前回の続きです
それで私たちは家族だけで飛行機に乗ってイナリという北極圏の街に行き、湖畔のホテルで過ごす事にした。
オーロラがきれいに見られる条件はいくつかある。
まず、太陽フレアの活動期であること。空が晴れて雲がない事。暗いこと。
太陽フレアの活動は専用のアプリで調べた。
天候は予報を見つつ、旅行の日程も3日間ほど余裕を持った。
それから街外れの建物の少ないエリアでホテルをとった。
湖畔のホテルと言うとおしゃれな響きだけど、スキーのロッジみたいなホテルで周りには何もない。小さなスーパーが2軒と土産物とガソリンスタンド。その隣にパブが一軒。
そんなわけで、オーロラ観測の旅は昼間は何にもする事がない。当時小学3年生の娘を連れた家族旅行としては、日本では考えられないくらいつまらないものだったんじゃないかな。
スーパーをハシゴして食料品を買い、湖をお散歩したら、もうやる事がない。
夫は夜に向けてカメラの手入れをしたり、フィンランド語の勉強をしたりしている。
娘は持ってきた本を読んだり動画をみたりしている。
私は…。私は何をしてたんだろう。部屋を整頓したり、娘の話し相手になったり、晩御飯に食べるものを考えたり…。かなあ。
私はこう言うとき、いつも時間を建設的に使えない。何をするべきだろう?と考えつつ、細々とした事が目について、荷物整理なんかをしているうちに気がつくと夜になっている。
絵を書くとか、英語の勉強とか、何かすればいいのに。そのくせ「こんなダラダラしていてはダメだ」なんて自己嫌悪に陥る。
大した事もしていないからお腹も空かないけど、夜になり晩御飯を食べてビールを飲んで、寝る。
オーロラが出やすいのは真夜中なので、夫が確かめに何度も外に出る。気温が低いのでその度に重装備に着替えて、レンズが凍らないようにカメラも準備する。
夫の意欲はすごいなーと感心する。昼間何もしていないのに、私は何をやっているのだ?と思うけど、もはやオーロラへの興味すら薄れている。
なんでこんなにやる気がないのか、罪悪感しかない。
そんな家族オーロラ旅を3度もした。
3度目の時にジグソーパズルを持っていった。
旅の間中、テーブルに出しっぱなしにして、娘と一緒に取り組んだ。途中でやめては続きをして「お前たちはなんて無為な時間を過ごしているんだ」と夫に呆れられた。
オーロラがはっきりと見られたのは3度の挑戦で1度だけだった。天井でゆらめいたり、逆さ富士のように湖に写ったりして、どんどん形を変えて神秘的だった。
あんなに罪悪感を感じていたにもかかわらず、またあんな旅がしたいなあと思う。オーロラは見られなくてもいいから、昼間、ジグソーパズルで時間を無為に過ごしたい。
実を言うと、今こうして娘とジグソーパズルしていることにも、罪悪感を感じている。
私はこの先もずっと時間を無駄遣いし、罪悪感を持ち続けていくんだろうな。本当はそれが無駄時間じゃないって気がついたのに、無駄呪縛は解けない。


