしてバスの中では全く会話をせず、他人同然だった。全く気まずさなんかはなく、ただ顔を知っているだけで無理に話す必要もないと思っていたからだろう。

今思えばいつから仲良くなったのか明確な記憶はない。ただ、気がついた時には、アイツは俺の中で少しずつ特別な存在になっていた。